都会
「おおー」
都市の端、馬車を降りたその場所で、ウェンディは感嘆の声を漏らした。
端であっても観光客がやって来るため人は多く、それを目当てにした土産屋などによって賑わいが存在している。
「本当に来たんだ。来た……んだけど」
キラキラと輝いていた瞳を陰らせながら取り出したのは、一枚の地図。
それには目的地らしき場所が赤い丸で囲われており、ウェンディはそれを縦にしたり横にしたりとしながら凝視した。
−−−−私が居る場所……どこだ?
抱えていた問題は、現在地の不明。
地図の読み方を知らないためどの向きで読めばいいのか分からず、しかもその手書きの地図には目印となる店名などは書いていない。
−−−−師匠〜! ちゃんと全部書いて! 面倒くさがるなッ!
あまりの不親切さに、思わず地図を持つ手に力が入る。
だが、怒っても何も解決しないと自身に言い聞かせ、ゆっくりと息を吐いて感情を落ち着かせた。
そして、今置かれている状況の解決策を思案し始める。
−−−−あの白髪師匠には後で怒るとして……うん。やっぱり人に尋ねてみるのが一番かな。
−−−−観光客なら、名物の場所くらい知ってるよね。
とりあえず近くの人に聞いてみようと、ウェンディは一歩踏み出す。
その瞬間、背中に軽い、いやけっこう重い衝撃が走った。
「いぇーい!」
「ぐふっ!?」
「なに気付いたら居なくなっちやってんのもー! ほら、あっちあっち! あっちに美味しそうなお店があ−−−−」
ぶつかってきたのは、水色の長い髪を後ろで纏めた少女。
猫のような金色の瞳をしており、一気にまくし立てていた口はウェンディの顔を見た瞬間止まる。
「……誰?」
「こっちのセリフですけど?」
少女はウェンディの顔と服を交互に見ると、何かを理解したのか、顔を押さえながら「あああぁぁ……」と喉から声を出して屈み込んだ。
「やらかしたぁ。まさか、同じ制服の人が居るなんて……」
「同じ? ……あ、ホントだ」
見れば確かに互いに同じ制服を着ており、少女は自分を誰かと間違えたのだろうとウェンディは理解する。
そして、その誰かもまた、同じ魔女の学校の入学者であろうということも。
「よし、君!」
「? ……私?」
「そう! 一緒に探してッ!」
「い、いいけど、どんな見た目ぐえッ!?」
勢いに押されたウェンディが尋ねるよりも速く、少女は襟を掴んで走り出す。
「見た目はほぼ私と同じ! ちょっと私より背が高くて、髪は濃い青色!」
「し、締まる……ッ! 締まってる……ッ!」
「あ、名前言ってなかったね。私はラマ! 探してるお姉ちゃんはノア! よろしく!」
「よろし……ッ。いや、ほんと……ッ。首……ッ!」
ウェンディの悲痛な声は、道を行き交う人のざわめきに掻き消された。




