3.国を使った壮大な「遊び」という名の「実験」のススメ
国の発展とは、豊かさだ。
どのくらいのモノを生み出すことができるのか?
俺は幼女声の魔王相手に、人間社会、とりわけ経済理論を説明する。
半分もわかってくれたら御の字だ
『主殿よ。魔界一の頭脳と呼ばれた我を挑発するとは良い度胸じゃ。主殿こそ、我の博識さに舌を巻くであろうな』
エクスのたわ言は聞き流して、俺は説明を続ける。
豊かさ=モノを生み出したかで測り、それは、「人口」と「生産性」の掛け算で測る。
新しい都市国家に、いきなり多くの人を住まわせることはできないため、代わりにブラックストーン技術をフンダンにつかって、「生産性」を周辺国の数倍の高さにする、ということを試してみたい。
そうすると、人口が1/10でも、人口が10倍の隣国と同じ豊かさになる。国民一人一人の感覚だと、全員が大金持ちになった気分になるだろうな。
『主殿よ。なるほど。我もそう思っておったぞ。「セイサンセイ」じゃな。「セイサンセイ」。国を使った壮大な「遊び」じゃな』
伝わっていないことは伝わったぞ。でも、遊びではなくせめて「実験」といってくれ。
その実験のために、新しい魔法を組み込んだブラックストーンをすでにいくつか準備した。楽しみで今晩は眠れないかもしれないな。
俺とエクスは、転移魔法で、フロンティア島(仮称)に一番近い国へ移動し、そこから、飛翔魔法で目指す島へ向かう。すでに日が傾いており、暗くなる前に到着したい。
飛翔魔法のスピードを上げるため、俺は新しく考えたブラックストーンを使ってみることにした。アリアさんと魔技省次官ジュリドさんにはブラックストーンの鉱石の性質上、一系統の魔素しか込められないと嘘の説明をしていたが、これは、複数の系統を組み合わせたデュエル魔法バージョンだ。
俺の右手には「風」系統と「火」系統の魔法の両方を組み込んだブラックストーンを握っている。
しかけはそれほど複雑ではない。
まず、風魔法で、進行方向からの空気を大量に吸い上げる。つぎに、火魔法で、吸い込んだ空気と炎を混ぜ合わせ、練り上げる。最後に進行方向とは逆側へ、練り上げた火魔法と空気を爆発させて推進力を得る。
うん。料理のレシピみたいだな。
この推進力を飛翔魔法と組み合わせることで、飛翔魔法単独に比べて、スピードが桁違いになった。ただ、その分、身体にかかる負担も桁違いなので、俺は、周囲に対物理の防御結界をはり、外気と身体を隔離する。
『主殿は、けったいな使い方を考えるものよ。まったく』
『人類の英知とでもいってくれ』
そんなやりとりをしていたら、火も沈むころに目的地の島に到着できた。飛翔魔法だけだったら、深夜になっても到着できなかっただろうなと思った。これで、次からはフランド王国から転移魔法で直接移動することができる。
周囲に探知魔法を展開してみる
『で、でかい。予想以上の島のでかさだ』
『そ、そうじゃのう。主殿の国の半分くらいはあるな』
俺とエクスとその島の大きさにびっくりした。
領有権を主張するわけではないけど、誰かに発見させるとも限らないため、その広大な島全体に、俺は一気に結界を張り、島の存在を希薄化する。これで周囲から発見されなくなるだろうし、誰かが島に迷い込んできても、俺の探知魔法に反応するようになった。
『明日から、町づくりを開始し、住めるようなったら、シンバたちを連れてこよう』
『主殿。はりきっておるな。さすが、この島の国家元首じゃな』
とエクスと戯れながら、転移魔法で王都の寮へ戻る。
この2か月は行政大学校の講義はそっちのけで、この島の調査と町づくりに精を出した。
シルフェさんにはまだ秘密にしていたが、俺が毎日汚れた服装で遅くにパルスキーに現れるため、根を詰めないようにと本気で心配された。元気がでるようにと、毎晩風呂で背中を流してくれる。違う意味で元気がでてくる部位も洗ってくれて、うれしいのだけど、正直恥ずかしい。
もう少ししたら俺たちの島につれていくからね、と、俺は、心の中でつぶやく。




