21話
目を開くと、遠くから朝日が上っていた。
まだ薄暗い群青色の空に、太陽に光が差している。ぼくにとっては当たり前の光景だけど、今日はだけはいつもと違う。小屋の外で、三太兄ちゃんと寄り添って朝を迎えていた。すぅすぅ、という穏やかな寝息が、ぼくの鼻先をわずかにくすぐる。
……三太兄ちゃん、風邪をひいていないかな?
ぼくはこの寒空の下で寝ることには慣れているけど、三太兄ちゃんは違う。昨夜もとっても冷えたから、風邪をひいていなければいいんだけど。
そのことがちょっとだけ心配になって、兄ちゃんの顔をじっくりと見つめる。三太兄ちゃんはぼくのことをぎゅっと抱きしめながら、まだ夢のなかにいる。その顔は、とっても安らかだった。
「くぅん」
ぺろり、と兄ちゃんの頬っぺたを舐めてみる。少し冷たい気がしたけど、思ったよりも温かい。あれだけ冷たい風に吹かれていたのだから、てっきり氷のように冷たいとおもっていたのだけど。
その時だ。
ぼくは奇妙な違和感に気がついた
「わふ?」
体中がぽかぽかと温かいのだ。三太兄ちゃんと一緒にいるからだと思ったけど、それにしては温かすぎる。ぼくは改めて、自分と三太兄ちゃんのことを見た。
そして、どうしてこんなにも、ぬくぬくしていたのか理解した。
「わん!?」
ぼくと三太兄ちゃんを覆うように、大きな毛布が掛けられていたのだ。ぼくのことを抱きしめる三太兄ちゃん。その肩の上から、暖かそうな毛布が何枚も掛けられている。
「……くぅ?」
誰がかけてくれたんだろう?
ぼくは首を傾げながら、お家のほうを見渡す。
その瞬間。ぼくは度肝を抜かれた。
お家の玄関に、健二兄ちゃんが座っていたのだ。いつもはお寝坊さんに健二兄ちゃんが、そっとこちらを見つめている。
「わ、わふっ!?」
ぼくは驚きのあまり目が点となる。
そんなぼくのことを、健二兄ちゃんが優しそうな笑顔で見ていた。
「わ、わん―」
……どうして健二兄ちゃんが、ここにいるの?
そう問いかけようとしたとき、健二兄ちゃんは口に人差し指を立てた。しっー、と小さな声を出す。このことは内緒だよ、といわれているような気がした。
「……わん」
ぼくはわずかに頷くと、三太兄ちゃんのほうに視線を移す。兄ちゃんはまだ、眠ったまま起きる様子はない。
「……ありがとうね、タロ。三太と一緒にいてくれて」
健二兄ちゃんが小声でいった。
ぼくは三太兄ちゃんを起こさないように、……どういたしまして、と小さく答えた。
きっと、この毛布は健二兄ちゃんが用意してくれたんだろう。昨日は放っておくしかない、っていっていたけど、やっぱり健二兄ちゃんも心配していたんだ。
当たり前だよね。だって、ぼくたちは兄弟だもん。
「わん」
ぼくはもう一度、健二兄ちゃんにお礼をいった。
すると、健二兄ちゃんもわずかに頷く。優しい笑みを浮かべたまま、そっと音を立てないように家の中に入っていく。
それを見届けて、ぼくはもう一度、三太兄ちゃんに寄り添った。
そして、目を閉じながら、心のなかで感じていた言葉を想う。
……あぁ、こんな人たちの家族になれて、ぼくは本当に幸せ者だなぁ。




