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こんな日は決まって早く目が覚める。アレクシーが起きるのは当分先だろう。
訓練場はいつでも使えるようにしておくと言われている。そうとなればやるべきことは1つ。
『走るか』
廊下には王宮から共に来ている騎士が護衛に立っていた。もう慣れたもので、私が扉を開けても驚きはしない。そっと近づいてきて囁くような小声で言った。
「殿下お早うございます。訓練場へお供いたします」
『お早う、ありがとう』
向かう道すがら取り留めない会話を交わす。
『騎士の皆は休暇を取っているか?滞在中は交代で取るように聞いていると思うが』
「はい、3班に分かれて順にいただきました。ほぼ全員がノシュール領は初めてですので散策も楽しませていただいております」
『それは良かった。ここはいい街だな』
「はい、私は王都育ち故海を見たのは初めてでございました。いい土産話になりそうです」
『うん、私も初めて見たよ』
騎士が訓練場の扉を開く。
「すぐに灯りを点けて参ります」
持っていたランタンを1つ、私の足元に置いて騎士は走っていった。
アレクシーが来るまでどのくらいあるだろうか。とりあえず来るまで走っているか。歩数を数えることだけに集中して黙々と走る。いつものやり方だ。
「お 、灯りついてる」
15,000を超えたところで止まり、足の筋を伸ばしていたところへアレクシーが入ってきた。
『お早う、アレクシー』
「お早う、いつも早いなレオ」
近づいてきたアレクシーが剣を床に置いて手首を回す。
「ーどのくらい前から来てた?走り込んだ後かよ」
『バレた?ーいやバレるな。まだ少し息切れてる』
「レオさ、ほんと王子にしとくの勿体ないわ。一緒に騎士科目指さないか」
言いながら笑っている。
『いいね、かなり前向きに検討するよ』
こっちも笑いながら返す。
剣を2本拾い上げ、1本をアレクシーに渡す。
『さあ 始めるか』
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湯浴みを終えて、朝食を取り、そして今は着替えのため部屋に戻ってきたところだ。
今日ばかりは上着が重いと不満を漏らすことはない。今日の私にとっては身を守る鎧のようなものだ。
上着の上からマントを羽織る。濃紺のマントー初めて羽織るこれも実際の重さ以上にずしりとした。
ロニーが黒い革張りの箱を運んできた。蓋を開け中を確認させられる。
「お付けしてよろしいですか」
『うん、頼む』
今は正当な持ち主のいないこれは、代々ステファンマルク王家の王太子に受け継がれてきた宝石なのだそうだ。まだ正式な王太子ではない私は最初これを固辞した。
「ふさわしい装いに身を包むのも、必要な経験と考えるのはどうだ?」
父上はそう言った。それも真実だ。しかしせめて成人するまで待ってもいいのではとも思う。
なかなか首を縦に振らない私に、最後は笑いながら言った。
「なあに、言ってしまえばただの石1つのことだ。気を揉むことはない」
ただの石ーそれ国宝ですよ父上。
ロニーの手によりその石は襟元に無事飾られた。
『ー重いな』
「大変お似合いですよ」
「殿下、いえレオ様」
背筋を伸ばし改まって名前を呼ぶロニー。
「私がこのようなことを申し上げてよい立場でないことは重々承知いたしております。ですが敢えて今言わせて下さい」
『うん』
何を言われるのだろうと、内心はハラハラだ。
「レオ様はいずれ為政者となられる身、常にご自身を律し妥協を是としない姿勢は 臣下からしますと理想の君主と言えるでしょう。しかし厳しすぎるのが正しき事とは限らないと私は考えます」
「時にはご自身をお認め下さい 。私の主は大変立派に務めを果たされているお方ですから」
『
ありがとう ロニー』
うん。
けどねロニー。私は自分に厳しいわけではないんだよ。でもロニーの言うように、自分のことを認められないことは事実だ。それはロニーには理解できない理由があるからなんだ。
だけど、今は私がこの国に1人しかいない王子で、ゆくゆくは王太子になることもちゃんと理解している。
努力する。これしか言えないけれど努力するよ。
『よし、行こうか』




