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そろそろ履修届を提出しなくては。

学園生の生活はかなりハードだ。月曜から土曜まで週四十八単位。そんなに詰め込まず四年制にすればいいものを・・・と不満を漏らしたところで従うしかないのだが。


午前は全て必修の座学だ。地理や歴史、文学に算術、ベーレング語など。週に二十四単位ある。

届けが必要なのは午後の単位だ。午後は座学から十二、実技からも十二の単位を取る必要がある。男女の区別はなく、どの単位でも選択することは可能だ。座学は早々に決まったが、実技で何を選択するかで数日迷っていた。


真っ先に剣術は除外した。男子生徒の九割以上が選択する単位だ。選択しなければあれこれ噂も立つかもしれないが必修ではないのだ、気にする必要はない。

それに・・・どうせ私がいてはまともな授業になどならないだろう。剣術大会の優勝など茶番もいいところだ。皆が存分に自分の実力を発揮するためにも私はいない方がいい。

とは言え、変わり者だと思われる程度ならよいが、うつけと噂が立つのは問題だ。刺繍などは選ばない方が身のためだろう。尤も選択以前に針を持ったこともないのだが。


『まあこんなところかな』

届けを書き終え封をする。


「レオ様は学園でもお困りになることが少なそうですね」

『そうかな』

学園内では従者を連れ歩くことはできない。身の回りの世話を全て従者頼みにしているものは、何かにつけて苦労するのだとロニーが言っていた。


「お着替えもご自身で済ませてしまわれますし 主を一度もお起こししたことのない従者は国中で私一人ではないかと思いますよ」

褒められている気がしないな、明らかに皮肉だなこれは。


『それでも私の従者はロニー以外に務まらないだろうよ』

「それは光栄でございます ますますご期待に応えねば」

『末永く頼むよ 数年後には間違いなくロニーが頼りになるからな』

宮を移ることになれば、そこで働くものを雇用する必要がある。私はそれをロニーに一任するつもりでいた。

「ところで宮の名称はお決まりになりましたか?」

『・・・引っ越すまでには決める』

「何事も即決のレオ様が珍しい・・・」


「お出ししてきます」と届けを受け取りロニーは退出した。


簡単に言うけど・・・宮の名は正式に記録として残り、後の世にも語り継がれるのだ。自分個人のことならともかく、早々簡単に決めていいものでもない。

というのは建前で、ただ面倒なだけだ。今まで自分でも気がついていなかったが、気の進まないものに関して私はとことん手を抜く性格なのだな。


シラバスをぱらぱらとめくりながら考える。

『Aクラス・・・三年間維持できるといいが』

学園は徹底した実力主義だ。試験の結果毎にクラスが編成し直される。そこには男女の人数配慮など一切ない。一クラスが二十人で席の並びも成績順だ。

[A-1]私宛に届けられた書類に書かれていた番号だ。[A-2]がベンヤミンだったことは数日前の授業の時に聞いた。ヘルミにはまだ聞けていない。


勉強会も、例年だと夏も長期休暇を取っていたが、今年で最後なこともありベンヤミンと特にイクセルからの強い要望で八月の末、入学ギリギリまで続けられることとなった。




「騎士科から要望がありましてな 来季より学園で教官をすることになりました」

鍛錬の後、談話室で休憩を取っていた時ランドルッツ卿がそう言った。

「本科も受け持つのですか?」

「恐らくそうなるでしょうな」

『これは騎士科も大変だ』

「はっはっはっ 生徒相手ですからそう厳しくするつもりはありませんぞ」

嘘だ。

騎士科は卒業すれば即正式な騎士として雇用される。見習いから始める騎士団直々の雇用とは別枠、いわばエリートだ。元団長がお優しく指導するわけがない。

『毎日騎士科から悲鳴が聞こえてきそうだ』



・・・



否定しないのだな。

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