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昨日までの吹雪は嘘のように止み、薄日が差す穏やかな朝だ。

吹雪のため準備の遅れていた荷積み作業が大急ぎで行われている。

王都へ戻るのはノシュールの二人を除く七人。一台の馬車では手狭なため二台に分かれて乗り込むことにした。今はそのくじ引きの最中だ。


「僕は赤の馬車 赤を引いたのは誰かなー」

紐の先に赤と白の印がつけてある。赤をひいたものはイクセルが赤の馬車印を引いたのでベーン家の馬車に乗る、というわけだ。

「私赤です!」

「私も赤でした」

「ソフィアちゃんとスイーリちゃんだねー」


「白の馬車は私でした 白の皆様よろしくお願いしますわ」

「アンナ様 私白でした」

「俺とレオも白だな」

アンナが白の馬車を引いた。エクレフス家の馬車に乗るのはヘルミ、アレクシーそれと私に決まった。


「面白いねこれ 休憩の度にくじ引きしようよ」

くじ引きが終わった後も、イクセルは何度も紐を引っ張っては戻している。余程気に入ったらしい。




----------

王都まで残り半日の町、最後のくじ引きが終わり、私はダールイベック家の馬車の中にいる。向かいに座っているのはアレクシーとスイーリ。六回目のくじ引きにして初めてスイーリと同じ馬車になったのだ。


「そんな目で見るなよ 仕方ないだろ二人乗りのくじはないんだぞ」

「私は何も言っていませんわ」


こんな風に言い合ってはいても、二人は大変仲がいいのだ。口を挟まずその様子を見守る。

「妹が冷たい 俺 御者台に移ろうかな」

「兄様がどうしてもそうなさりたいのでしたら 止めませんわ」

『暖かくしていけよ アレクシー』

「え?止めないの?レオまで俺を邪魔者扱いかよ」


「ふふふ・・・」

『プッ』

スイーリと同時に吹き出す。

「息ぴったりかよ」

そう言ってアレクシーも笑いだした。



馬車の外、分厚い雲の向こうへ沈みかけている太陽をぼんやりと見ていたアレクシーが静かに話し出す。

「今年も暮れるな いい年だった 最後にノシュール領へ行けたこともいい経験になった」

『まだ暮れないけどな』

「そうですわ クリスマスもこれからですのに」


「なんだよまた二人して せっかく俺がしんみりとしているところを・・・」

「兄様がしんみりという言葉をご存じとは知りませんでしたわ」

『・・・確かにアレクシーらしくない言葉だったな』


「俺はお前たちより大人なんだよ!しんみりもするし物思いに耽ることだってあるさ」

『なるほど では年若い私たちはクリスマスを楽しむことにしようか スイーリ』

「は はい!」

「聞いてるよ!デートするんだろー

 ・・・いや茶化すところではないな 二人きりで楽しんでこいよ 旅の間はまともに話もできなかっただろうからな 俺はともかく皆のために気を使わせて悪かったな」


『いや・・・うんありがとう』

「まあ今のうちにのんびりしておけよ 俺が正式に騎士になればお前たちがどこへ行こうがついて行くからな 二人きりで過ごせるのも今のうちだけだぞ」

『なんの脅しだよ』

「兄様 その言い方ちょっと気持ちが悪いですわ」


「・・・キモチワルイ?レオ 今俺そんな気持ち悪いこと言った?」

『・・・・・そうだな 気持ち悪いとまでは行かないが 若干引いたな』


「傷ついた・・・妹に気持ち悪がられて親友には引かれた・・・」

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