サポーター。就職活動を始める
「う…ん……」
ボコボコになった僕はシデンの拠点のゴミ捨て場で目を覚ました。
身体中が……痛い。
「く…そ……。やっぱり、夢じゃないのか」
身体に走る痛みが、ジンジンとこの状況が現実であることを冷たく突きつけてくる。
「……僕の装備も全部持ってかれてる」
ゴソゴソとバッグを漁ってみるも、中には何にも残されちゃいなかった。
武器も薬も……財布ですら全て……だ。
「……何でこれだけ残ってるんだ」
残されたのは空っぽのバックと、ポケットに入っていた雨の魔石。
一定範囲内に小さな雨雲を生成し、雨を降らせる魔石。
本来農業で使われるそのただの石ころのようなそれは、シデンの雷の力を強化する補正効果があった。
彼の必殺技【ライトニング・ストーム】の発動条件は雨が降っていること。それをカバーするために僕が考えた結果がこの雨の魔石を使うという案。
それを石っころ……本当に僕のことになんて興味がなかったんだろう。そうでなければ、何度となくシデンのピンチを救ったこれを、石ころだなんて思いはしないはずだ。
「せめて退職金ぐらい出せよ」
ジワリと込み上げてくる涙をグシグシとこすりながら僕は立ち上がる。
「……最後の嫌がらせにシデンの拠点を水浸しにしてやろうか」
多分、残り1回分の力しか残されていない雨の魔石。
売ったところではした金にもなりはしない。
捨ててしまいたかったけれど、できなかった。
これが、シデンとの最後の繋がりのような気がして。
捨てられたと言うことは分かっていても、彼らと過ごした日々が消えるわけじゃない。
未練が残っているんだろう。そんな自分がまたたまらなく嫌になる。
けれど、いつまでも泣いてなんかいられない。
今、僕は全てを失ったんだ。
残されたのはサポーターとしてのノウハウと、積み上げて来たそのスキルだけ。
「え…と……」
僕は自分のステータスを開く。
この世界では人々が自身の可能性を自覚する為に自分の能力やアビリティ。その他詳細な情報を目で見て確認することができる。
そして、モンスターを倒すことで経験値を得てレベルアップ。それを重ねることでより強くなっていくのだ。
【名前】マイン
【レベル】37
【職業】サポーター
【アビリティ】収納上手『収納の容量拡大と重量軽減』
器用貧乏『全ての武器への弱適正』
【ステータス】
腕力:63
体力:54
魔力:58
俊敏:113
「相変わらずパッとしないなぁ」
自身の貧弱なステータスに僕は苦笑いする。
シデン達と共にダンジョンに潜っていたとはいえ、所詮サポーター。その経験値配分は少なかった。
確か、今のシデンのステータスはこんな感じだったかな。
【名前】シデン
【レベル】65
【職業】勇者
【アビリティ】雷の勇者『装備武器への雷属性付与及び雷魔法の威力向上』
自信過剰『精神状況によるステータスへのブースト』
【ステータス】
腕力:238
体力:208
魔力:171
俊敏:256
ちなみに、ステータスの能力は30ぐらいが初級冒険者で100を超えたら中堅、200を超えると一流といった感じ。
シデンは200を超えるステータスが3つもあるし、うち俊敏に関しては250を超える。このラザニアス国の中でも有数の実力者だ。
メキメキと強くなっていく友に食らいつく為に僕はとにかく立ち回りや知識を身につけて、弱いなりの戦う術を駆使してきた。
シデンをいつか、最高の勇者にしてやる為に……。
「……止めよう。考えたら泣きそうになってきた」
もう、泣いてるけどさ。
そして僕はトボトボと近くの冒険者ギルドへと足を運ぶのだった。
ーーーーーーー
兎にも角にも。今僕は一文なしの無職者だ。
この際条件がどうとか言ってられない。
「えーい!リアさぁん!」
僕はギルドの中に入ると受付の金髪で髪を一本に括った女性に駆け寄る。
「あっ、マイン君!久しぶりじゃない!!」
僕を見つけたいつもの受付嬢、リアさんは嬉しそうに手を振ってくれる。
「今日はどうしたの?この前の死霊の祠のダンジョン報告かな?」
「いえ……その、実は……」
僕は手短に今の自身の状況をリアさんに説明する。
「パ、パーティをクビになったぁぁぁあ!?!?!?」
「リアさん!声、声が大きいですよ!?」
ギルド内に響くマインさん無職通告の叫び。
「あっ、ごごごめんなさい!つい……」
「い、いえ……」
あぁ……みんなの視線が痛いなぁ。
憐れむような女冒険者や迷惑そうに見てくる盗賊のおっちゃん。
そんな視線に晒される僕は今、世界で一番不幸かもしれない。
「そ、そんなわけなんです。有り金もぜーんぶ持ってかれちゃって……」
「酷い……だってマイン君はシデンさんとずーーーーっと、二人三脚でやってきたって言うのに!それを一方的に切り捨てるなんて……」
「……でも、仕方ないのかもしれないです」
親身になってくれるリアさんに僕はグッと手を強く握りながら告げる。
「僕が……弱っちかったから。もっと僕が戦えるような奴だったならこうはなってないはずですから。シデンが高みに進む為に僕がいらないって言うなら……」
「そんなこと、嘘でも言っちゃダメだよ!!」
すると、リアさんは僕のほっぺたをギュッと掴みながら言った。
「サポーターさんはね、パーティの生命線。最後の砦なんだよ?そりゃあ、目に見えた成果が出にくいし人気もないし、それを本当に理解した冒険者もそういない。そんな職業だからあなたみたいに長年続けて行ける人はそうそういないんだよ?」
「リアさん……」
リアの優しい言葉に僕は再び堪えていた涙が溢れそうになる。
「だから、マイン君。あなたの再就職は私に任せて!きっっと、いいパーティを見つけて見せるから!」
「ううぅ……リアさぁぁあん!!」
「きゃっ。ちょ、ちょっとほらマイン君!みんなが見てるから!続きは人気の無いところ……じゃなかった!えーと、ほら泣き止んで!!」
「はいい!ありがとうございます!!」
こうして僕はリアさんに新しいパーティを紹介してもらえることとなった。




