長い夜が明けるまで
ヴォルフVSレオン
自分でもどうかと思う。
義理ではあるが、妹として大切に守ってきたはずなのに、本気になるなんて…。
思春期の恋に浮かれた少年のように、お前に向かう心が止められない。
途中までは本当に、良い兄として見守るつもりでいた。
だが、成長してどんどん綺麗になっていくお前を見て、いつしか誰にも渡したくないという強い欲求が生まれた。
手に入れて、自分だけのモノにしたかった。
大人になったお前を守るのは、自分しかいないと思っていた。
それだけに、いなくなったとわかった時は、恐怖で頭がいっぱいになってしまった。
前のようにまた死んでしまうのではないかという不安が極限に達した。
だから今日も必死にお前を捜し回った。
見つかったという笛の連絡があった後も、「無事を確認するまでは」と、心配でたまらなかった。自分が戦場に立たされるより、身の縮む思いがした。
安堵と言い様のない怒りと不安で、顔を合わせた途端に頰を叩いてしまったのは、本当に悪かったと思っている。
けれど、お前に告げた事は……告げた想いも忠告も、全く後悔はしていない。
旅は長い。
旅の間ずっと考えて悩めばいい。
こんな事を考えていると知ったら、お前は私に幻滅するかもしれない。
それでも構わない。
もう、兄ではいられないから。
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腕を組んで壁に寄りかかり、アリィの部屋のドアが開くのを待っていた。
ようやく出てきたヴォルフは、深刻な顔をしている。
何があった?
片眉を上げて義兄に問いかけるが、何も言わない。再び俺の肩をポンと叩くと、そのまま去ってしまった。
トスン、と音がする。
俺は、慌てて部屋に入る。
青ざめた顔のアリィが、茫然として床に座っている。
まさか、ヴォルフの奴!!
「アリィっ。大丈夫か。」
平気でないのは見てすぐわかるが、他に何て声をかければ良いのかわからない。
表情を消した彼女は、金色の瞳だけを動かして俺の方を見た。
たまらず大股で彼女に近付き、両手で顔を挟んで凝視した。目をそらすアリィは、心なしか唇が赤いような気がする。
「ヴォルフにやられたの?」
声が掠れ、自然と低くなる。
思わずビクッとするアリィ。大丈夫、わかっているから。俺はもう、君の怖がることはしないから。
義兄はとうとうアリィに対して秘めた想いをぶつけてしまったのだろうか。それだけ今日の事が、こたえてしまったのか。
だけど……。
「平気?イヤな思いはしなかった?」
これでは、どちらが年上だかわからない。そもそも俺は、何を確認しようとしているのか。
瞳を伏せてしばらく考えた後で、こくんと頷くアリィ。その勢いで、涙がとうとう床に溢れてしまった。
俺はたまらず、アリィをしっかり抱き締めた。
「大丈夫。もう誰にも君を傷つけさせないから。」
茶色くなった髪を撫でながら、そっと囁く。
大好きなアリィ。俺の大切なアリィ。
守れなくてゴメン。肝心な時に側に居てあげられなくてゴメン。
「レ〜オ〜ン〜。」
遠い昔のあの日のように、俺にもたれてアリィは泣き出した。
泣きたいだけ泣けばいい。
辛い気持ちは、吐き出せば少しは楽になるから。
何も言わずに、黙って髪を撫で続ける。
愛しいと思う気持ちが、少しでも君に伝わるといいのにーー。
静かになったと思ったら、俺の肩に顔を預けたまま、安心したのか眠ってしまったらしい。
そのまま抱えてベッドに運び、そっと優しく下ろしてあげる。
上掛けをかけ、涙の跡が残る寝顔を見つめながら、俺は思う。
ねぇ、アリィ。どんなに辛くても、明けない夜は無いよ。何度も苦しい思いをするたび、君はそれを乗り越えてきたんだから。
俺はずっと、君を側で見守っている。
これからはもう、誰にも傷つけさせはしないから。
だから今日は、安心しておやすみ。
強引な義兄と優しい義弟の話でした。
アリィは爆睡中(-_-)zzz




