僕は、人間
「やあ、雫」
僕は再び、グラビティツリーの頂上に上った。
先程と変わらぬ場所に雫は立っている。
「・・・・どうしたの、人和?さっきは大声なんか出して逃げたりして。私はもう『氷結世界』を維持する為にこの頂上から動けないんだよ?」
「はは、悪い悪い。少し取り乱してね」
「・・・・?何を、取り乱す事があるの?」
「いや、まあ、それはいいんだ。それより雫。僕は君に言わないといけない事がある」
「・・・・何?」
雫の不思議そうな視線が僕に注がれる。
言うんだ。言え、僕。
全ての間違い、勘違いを正す為に。
でなければ、石神さんが命を懸けてまで僕に気付かせてくれた意味が無い。
僕は大きく深呼吸した。
――――落ち着け、落ち着けよ。
この言葉を口にするのは、とてつもなく怖い。
言ったが最後、僕は殺されてしまうかもしれない。
だが、言わなければ。
言わなければ何も始まらないし、終われない。
『――――怖くないのか?』
ふと、僕は石神さんにそう聞かれた気がした。
――――そりゃあ、怖いですよ。怖くて恐ろしくて今にも逃げ出したくなる。
だが、雫の目を見ると、そんな事は出来ないと思ってしまう。
何の疑いも無く、僕を信じている目だ。
この目に嘘を着く事は、僕には出来ない。
――――雫、君だけは、君だけには僕を知ってほしいんだ。
例え、君が僕を殺さなければいけなくなっても。
吸い込んでいた息をゆっくりと吐きだし、言葉を紡ぐ。
「―――――僕は、人間だよ」
瞬間。
雫の目が大きく見開かれた。




