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「レオ様

 ・・・ヒロインは私ではありません」

『えっ』



「ヒロイン 主人公は別の女性です」


『それは・・・

 スイーリがいるにも関わらず 私はほかの令嬢と恋に落ちるということか?』

「・・・・・」

俯いて小さく、ほんの僅かだけ頷く。


『酷い話だな 馬鹿にしているのか』

「・・・」

『参考までに聞くが それは私が知っている令嬢か?』

「いいえ レオ様が三年生になる年に入学してくる平民の女の子です」

よかった、少なくともスイーリを裏切って彼女の友人を選ぶような最低な男ではないようだ。


『なるほど・・・そうかなるほど

 王子と公女が恋に落ちるより 平民の女性との恋の方が盛り上がると思ったのだろう そういうことか』


『名前は言わなくていいが ほかに出てくる男も貴族 高位貴族だったのではないか?』

「はい」


『はぁーふざけたことをしてくれる』

何故だかわからないが腹の底から怒りが湧いてきた。私は今何に対して腹を立てているのだ?


『あ・・・

 スイーリ?もしかしたらそのことを心配していた?』

「はい」

『その女性と私が出会ったら 心変わりすると?』

「はい・・・」



『・・・』


「レオ様」



「レオ様・・・?」

『あ ああ・・・少し傷ついた いや反省する』

「え 何をですか?」


『私はまだまだスイーリに信頼してもらえていなかったのだな 名前も顔も知らない女性のことでずっと悩ませていたとは』

「違います!ごめんなさい そうではありません ただ・・・今はゲームが始まってもいない時期で その時が来たらいいえ その時までレオ様のお側にいるのが私の役割なのかと思って・・・それで」


『私が三年に上がるときだと言ったね』

「ええ」

『あと二年か・・・それまでスイーリを不安なままにしておきたくない

 ・・・・・

 そうだ 変えてしまうか』

「何を ですか?」

『変えられるものは全てだ さっきスイーリはレオの好きな食べ物はオムレツで色は白だと言ったね それはどちらも私の好きなものとは違う』

「そうなのですか?」

『ああ 嫌いではないが別段好きなわけでもないよ』


『あとは・・・そうだな身長はどうすることもできないが それ以外どうとでも変えられる』


『でも 一つだけおしえて』

「はい なんでしょう?」


『スイーリは・・・その・・・白が好きだというレオのことが好きだったのだろう?私にその男のままでいてほしいのではないか?多分私とそのレオは全くの別物だ』


「レオ様・・・」


両手でスカートをぎゅっと握りしめている。頬は紅潮し、伏せていた目が不意に上げられ私の視線と重なった。

「レオ様とあの温室で出会うまでの五年間 私は記憶の中に残るレオ様のことを想い続けていました 兄様たちから聞くレオ様のお噂も 全て記憶の中のレオ様に重ねておりました」


「でも 八歳の私が九歳のレオ様と出会い 新しく私の恋が始まったのだと思います 今私がお慕いしているのは 目の前にいらっしゃるレオ様だけです」


たまらずスイーリを抱きしめた。柔らかい髪が鼻先をくすぐる。

『はぁー--っよかった 自分に嫉妬するところだった そいつには勝てそうにないからな』

「レオ様・・・」

『もう少しこのままでいさせて まだ離せない』

「はい」


艶やかな髪を何度も撫でる。そして離れ際にそっと口づけた。


『今はありきたりな言葉しか言えないが どうか私を信じてほしい スイーリが心の底から安心したと言えるようになるまで努力するよ』


「ありがとうございます 大丈夫です レオ様を信じています」


『そうだな 手始めに私の好きなものをおしえようか 知りたいものがあれば何でも答えるよ』

「いいのですか?」

『ああ 何を聞いても構わない』

「ありがとうございます 嬉しいです」


『好きな色は黒 それと紫だ』

途端にスイーリの顔が赤くなる。

「それって・・・」

『どちらもいい色だろう?』

「はい・・・

 ではお好きな食べ物は?」

『そうだなー幼いころから好きだったのはきのこのタルトかな リゾットも好きだ』

「お飲み物はリンゴンベリーのシロップが入ったアイスティー!」

『よく憶えていたね 甘酸っぱいものは大抵好きだよ』

「得意なことはなんですか?」

『走ること 特に長距離が得意だ』


『スイーリのことも聞きたいな おしえてくれるか?』

「はい!なんでもお聞きください」


陽が暮れるまで語り合った。スイーリとこんなにたくさんの言葉を交わしたのは初めてのことだ。


ゲームについてもいくつか教えてもらった。つくづく腹が立つゲームだ。ゲームが原作だか知らないが、今オリジナルなのは私だ。私の人生を好き勝手決めさせるわけにはいかない。


『決めるのは私だ スイーリを手放すわけがないだろう』

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