旅一座、出発!
さすがは彼らの常宿だけあって、朝ご飯も美味しかった!
全粒粉と思われるふわふわの焼き立てパンに、たっぷりのバター。野菜がゴロゴロ入ったミネストローネのようなスープには、削ったばかりのチーズが入っている。オムレツはきれいに焼けていて黄金色だし、付け合せのカラフルなサラダもパリっとして瑞々しい。
「いっただっきまーす!!」
幸い、心配していた二日酔いにはならなかったようだから、これで安心して朝食を楽しめる。
「あれ?アリィちゃんは元気いっぱいだね。もう大丈夫なのかな?対してレオンは、どうやら寝不足のようだけど…。」
レイモンド様が涼しげにおっしゃるが、レオンだけでなく、他のみんなも具合が悪そうだ。
兄のヴォルフとガイウス様は、朝からやつれている。レイモンド様によると、酒場のお姉さんや常連客に離してもらえなかったそうだ。ロバート様とレオンも眠そうだけれど、まさか朝まで一緒に飲んでいたのだろうか?
レオンはまだ未成年だから、飲み過ぎはよくないと思う。
みんな朝食にはあまり手をつけずに、二日酔いにも効くという薬草茶に手を出している。
王都から少し離れただけでこれって、大丈夫なのかしら?朝ご飯は一日の始まりだし、ちゃんと食べないといかんよ。
「さて、落ち着いた所でみんな、いいかな?これからの事なんだけど…。」
リーダーのレイモンド様が口を開くと、みんなの顔つきが変わった。さすがに仕事となると、真面目になるようだ。
ちなみに身分をごまかすために、私達は全員町の人が着るような普通の服を着ている。
触れ込みは、レイモンド様の趣味?で『旅一座』という事になっている。
ただ、私だけが女優ではなくて、男装してみんなの世話をする従僕扱いなんだけど…。
いえ、根に持っているわけではありません。
『男だけの旅一座』という事にした方が、安全なんだとか。確かに、女性が一人紛れ込んでいるとわかると、この先お姉さんやファンが出てきた時に、嫌がらせをされるかもしれない。この姿の方が、楽っちゃ楽だし。
レイモンド様は、懐に入れていた地図を広げた。
「で、前にも話したと思うけれど、このままこのルートで国境を越えて、先ずは魔導の国リンデルで情報を集めようと思う。
最終的な目的地はアンフェールの予定だけれど、それまでにトーマスが見つかったり、彼の国が事件と関係が無いとわかれば、行き先を変更するつもりだ。」
そう、私達はこれから魔導王国であるリンデルに向かう。そこは、私の実の父が生まれ育ったところ。トーマス=リンデルの調査のために、まずは出身地や関連性の高いものから捜査しようということになった。
本当はアンフェールに直接向かった方が早いのだろうけれど、もしそう提案したら理由を聞かれて、カタカナで書かれた文字の秘密や前世の事を話さないといけなくなる。良くて変人扱い、悪ければ病院送りだ。
そうでなくても、アンフェール国のどこに行けば良いのかが全然わからないから、やっぱりきちんと段階を踏むべきだと思う。
一路、魔導王国リンデルへ。
私達の旅は、まだ始まったばかりだ。




