フェス
夏休み最大最後のイベントが下山さん主催の音楽フェスだ。
名付けて「哲ちゃん会祭り1」あれ?
下山さんが中心になって準備運営しているのだから、主催は下山さんのはずだ。彼は俺たちと違い、事務所の役員に名を連ねているのでフェスも開催できる力がある。だから俺の名前が使われていても、俺は中心ではないはずだ。
哲ちゃん会とされる「下山芳樹」「スパーク」「パラディン」の大物アーティストと俺たち新人「ラディカルプラント」を中心に仲の良いアーティストを集めての三日間の大型フェスだ。
哲ちゃん会のメンバーは三日とも出演予定で、ラディカルプラントは全部最後に出演する。所謂、トリだ。何かがおかしい。
まぁ、いまさら変更されることは無いのでやるしかないのだから、切り替えて楽しもう。
初日の昼間は屋台めぐりをしたりして、大いに楽しんだ。
フェスの雰囲気にも馴染み、かなりリラックスした状態で、自分たちのステージを迎えることが出来た。
俺たちのステージにはあまりお客さんは残っていないだろうと思っていたが、満員では無いものの多くの人がいた。
夏休み中のライブツアーで多少なりともファンがついたのかもね。
ツアーの初めの方ではガチガチに緊張していた平嶋くんも、すっかり鍛えられ頼もしいくらいだ。
美由紀さんはデビュー前からライブには慣れてるし、俺も前世の経験があるから大丈夫だ。そしてマリちゃんは真のカリスマ。舞台が大きければ大きいほど、輝く存在だ。
デビューしたての若いバンドとは思えないパフォーマンスができる。いつでも。
俺たちのステージは大興奮の中で進んでいき、フェス初日は良い感じで終わることが出来た。
二日目も同じスケジュールでいたのだが、屋台を冷やかしていたら前日のライブを見てくれたファンに囲まれてしまった。屋台めぐりができなかったのは残念だが、芸能人になった実感が湧いて嬉しかった。
俺たちのステージに来てくれるお客さんも、二日目三日目は満員になって更に盛り上がった。
おかげさまで、フェス期間中の出演アーティストの物販で、俺たちのアルバムが販売数トップになった。この三日間だけで一万枚以上売れたらしい。
夏休みが終わりに近づく頃にはラディカルプラントは注目の若手アーティストとして注目されていた。
バンドは順調だったけど、俺には不幸が待っていた。
フェスが終わった頃に、トラが病気になったと連絡があった。




