9.使えないモノを使えるとは言えないが、真剣な思いには答えないといけないことのススメ
フーバは拘束され、赤獅子会の連中が王都へ連行していった。
妨害の問題は、ひとまず解決したと思うが、予定していた事前調査はまだ終わっていない。
背後関係が気になっているが、気を取り直して、最終日の調査を続行する。
調査2日目は、探索魔法の使い手のフーバが一人減ったが、代わりにシルフェさんが探索用の水魔法を駆使し、ハンターたちと協力して、調査を続行した。
そして、予定していた調査をなんとか終えることができた。
俺?
最後までみんなの荷物持ちに全力投球だよ。
強いて俺の今回の功績を言えば、今回の調査には直接関係ないけど、調査対象区域に、古城跡があることを見つけ、そこに魔素が淀んでいることを感じたことだ。
気になったので、エクスに相談してみる。
『なあ、エクス。あそこの古城跡から少し禍々しい魔素を感じるのだけど、放っておいて大丈夫かな?』
『古城跡じゃから、多くの者の残留思念が溜まったものじゃろうな。このままあと10年ほど放置しておいたら、魔素がさらに形質転換を起こし、魔物や魔獣を大量に呼び寄せるかもしれんが、今すぐどうこうなるレベルではないと思うがのう。どうするな?主殿よ』
『10年単位で放置しても大丈夫ならば、今俺が何かする必要はないな。昨晩の事もあるし、今ここで、あまり目立つことはしたくない。将来、なにか起こったら、その時の偉い人がなんとかするだろう』
ということで、放置することにした。
その後、集合地点で、御者たちと無事合流でき、2日かけて王都に戻る。
帰りの馬車の中で、ジェシカさんは疲れ果ててしまったのか、こっくりこっくりと眠りに落ちていった。
シルフェさんは、ジェシカさんが寝たのを確認した後、真面目な顔で俺に問うてくる。
「アルフ君。やっぱり魔法を使えるわよね?それも私なんかよりもずっと強力な使い手だわ。魔技研の応接室でのネズミの件も、今回のフーバの拘束の際も本当に見事だったわ。なぜ実力を隠す必要があるの?堂々と魔法を行使すれば、宮廷魔法師にもなれる実力なのに」
あくまで俺はしらを切りとおす。
まだ公表するときではない。
「シルフェさん。何度も言いますが、俺は魔法を使えません。魔法や魔素の痕跡なんてありました?」
「魔法の痕跡は感知できなかったけど,,,,,,,。それにあの魔法具。魔法も使えない一介の学生が所持しているものではないわ」
「魔法が使えるかどうかと魔法具を所持していることは関係ありませんよ」
俺は、抑揚なく冷静に答える。
「それはそうだけど,,,,,,,。ではどういうことか説明してくれるわよね?」
「わかりました。俺は、ナイフを独学で6歳の時から鍛えていて、戦争も魔獣狩りもすでに経験済みです。それと、聴力が生まれつき他の人よりも優れていると思います。周りの気配の変化や足音の違いに敏感なんです」
シルフェさんは目を細めて疑いの目で俺をみてくれるが、俺は続ける。
「それから魔法具ですが、これは、実家の子爵領の遺跡からたまたま俺が見つけたのをクスねてきました。父上も知らない事です。領内の魔法師を小遣いで買収して、効果と使い方を教えてもらい、いざという時のために隠し玉としてもっていました。プロのハンターも拘束できるほどの強力な効果だとは思っていませんでしたけど」
もちろん、嘘。エクスと遊びで俺がつくったものだけど、効果は確認済み。中型魔獣であっても拘束できる。
ごまかすために、それっぽいことを言っておく。
「もし、フーバの拘束に失敗したらどうするつもりだったの?」
俺の説明に矛盾点がないか、シルフェさんが確認してくる。
「その時は、仕方ありませんので、あの場で首を刈っていました」
俺が平然とフーバを場合によっては殺していたと説明すると、一瞬、シルフェさんの眉間に皺がよった。
「どうしても、魔法の事は言いたくないみたいね」
「使えないモノを使えるとは言えませんから」
「,,,,,,,わかったわ。今はその説明で納得しておく。でも、これだけは覚えておいて。私はアルフ君の味方よ。困ったときは必ず力になるわ。パルスキーで命を救ってもらった恩もあるし。だから、もう少し私を信用してほしいの。お願い」
シルフェさんが真剣な眼差しで俺の心に語り掛けてくる。
「小役人のススメ」の一説、「木剣の愚」を思い出し、彼女には、やっぱり勝てないなと思い、言葉を発しない代わりに、うなずいて返事をする。
優しいシルフェさんに抱き着いて甘えたい、という感情を押しとどめ、鼻から息を抜く。




