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地味に転生できました♪  作者: きゃる
第2章 私の人生地味じゃない!
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夜空の星に託して

お待たせしました。彼の出番です。

 王都を出てからもうすぐ三週間。


『旅一座』のくせに、全く興行せずに(偽装なので当たり前だけど)、ようやく国境近くまで来た。街道は整備されているところばかりではないから、時々車輪が外れそうになったり、馬車が止まったり。生まれて初めて野宿も経験した。


 何もかも初めての経験!と言えば聞こえはいいけれど、そもそも私がいなければ馬車も使わずに済んで、馬でもっと早く国境まで辿り着けるはずだった。騎士の名は伊達ではないのだから。


 だから、ほとんど役に立たないとは思いつつ、料理や洗濯など自分に出来ることは努力している。

 始めは彼らの下履き(要するにパンツ)を洗うのも恥ずかしくて、『イケメンもちゃんと履くんだ〜』と、妙な感想も持ったりしていた。彼らの方も恥ずかしいのか、洗うのは専ら最近まで見習い騎士だった下っ端のレオンの役だった。

 でも、今ではもう慣れたもので、水場があれば、レオンの隣で服やパンツを洗っている。

 

 そのため、ここにきてようやく、義弟のレオンとも普通に話せるようになってきた。

 パンツが取り持つ仲って何だろう?

 でも、ま、やっと姉弟仲が修復できそうで嬉しかった。




 嬉しいといえば、野宿をした時に見られる夜空の月や星は、圧巻の美しさだった。


 街灯も家の灯りもなく、明るいものといえば焚き火の火だけだったから、少し離れれば真っ暗な世界に。そこから見る星は、前世で見ていたプラネタリウムのようで、星が降ってきそうな吸い込まれそうな不思議な気持ちになる。草地に寝転んで眺める夜空は、何時間でも見ていられるような気がした。


 驚いたのは、ガイウス様が星や星にまつわる話に詳しかったこと。彼は意外とロマンチストだ。


「アリィちゃん、見て。あそこに見える輝く大きな星、リルと少し離れた赤い星、ロルは昔、同じ一つの星だったんだ。リルとロルは仲の良い双子の姉弟星。でもある日、二つの星は大きな喧嘩をしてしまった。


 きっかけは他愛もないことで、側にある猫星を取り合ったことだと言われているけれど、よくわからない。けれど、お互いがどうしても譲らなくて、許せなくて、とうとう弟のロルが自分の身を引きちぎって飛び出してしまったんだ。


 二つの星は未だに仲直りできずに、姉のリルは大きく瞬きながら必死に弟を探し、弟のロルは後悔して血の涙を流している。


 思い合っているのに仲良くなれないって悲しいことだよね?」




 すごい話だったけれど、これは何かの教訓で、ガイウス様は何かを示唆しているのだろうか?私はレオンと仲直りしたと思っているし、そもそも喧嘩をした覚えもない。

 私が必死に探さなくても、今、彼はすぐ手の届く所にいるし、レオンが自分の身を犠牲にしてまで家を飛び出したとは聞いていない。


 それとも、実はそうなのだろうか?


 私が知らないだけで、彼には今まで苦労をさせてしまっていたのだろうか?



 そんな私の考えを知ってか知らずか、ガイウス様が夜空を指差し続ける。


「それから、あの星はね…。」


「おい、いつまでそうやっているんだ?」


「ありゃりゃ、お目付役が来てしまったようだね?」



 見ると、ヴォルフとレオンがすぐ側に来ていた。

 彼らも星を見に来たのだろうか?


 聞いてみると、レオンに「ハァ?」と言われてしまった。

 星々のロマンを解さないやつめ。

 むくれて彼の背中をぐりぐりすると、お返しにと、わき腹の肉をつままれてしまった。


 いかん、最近食べ過ぎているのがバレた?


 こうしてふざけていると、小さい頃に戻ったようでとても楽しい。

 だから、私達はきっと大丈夫。

 ガイウス様が心配されている、星の話のようなことにはならないと思う。



 後ろの方で兄とガイウス様が何かを話しているが、遠くてもう聞こえない。




「アリィに何を話したんだ?」


「双子星の話を少し…。二人の仲直りは、お前も望んだことだろ?でも、心配要らなかったみたいだね。」


「むしろ、仲良くなり過ぎた気がするが。姉弟としてならいいが、これ以上二人を煽るのは止めてくれ。」

 無表情でヴォルフが言う。


「それだとお前が困るもんな。」

 そう言いながら、ガイウスはヴォルフの顔を横目で眺める。


 本当は、双子星は猫のせいでは無く、妹を愛する大兄星によって仲を引き裂かれてしまった。青く冷たく輝くその星は、ちょうど二つの星の間に位置している。


 この男が、星の話にまで詳しいとは思えない。だから、教訓の意味を込めてアリィちゃんに警告をしておいたんだけど…。



「ふん、お節介め。」

 夜空の星を見上げながら、ヴォルフが口の端を上げて笑う。


 そんな彼と、これからも変わらず親友でいられたら良いと思う。

 だからアリィがけなげでいくら可愛く見えたとしても、深くは考えないようにしている。


 せめて俺だけは、傍観者でいたいから。



 夜の闇が濃さを増し、星々も一層強く輝き出した。彼らの様子をそっと見下ろしながら…。



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