サポーター。冒険者を紹介される
次の日。
リアさんが取り計らってくれたのだろう。早速僕と契約を結びたいと申し出てくれるパーティが見つかったと連絡が来た。
急ぎ足でギルドに向かうと、そこには屈強な体の男達がリアの受付カウンターのところで待っている。
「あ、来た来た。マインくーん!」
「はーい!リアさーん!」
こんなに早く次のパーティが見つかるなんて。喜びのあまりスキップしてしまいそうだけど、なんとかそれを堪えながらペコリと頭を下げる。
「よぉ、兄ちゃんが俺たちと契約してぇって言うサポーターかよ」
「は、はい!初めまして、マインと言います!」
少し強面の男達に僕は少し緊張しながら頭を下げる。
「そうか、俺はロッド。こいつがドグランで、こっちなミゲルだ」
「若ぇな。いくつだ?」
「この前18になりました」
3人は僕を観察するようにジロジロと見てくる。
うーん、なんか居心地悪いなぁ……。
「安心してください。何てったって、マインさんはあの雷の勇者シデンの元で7年もサポーターをしてきたんです!若くても腕は確かです」
そんな僕を援護してくれるようにリアさんがフォローしてくれる。リアさん……いつもありがとう……!
「ほぅ……」
リアさんの言葉を聞いた男たちは何やら妙な笑みを浮かべる。
「……?」
それが、僕に少し違和感を感じさせた。
「いいねぇ、気に入った!それじゃあ早速今日1日、俺らとダンジョンに行こうや。それで俺らが気にいりゃあそん時改めて契約の話をしようぜ」
「は、はい!是非お願いします!!」
願ってもいない次の契約の話に、僕の違和感なんてどこかは吹き飛ぶ。
やった!これで無職文無しプー太郎から脱却できるかもしれない。
「はっはっは。そう固くなるなや。とりあえず今日はお試しだ。近場の【ゴブリンの森】でいいだろ?」
ゴブリンの森。
その名の通り出現モンスターはレベル10以下のゴブリン種のみ。初級者向けのダンジョンだ。
ただ、ゴブリンはその特性として際限なく増え続けてしまう。それを放っておくと獲物を探しに森の外にまで被害が及ぶことがあるので、定期的に冒険者が森に赴いて腕試しついでにその数を減らす必要があるのだ。
今回のようにパーティの試運転や新メンバーの腕試しにはもってこいだろう。
「そうですね、そこなら僕もよく行っていたので大丈夫です」
そんな感じで僕はロッドさん達に連れられてゴブリンの森へと向かうことになった。
ーーーーーーー
「いやぁ……よかったです、マインさん」
無事に新たなパーティに出会い、元気にダンジョンへと向かったマインを送り出したリアはようやくひと段落ついたので、のんびりと伸びをしていた。
きっと、マインさんならどんなパーティとでも上手くやっていけるだろう。彼の咄嗟の機転や判断力は折り紙付きだから。
「さぁて、私は別のお仕事を片付けて……」
そう思い、ふと目の前に視線を向けると……。
「ねぇ」
「はぁい……って、ひっ!?」
突如カウンターに現れた1人の冒険者にリアは戦慄した。
燃えるような赤い髪とそれと対をなすように蒼く輝く瞳。そして道ゆく人も振り返るほどの美しい顔立ち。
直接お会いするのは初めてだけど、その容姿と凍るように冷たいこの声……。まさか……この人は!?
「ユーリ・フラムディア様ですか?」
「時間の無駄だから、伝えることだけ伝える。しばらくゴブリンの森に冒険者を寄越さないで」
「え?どうしてですか?」
リアの問いかけに対して、目の前の美しい少女は無表情で1枚の手配書を見せてくる。
「ゴブリンの森で今、異常事態が起きてる。私が騒ぎの大元を潰してくるからそれまで中に誰も入れないで」
「は、はい。分かり…まし……」
……ゴブリンの森?
手配書を見ながらリアはダラダラと滝のような冷や汗が流れる。
「あ…あの〜……」
「何?」
「もう……すでにゴブリンの森に向かったパーティが……」
「……」
リアの言葉にユーリはその淡麗な顔の眉間に深い深い皺を刻むのだった。