20.勘は馬鹿にできないもの
「・・・ふふふ、はっはっは!」
突然ダントンが声をあげて笑い出した。
私はドキドキはしているがこの考えは間違っていないと思っているし、私がバカな行動をとらない限り考えているような最悪な状況にもならないとも思っている。
「いやはや、参ったね。まさかそんなところまで考えが及んでいるとは思わなかったな。ハルカ嬢のことを甘く見ていたようだ」
「いえいえ。甘く見ていただいて良いですよ。なんせ直接本人を前にこんな話していますからね」
「そこだよ。なぜわざわざ私に聞いたのか。自分の胸の内に隠して警戒して距離を置くことだって出来るだろうに」
ダントンが心底不思議そうに私を見た。
「まあ、偽りなく言うと・・・信用してほしかったのと味方が欲しかった、からですね」
「味方?」
「そうです。ラジアス副隊長にも言われましたが、これから先私を利用しようとする者や快く思わない者が出てくると思うんです。ですが今の私はそれらを躱したり対抗できる力なんてない分不相応な力を持ったただの小娘です。だからこそ味方が欲しいんです。
それに私は先生のことを信頼していますよ。ちゃんと自分で考えて先生なら味方になってくださると思っているんです」
「なぜだい?私だってそのへんの貴族と同じようにハルカ嬢を利用しようとしているかもしれないよ?」
「これまでの私への接し方もそうですし、魔導師長という立場にいて危険を冒して私を利用する理由がありません。先ほど言った私が想定する最悪の事態だって私が裏切りさえしなければ起こらないはずですし、何より・・・」
「何より?」
「私の勘が大丈夫だと言っています!」
私は自信満々に胸を張って言い切った。ダントンは呆気にとられきょとんとした顔をしている。
「勘・・・勘って。あそこまで裏を考えられるのに最後は勘・・・」
「あ、バカにしてますね!私の勘は結構当たるんですから!」
「ああ、うん。・・・もう何でも良いよ。君と話していると毒気を抜かれるねぇ。ハルカ嬢の言う通りこの国の不利益にさえならなければ君はこの国にとってなくてはならない大切な子だからね。何かあったら私に言いなさい」
そこまで言うと「ハルカ嬢の意思は陛下にもお伝えしておくからね」と言って去っていった。
ふうー。これで信用してもらえたかな。というか何でこんな話になったんだっけ。
たしかなんでユーリ達には人と同じように供給できないのかって話になって、昔供給の特性を持っていたのは初代国王で・・・。
そこまで思い出して、建国時にすでにユーリがいたと聞いたことを思い出しハッとする。
(てことはユーリに聞けばどうやって供給されてたのかわかるんじゃないのっ?!)
私は急いで第二部隊の鍛錬場に向かった。
「隊長!副隊長ー!」
私はちょうど剣を収めたところのアランとラジアスに走り寄った。
「そんなに急いでどうした?」
「もう魔導師長の授業は終わったのか?」
「終わったっていうか、まあいろいろあったんですけど・・・」
「いろいろ?」
「そのへんは後で話しますから!ちょっと森に行ってきても良いですか?っていうか行ってきますね!」
私は2人の返事も待たずに今度は森に向かって走り出した。
「あっ、おい!」
「ハルカにしては珍しく慌ただしいなー。あ、さっき言っていたいろいろに関してはラジアスに任せる」
「・・・まあ、そうなると思っていましたよ」
ラジアスがアランにまたしても丸投げされている間にも私は森に向けて足を進めていた。
王城の裏手にある森に入るとすぐに身体に魔力を巡らせて頭の中でユーリを呼ぶ。こうすることでユーリには私の声が聞こえるらしい。仕組みはよくわからないし、もっと上達すれば会話も出来るらしいが今はまだそこまで上手く扱えていない。
少し待っていると木々の間からユーリが姿を見せた。
不定期更新ですみません。
皆様楽しんでいただけていますでしょうか。
評価や感想などいただけましたら幸いです。
よろしくお願いしまーす!!