繋がれた少女
頭からの突進を回避し、その巨体に手に持つナイフを突き刺す。
だがその刃は硬い鱗にはじかれ、突進によって足場が崩壊する。
建物は高くなるほど細くなる構造のため着地は可能だが、空中に投げ出されたウェンディに敵は猶予を与えなかった。
二度目の突進をナイフで防御するものの、その勢いは止まらず空中を高速で押し出されていく。
「かったい鱗ッ!」
相手の方から全速力で突っ込んで来てるにも関わらず敵の額には傷一つ付かず、逆にナイフの方が欠けそうだ。
「……ん? ちょっと待っ−−−−」
落ちているウェンディに敵は斜めに突っ込んできたのであり、そのまま一直線で飛び続けていた。
つまり、徐々に降下している訳である。
ウェンディと敵は、一緒になって地面へと落下した。
「ゲッホ、ゴホッ!」
地面は落下の衝撃でガラスのように砕け、その下から空洞が顔を出す。
潰されなかったためウェンディは命拾いしたが、大きな空間であったため決して小さくないダメージを受ける。
――ん? どこ、ここ?
周囲の空間は数メートル先が見えないほど薄暗く、砕けた天蓋から指す光が柱のようだ。
一緒に落ちてきた敵の姿も見えず、ウェンディはどうやって天蓋の上に登ったものかと思考する。
「――――おい、そこのヤツ」
とりあえず歩きだした先で、横から聞こえてきた知らない声。
少なくとも飛ばされた仲間の魔女ではないと分かり、ウェンディは警戒しつつ声の方を振り向く。
「誰?」
「知りたいならこっち来い。そこからじゃ見えないだろ?」
迷いつつも、前へと足を踏み出す。
数歩足を進めると、暗闇の先から何かが姿を現し始める。
「やあ」
そこに居たのは、暗い地面に腰を下ろした少女だった。
少女の周りには六本の楔が突き立てられており、そこから伸びた鎖が少女の体に巻き付いている。
「お前だろ? コイツを倒したの」
ウェンディはよく見たら横に自身のそこに突き落とした敵が倒れていることに気付く。
弱っているのか、生きてはいるもののピクリとも動かず倒れ伏している。
「倒したっていうか、ソレに突き落とされたっていうか……」
「まぁどっちでもいい。ここから上に出たいんだろ? ならこの楔を抜いてくれないか? そしたらお前も連れて上に昇ってやる」
「…………」
――どう見ても封印してるよね、この楔。
――……まぁ、いっか。もし暴れられたら、その時はその時だ。
良くはない理論で納得すると、ウェンディは手前の楔から一本一本抜いていく。
だが、最後の一本に手をかけると、不意に動きを止める。
「? どうした」
「――――うん。いただきます」
食べた。
「は?」
楔を一口で丸飲みにしたウェンディ。
あまりの出来事に、少女は鎖から解き放たれたにも関わらず顔から笑みを無くす。
「いや、おま、は? 何してんだ早く吐き出せ!」
「大丈夫、成功したから」
「何がだアホ!」
涙目になりながらせき込みつつ、ウェンディは眉毛を吊り上げる少女をなだめる。
「実際に飲み込んだわけじゃないよ。呪いと魔術を混ぜ込んだみたいなものだったから、分解して吸収したの」
「……吸収?」
「うん。だから今、私は君の力を楔の代わりに封印できます」
「…………は?」
もう一度口を大きく開ける少女。
呆けた顔に笑顔を見せ、ウェンディは優しく問いかける。
「さ、上に連れてって?」




