新たな異界
休日の昼下がり、一年生四人は星間塔に集められていた。
境界科の生徒は異物の回収を目的とした科であり、進度の急上昇が確認されれば招集がかけられる。
異界が自然消滅することもあれば複数の異界の進度が急上昇することもあるため、他の学科と異なり学業も研究も本業ではない。
出身も能力も関係なく、命の危険を顧みなければ誰でも入ることが許された学科だ。
「早い集合ありがとう。境界科の説明欄に書かれてた通り、君たちは異物の回収を何よりも優先しなきゃいけない。もちろんいつでも辞めることは可能だけど、集まってくれたってことは覚悟と意思があると受け取っていいんだよね?」
アザリエの言葉に、四人は迷わず頷く。
確認終えたアザリエが横に移動すると、背後にあった鏡が姿を見せた。
波打つガラスには翼を持つ大きな怪物と、城のような建物が映っている。
「それじゃあ、みんな、死なないように」
「「「「了解!」」」」
「ん!?」
鏡を抜けた瞬間、ウェンディは背筋に悪寒が走るのを感じ取る。
それは森で身の危険が迫ったときに何度も感じたものであり、とっさに防御の姿勢をとるも、対処をするには遅すぎた。
横から飛来した巨大な”何か”が勢いよく衝突し、四人を三方向に吹き飛ばす。
そのうちの一つであるウェンディは高層建築物にぶつかり、比較的近くで着地することとなる。
「何、急に……!」
上空を見上げると、先ほど自分たちが出てきた場所に居る巨大な生物の姿を視認した。
鱗を纏った細長のフォルムは魚を思わせるが、その魚は水中ではなく上空を泳いでいる。
そして、未だ射程内に残っているウェンディからその鋭い視線を逸らしていない。
「一応聞くけど、君、言葉喋れたりしないよね?」
下降を始めた敵に対し、ウェンディはバックから取り出したナイフを構えた。
「なんだ? 誰かが、戦ってる……?」
「…………私は――――」