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8.自然体の美しさに感心することのススメ

 シルフェさんとリーゼが子弟の契りを結ぶと同時に、俺もシルフェさんと子弟の関係を結んだ。これで俺はシルフェさんが魔法師としてさらに高みに登れるように支援する義務を負う。


 魔法師の世界は、御恩と奉公の契約社会という考え方のようだ。

 師匠は弟子の成長に責任を負う。その代わり、弟子は師匠に尊敬の気持ちを常に表し、師匠のために奉公に勤しむ。


 この契約が遂行されないときは、お互い、相手から、命を狙われても文句は言えない。


 それと、子弟の契りを結んだ場合、弟子が他の魔法師と名乗りあう時は、師匠の名を告げた後、自分の名を名乗ることが正式な作法らしい。


 例えば、「偉大なる魔法師アルフレッド・プライセンが一の弟子、シルフェ・アンダーソン」みたいな感じのようだ。正直、正式な魔法師でもない俺からすると、どうでもよいんじゃないかと思うけど、魔法師の世界では世界的な礼儀になっている。


 希少な魔法師の中で、弟子がとれるほどの魔法師はさらにすくない。弟子がいるほど立派なんだぞ!と権威を示す意味もあるのかな?と想像している。


 それと、もし弟子が、魔法師として外道働きをしたら、師匠は名を穢されたこととなる。まぁ、悪人(弟子)が、師匠の名を名乗ってから自分の名を名乗ると、この悪人を育てたのは、あいつ(師匠)なんだ!と喧伝されることとなる。悪人の師匠としては、確かに名を貶められた気になるよな。


 そのため、師匠は悪人となり下がった弟子を、命に代えて矯正するか、抹殺しなければならない、というのが暗黙のルールとなっている。俺はモグリの魔法師だし、なによりシルフェさんもリーゼも外道働きなどしないと思うからその心配はしていないよ。


 シルフェさんは、リーゼに、パルスキーで、日中、魔法師の心構えと魔素の扱いの基礎を教えている。二人とも同じ系統(水系統)が得意なため、修業は順調にいっているようだ。


 一方の俺は、魔法師としてのシルフェさんに命を狙われないために、ちゃんと義務を果たしている。寝る前の30分と早朝の1時間、シルフェさんに魔素の状態変化をみっちりと形質転換の基礎の基礎を教えている。現代魔法理論に形質転換の概念がないので、まずは身体に染みわたらせないとなにをやっても無駄と思ったからだ。


 『偉そうに。我が魔女っ娘の教育プランを考えてやったのじゃぞ。主殿よ』


 そう。エクスは魔王だっただけあって部下や弟子の教育方針を決めるのに長けていた。


 『わかっているよ。エクスはさすがだよ』


 と素直に称賛する。これも俺の心の広さだな。






 それはそうと、俺は、エクス・ゲファルナート魔法王国の人材発掘で一つ思いついたことがある。リーゼがヒントになった。


 アリア派の参謀職の仕事で手が空く時間をみつけて、シルフェさん、リーゼに加えて、実家のアーチャー家から、シンバとシンバの部下のパリーを引き連れ王都内を移動している。


 俺とシルフェさん、リーゼは馬車の中で、護衛役のシンバとパリーは馬に乗って周囲に目を光らせている。今日は、アルフレッドではなく異国の大貴族ゲファルナ卿としての用向きであるため、いつもの黒ローブにマスクのいかにも魔法師様というノーフェースルックだ。


 シルフェさんとリーゼは、魔法ブースト用の杖を持ち、市中にいる魔法師様という服装になっている。シルフェさんは王女専属魔法師をやめたので、以前よりも簡素の服装だけど、自然体で今日もきれいだなと、感心してしまう。


 ちなみに、俺たちが乗っている馬車は、俺専用にと、アリアさんが手配してくれたものだ。異国の大貴族様という設定なので、王都内を徒歩で移動する訳にもいかず、王宮の馬車を外国の貴賓として借り受けている形だ。


 馬車があるのに、護衛がないというもかっこがつかないので、お忍び感をだしつつ、最低限の護衛として、シンバとパリーを実家のアーチャー家の屋敷から王都へ拉致してきた。


 3名の魔法師プラス2名の護衛という一団になっている。


 向かっている先は,,,,,,


 「主様。こちらです」


 リーゼの案内で、俺たちはスラム街にあるリーゼの育った孤児院に到着した。






 「あれ?リーゼ姉ちゃんじゃない?」


 3年ほど前までリーゼもこの孤児院にいたので、リーゼの事を覚えている子供たちもいるようだった。リーゼの事を覚えていた男の子に、リーゼが「神父様に会いに来た、と伝えてほしい」と頼んだ。しばらく、孤児院の庭先で待っていると神父様が出てきた。


 「リ、リーゼか?息災だったか?それよりもお前のその恰好は,,,,,,」


 リーゼの育ての親の神父様は、リーゼの変わりように驚いたようだった。マントこそ羽織っていないが、杖をもち、めったにいない魔法師の恰好をしていれば、驚くのは無理もない。


 「神父様。ご無沙汰しております。お元気そうでなによりです。今日は私のお仕えする主様の御用で伺いました。主様が、神父様にお話がありますので、少々お時間をいただけないでしょうか」


 「そ、そうか。それにしてもお前のその口調は,,,,,,。苦労があったのだな」


 11歳で孤児院を出てから、リーゼが苦労をしてきたことと思いを馳せたのか、神父さんは一瞬、辛そうな顔をしていたが、それ以上は聞いてこなかった。


 「神父様。お初にお目にかかります。シルフェ・アンダーソンと申します。先日まで第三王女殿下の専属魔法師をしていました。そしてこちらが、遠国の大貴族であられるゲファルナ卿です。ゲファルナ卿は第三王女殿下の相談役になっていただいています」


 「とにかくお入りください。皇室に関係される方々を迎い入れるのには、廃屋に過ぎて、お恥ずかしいですが,,,,,,,,,」


 神父様が孤児院の来客室まで案内してくれた。粗末なつくりの孤児院で、喜捨に頼っているというのは本当のようだ。これで、隠し財産を神父様がもっていたら、人間不信になりそうだな、と、くだらないこと考える。


 『主殿よ。探知魔法で調べたが、金目のものなぞないぞ』


 エクスが気を聞かせて調べてくれた。人間不信にならなくて済みそうだな。

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