閑話 シルフェの弟子入り交渉
さすがアルフ君だわ。私も、将来の旦那様に飽きられないように自分を磨いていかないといけない。
アルフ君は、アリア殿下の派閥を作り、勢力を拡大させ、短期間にアリア派が、第一殿下派を牽制できるくらいまでに押し上げた。近くで見ていたが、驚きすぎて言葉が出なかった。アルフ君は、魔法師としての力もすごいけど、政治手腕も、とても14歳とは思えなかった。
すでに偉大な政治家だわ。
それと、このエクス・ゲファルナート魔法王国。
いつも真夜中にクタクタになって帰ってきて、なにをしているのかしら?危ないことをしていないかしら?と、心配だったけど、新しい国の建国の準備をしているなんて,,,,,,正直、私の想像の範囲をはるかに超えていた。
アルフ君はいったいどれだけ先を見通しているのだろう。
押しかけで無理やり「婚約者」にしてもらったけど、フランド王国の下級官吏の娘の私なんかで、本当に彼の伴侶にさせてもらって良いのかしら。
正直、アルフ君につまらない女と飽きられるのではないか、と不安だった。
そんな時、アルフ君が、自分と歳格好が近い栗毛の女の子を連れてきた。
私は、ついに見捨てられるのかと思い、心の臓が止まるのかと思うくらいの絶望を感じた。
でも幸いなことに違っていた。
「リーゼを魔法師として育ててもらえないですか?」
そう聞いて、とにかく「ホッ」とした。
飽きられたのではなかった。
その後、徐々に心が落ち着いてから、「未熟な私が弟子を持つの?」と驚きの気持ちが沸き上がってきた。アリア様の専属魔法師の職務も果たせなかった中途半端な私が。
弟子なんて育てられるのかしら?
そもそも弟子なんて持ってよいのかしら?
リーゼちゃんの身分をごまかして、魔術大学校へ送り込む方が彼女のためではないかしら?
そんなことを心の中で思ったのが伝わったのかアルフ君から言葉をかけられた。
「弟子を持つことで、シルフェさんは魔法師としてさらに成長できるはずですよ」
確かにリーゼちゃんの魔素の濃さは大したものだわ。きっとちゃんと教育と訓練をすれば、魔術大学校でもトップクラスの評価を得られる才能だと思う。
ここで、私がリーゼちゃんを立派な魔法師に育てたら、アルフ君は私の事を誉めてくれるかしら?
冷静にさらに考えてみると、同じ論法で、ひょっとして私もアルフ君の弟子になれるかしら?
参謀や政治家としてすでに大変な実績を示しているけれど、アルフ君は今のところ、魔法師としては、あまり表に出たがらない。なので、もし、私が魔法にかかわるお願いをしたとしても、すんなり「うん」とは言ってくれないだろうと思っていた。
私も、彼を困らせるお願いをしたくない気持ちの方が自分の中で勝っていたため、魔法を教えてほしいとは言えなかった。
そうだ!
これをきっかけに、私が、アルフ君の第一の弟子となり、アルフ君の剣、いえ、魔法杖の役割を果たそう。師匠としてアルフ君の名を歴史に刻むお手伝いをしよう。本人が表に出たがらないならば、弟子となった私が、成果を出し、師匠の名を高めよう。
シルフェ・アンダーソン改めシルフェ・ゲファルナートは、アルフレッド・プライセンの弟子であり、プロト・ゲファルナート陛下の忠臣として、魔法師の高みに昇って見せる、と覚悟を決めた。
アルフ君は、自分の言葉を決して偽らない。
出会ってから、その信条に私は何度も救われてきた。
だから、私の事も弟子にしてくれるはず。
「弟子を持つことで魔法師として磨きがかかるならば、私のことも受け入れてくれますよね?アルフ師匠」
そう切り返したら、思った通り、アルフ君は、苦笑いしながらも私を受け入れてくれた。
今は師匠と弟子という関係だけど、数年で私もアルフ君から、相談をうけられるレベルの魔法師兼参謀になってみせるからね。
絶対、「頼りになるな、シルフェさんは」と言わせてみせるからね。
旦那様。




