レイヤー25 魔法を作ってみる
体系は完成していた。
需要から始まり、評価で回り、
生成され、拡張され、
召喚され、錬成され、
媒体と媒介で実装され、
禁呪は隔離され、封印され、
古代魔法は観測され、近似されている。
すべては繋がっている。
だが——
「では、作りますか」
研究員が言う。
洋蔵は頷く。
「実際に一つ」
机の上に紙を置く。
何も書かれていない。
「どこから始める」
「需要です」
即答。
一枚の紙を出す。
現場報告。
・扱いやすい術式が欲しい
・失敗しても安全なもの
・短時間で使える
「明確だな」
「はい」
洋蔵は線を引く。
「条件に変換します」
・低負荷
・高操作性
・短時間発動
・安全性確保
次の紙。
「既存実績を参照します」
類似タグ。
・訓練適性高
・低負荷安定型
「ここから引きます」
研究員が頷く。
「召喚だな」
「はい」
複数の構造候補が並ぶ。
完全一致はない。
だが、近い。
「次に」
洋蔵はペンを走らせる。
「錬成します」
不要な高出力部分を削る。
操作手順を単純化する。
持続時間を短縮する。
「安全側に寄せます」
構造が整う。
「媒介を決めます」
別の紙。
配置設計。
視認優先。
誤操作防止。
冗長配置。
「初心者用だな」
「はい」
媒体も選ぶ。
「紙です」
「なぜ」
「反応が速い」
短い説明。
「消耗は」
「許容します」
一拍。
「訓練用途です」
研究員は納得する。
「評価はどうする」
「四軸です」
性能。
効率。
運用。
感情。
「実績は」
「これからです」
静かな答え。
洋蔵は最後の線を引く。
完成した術式。
まだ名前はない。
「投入します」
「現場にか」
「はい」
短い返答。
一拍。
「これで終わりか」
研究員の問い。
「いいえ」
即答。
机の上の円を指す。
回収。
分析。
再設計。
再配布。
生成。
拡張。
実績。
召喚。
錬成。
媒体。
媒介。
すべてが繋がっている。
「ここから始まります」
静かな声。
「結果が出る」
「ズレが出る」
「修正する」
「別の用途が生まれる」
研究員は小さく笑う。
「一つ作っただけじゃ終わらないな」
「はい」
洋蔵は頷く。
「増えます」
一枚の紙が、複数に分かれる。
初心者用。
前線簡易型。
低負荷持続型。
派生が生まれる。
「……もう止まらないな」
「止めません」
短い答え。
魔法は特別なものではなくなった。
再現可能で、調整可能で、改善可能。
そして——
作れる。
後美洋蔵、45歳。
異世界出向中。
仕事は最後まで変わらない。
考える。
組む。
試す。
直す。
終わりはない。
魔法は完成しない。
だから作り続ける。
それが、この仕事だった。
何ができるかよりも何をしたいか




