初めて気付いた真実は、僕に何をもたらすのか
なんで、何で、ナンで、ナンデ、ナんで――――――
何で、気付かなかった。
『―――――この人殺しが!!!!』
石神さんの言葉が脳裏を過ぎる。
そう。
人殺し、なのだ。雫は。
いや、僕自身も。
考えてみれば、当たり前の話だった。
氷漬け。
全身氷漬け。
――――頭まで、全部。
それで、呼吸など出来るものか。
窒息死して、当然。
いや、凍死という可能性も、ショック死もあるだろう。
そもそも中まで全部凍っていたのだから、即死か。
とにかく。
冷静に考えれば、雫が今まで『氷塊』によって、氷漬けにしてきた人達はみな、死んでしまったのだろう。いや、だろう、なんて曖昧な事じゃないな。
―――――――間違いなく、死んだんだ。
雫は最初から、人間を殺すつもりで、『氷塊』を放っていた。
気付いていなかったのは僕だけだ。
僕だけが、何も知らずに雫に手を貸し、人を殺していた。
少なくとも、僕が雫に協力しなければ、グラビティツリーの警備員と、杉林、石神さんの三人は死なずに済んだんじゃないか?
いや、違うな。
それだけじゃない。
『八角氷雪陣』を発動してから、真東京に叫び声一つ上がってはいなかった。
それはつまり、グラビティツリーを中心に、多くの人間が氷漬けになり、命を落とした事を意味しているんじゃないか?
―――――僕は、大量殺戮者だ。
取り返しのつかない事をしてしまった。
何が、正義の味方だ。
人々に笑顔を届けるだ。
何一つ、出来やしないくせに。
こんなつもりじゃなかった。
もっと、上手くやれるって。
僕だって、人の役に立てるって。
そう、信じていたのに。
結局はこのざまか。
は、はは、はははは、はははははははははははははははははは。
「お、っげえええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!!」
ゲイン塔デッキ――――――その地面に汚い吐瀉物がまき散らされる。
でも、そんな吐瀉物より、僕の方が汚い。
結局、誰にも相手にされて来なかった僕は、誰かに構って欲しくて『笑顔お届け活動』なんてして来たんだろう。
そんな、自分勝手な理由で人を殺した僕は、誰よりも、何よりも、醜く、汚く、悍ましい。
―――最後に氷漬けとなった石神さん。
正しく正義を貫こうとした人すらも死なせてしまう僕が、何を救えるというのか。
せっかく石神さんが命を懸けて教えてくれた僕の間違い、勘違いも、気付けただけでは何の意味も無い。
お終いだ。
何もかも。
今、思い返せば、『氷結世界』、あれは相当に危険なものじゃないのか?
全世界を氷漬けにする。
『氷塊』がただの人殺しの技だと知った。
『八角氷雪陣』で多くの人が亡くなったと知った。
それらを知った今となっては、『氷結世界』が発動されたら、全人類が凍り付くとしか思えない。
良かれと思ってして来た事は全部、間違いでしかなかった。
石神さんの言う通りだ。
僕は何も考えていなかった。
本当に、何も。
はっ、こんな僕が人の役にたとうとしていただなんて笑わせる。
僕は、人の邪魔になる事しか出来ないというのに。
―――――もう、死んじゃおうかな。
どうせ、家族もいないし、誰も悲しまない。
あ、でも雫は悲しんでくれるかな?
そうさ、僕の間違った行いも雫の―――雪女の為にはなっていた。
なら、少しくらい僕の事を思って悲しんだりしてくれるかな?
ああ、雫。
なんで、人を殺したりするんだ。
いや、何でも何もないか。
あれは人を殺すという事に疑問を持っていない顔だ。
雫にとっては、人殺しなど罪でも何でもないのだろう。
人は殺して当たり前なんだ。きっと。
――――ん?
あれ?
おかしいな?
人は殺して当たり前?
ならば、何故――――僕を助けた?
人間である僕を。
殺すべき嘘有無増の一つでしかない僕を。
――――考えろ、思考しろ熟考しろ。
今まで、何も考えて来なかった空っぽの脳みそをフル回転させろ。
それが出来なきゃ僕の頭は本当にただのお飾りだ。
「・・・・・・・・・・・・・・・あ」
そして僕は初めて自ら真実に気付いた。




