おまえは・・・生き・・・ろ・・・・・・
一歩一歩、螺旋階段を下りるたびに饐えた臭いが強くなっていく。
くりぬかれた石壁には誘蛾灯のように短杖が固定され、侵入者であるスレイマンを誘う様に怪しく輝いていた。
かつんかつんと響く足音の中に、ときおり小部屋からの呻き声が重なる。
腐臭、発狂したような叫び、獣のような荒い息、人の尊厳を奪われ死者と区別なく生かされている地獄のような塔の中を、スレイマンは迷いなく下へと降りていく。下へ、下へと。
先行させていた魔術の光球が塔の最下層を照らし出した。
どう見ても罠だろう。大きな円形のフロアを仕切る分厚い鉄格子には鍵一つかかっておらず、どうぞと言わんばかりに開け放たれている。
罠なのは知っている。どうせこの奪還作戦は知られているはずなのだ。
未来視の魔眼を持つあの神将の眼を欺くことはできない。
「来るな!!」
震えるような声に答えず踏み込んだスレイマンの眼にうつったのは、鉄球のついた枷をはめられたビルブラッドの姿であった。
スレイマンは一言も口を開かず走り込むと無言のまま刀を抜き放ち足枷と鉄球を繋ぐ鎖を切りはなす。
「・・・馬鹿な・・・なぜ来た!」
小さく震えながら怒りに燃える目を向けたビルブラッド。
その髪は汗と埃に塗れていた。死神が背中に張り付いているかのような憔悴した顔。
張りを失った肌の中に埋もれた目だけが、かつてのスレイマンと同様に強い光を放つ。
「生きていたか」
「なぜ来たスレイマン!答えろ!!」
「・・・風が吹いた」
「・・・なに?」
「神将と戦う風に俺は乗った。新しき風、お前も乗るに値する風だとは思わんか?」
「稀人と共闘とは無茶をしたな。『賢老』ともあろう人間が分の悪い賭けにでたものだ」
「分の良い賭けなんざ記憶にない・・・・・・お前を助けに来る事も、分の良い賭けじゃなかろう」
「まったくだなぁ。老いとは醜いねええ!『賢老』さまも随分と血の巡りが悪くなったもんだ!!」
鉄格子の近く、鈍い明かりの下に一人の男が立っていた。
魔獣の皮をなめした皮鎧を青黒い魔銀で補強した戦士が唾を飛ばして言う。
「本当に来るとはね!本当に助けたいのかね!?南方の生ける伝説とまで言われたあんたが!!糞の役にも立たない傭兵一人を助ける為に命まで懸けて!?はっはー!面白いぜ、さすが神将だ!!何一つ外れねえ」
「・・・お前一人か」
「ああ一人さあ!誰にも邪魔させねえよぉぉぉ。元S級冒険者を殺すだけなら俺一人じゃなく囲みたいがねぇ。殺すのは『賢老』だ。南方最強の戦士、不屈の英雄、精霊の友、獣人の守護者、グランの三騎士!!!生ける伝説≪ケンロウ≫だぜぇ?独り占めするに決まってるじゃねえか。老人の首一つ叩き落とすだけで俺が伝説になれるってんだからよぅ」
「一人で俺に勝てると思ってるのか?S級のツラ汚しが」
「勝てるさ。勝てるとも!お前はビルブラッドを戦力にしたいんだろうが、そんな事を俺がさせると思うかい?足をよく見な!!!」
腰に薄布一枚あてただけのビルブラッドが自分の足を見ろと示す。
鈍い明かりに照らされた両足の腱は断たれ、真新しい傷と血の跡が残っていた。
「・・・俺はもう戦えない。お前一人でも神将を・・・」
「黙れ」
スレイマンはその傷をじっと見ていた。古い傷ではなく新しい傷。
ビルブラッドの細い腕を掴む。寒さではなく、怒りでもなく、ビルブラッドの震えが痛みに耐えているものだと理解する。
「飲め」
「・・・まさかこれは!」
「ルルミカの物だ」
懐から取り出したのはエルフの秘薬だ。
亡き妻の遺品に等しいそれを握らせると、返事を待たずにスレイマンは刀を抜いて男に向き直る。
「≪慟哭≫よ。生きて帰れると思ってないだろうな」
「怒ったかい?残念だが俺には勝てないんだよ・・・あんたはここで死ぬ運命なのさ!ひゃっははは!!」
身体強化を使ったスレイマンの足が床を蹴った。
常人には見る事もできない速さで振り下ろされた刀の一撃にも≪慟哭≫は冷静に対処する。
「どうしたどうした!?『賢老』スレイマン!グランの三騎士スレイマン・グランダルト!!あんた伝説なんだろ?S級冒険者だったんだろう?ははははは!!!!こんなもんかい、こんなものを俺たちは恐れていたのかい?」
剣の腕も身体強化もスレイマンの方が上だろう、だが老いた身体は反応が鈍い。
見えているはずの攻撃をかわしきれず剣で受け、見えている隙に打ち込みたくとも一瞬だけ遅れてしまう。
並の相手との戦いならばそれでもスレイマンの勝利は揺らがないが、相手は南方でも屈指の使い手≪慟哭≫の二つ名を持つS級冒険者だ。
手甲から生み出された二本の水刃を操る≪慟哭≫の動きにはスレイマンと遜色ない冴えがある。
「風よ!」
「契約した精霊の力も、もう満足に引き出せないんだってなぁ!!」
風の魔術を切り裂いて≪慟哭≫の水刃がスレイマンの頬に一筋の傷をつける。
完全に守勢に回ったスレイマンに攻めかかる≪慟哭≫の刃。
「体力も魔力も全盛時にはほど遠いんだろ?全部知ってるぜぇぇぇええ、神将が教えてくれた話に違いは一つもねえ!はっはー!真面目にやってきたのが馬鹿みたいじゃねえか!あいつのいう事さえ聞いてりゃ俺たちに負けはねえんだ。あんただけじゃない、あんたの連れてきた連中も皆殺しだ!ビルブラッドも、稀人もエルフも獣人も終わりさ!!北のグランドゥエルも俺が縊り殺してやる!グランの三騎士を全員殺したらどうなるんだろうなぁ!?ひゃっははああああ!!」
刀一つで防ぎきない無数の傷をその身に刻みながら、スレイマンはちらりとビルブラッドを見た。
防げたはずの一撃が肩を鋭くえぐる。
何かの贖罪でもするかのように≪慟哭≫の攻撃をスレイマンはその身で受け続ける。
ビルブラッドとスレイマンの視線が重なった。
エルフの秘薬を手にしたまま呆けたようにみつめる、ビルブラッドの瞳。
その瞳の中にスレイマンはかつて見た世界樹の気高さを。森の輝きを確かに見た。
口元が歪む。笑みを浮かべたスレイマンの腹が決まった。
ここが死に場所なのだとスレイマンは理解した。
この時のために自分が生きてきたのだと。
この一戦のためだけに、己が生かされてきたのだと理解する。
魔力を研ぎ澄ませる。
最後の身体強化、最後の精霊の力、この一撃で腕が折れてしまってかまわない。
二度と立ち上がれなくとも良い。心の臓が止まってでも、この一撃で≪慟哭≫を殺す。
神将が視た未来を変えるだけの一撃を。
ただその一撃が欲しいとグランの三騎士であるスレイマン・グランダルトが天に祈る。
誘う様に引いたスレイマンを追った≪慟哭≫に放つのは裂帛の一撃。
老スレイマンが放つことのできる最速の、最高の一撃。
神将にさえ深手を負わせる、風の魔力を纏わせた刃が閃く刹那、≪慟哭≫が言った。
「それは、知ってるぜぇ」
スレイマンは誘い込んだのではなく誘い込まれていた。
床に書かれた魔法陣が光を放ち、水でできた大きな牢獄がスレイマンとビルブラッドを封じ込める。
それでもまだスレイマンの刃は≪慟哭≫の命を断てる距離にあった。
踏み込み、魔力を練り上げ、一撃を打ち込まんとするスレイマンを見た≪慟哭≫が蔑むように笑う。
「娘と俺を引き換えるかい?」
水牢から無数の水刃が伸びた。
鉄格子すら寸断する水の刃が触手のように蠢き、ビルブラッドを襲う。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
剣を握った。
理由は覚えていない、だが、自分には何かができるのだという全能感だけを覚えている。
冒険者になって最初の頃は失敗を繰り返した。
依頼をこなせなかった事も一度や二度じゃない。気の合う仲間とパーティーを組んで魔獣や魔物を倒しに行き、成功したにも関わらず報酬の分配で揉めることもあった。
薄い粥のような食事と藁のベッドで寝る為に街中を走り回って笑われたことだってある。
一年と経たずに何人もの冒険者が辞めていき、また新しい冒険者たちが生まれ、消えていく。
そんな時代、そんな時間を過ごした俺はある日、単独で引き受けた魔獣退治の依頼を遂行中に誤って世界樹の森に入ってしまい、エルフたちの洗礼を受けることになる。
当時はまだ疎遠だったエルフたちは侵入者として俺を扱い、その精霊魔術や剣の腕、体術に手も足も出なかった俺は捕らえられてしまった。
何もしていない。魔獣を倒そうとしていただけだ。
その言葉を信じないエルフたちの中で、ただ一人だけが俺を信じて、俺の弁護に回ってくれた。
始祖ホワイトモアに連なる戦士の氏族であり、世界樹の森にもほとんど残っていない真なる精霊の使い手と呼ばれている彼女の言葉にエルフたちは渋々ながら引き下がり、俺は自由を得る。
どうして助けてくれたんだ?
そう問いかけた俺に、彼女は花のような笑顔を向けて言った。
信じる事に理由は無いわ。しいて言うならあなたが豊穣神に愛されているから、かもしれないけど。
俺は驚いた。誰にも教えた事の無い俺の加護を彼女は言い当ててみせたからだ。
戦う事を選んだ俺に、戦う力を与えない麦の神の加護。
冒険者の強さとは単純に才能や加護の優劣で決まるのだろうと、この頃の俺は安直に考えていた。
同期で生き残った冒険者はみな俺よりも才能に溢れ、加護に恵まれているからこそ俺よりも活躍し、俺よりも強くなっているのだと信じていた。
まぶしく見えた同輩と俺は違う。
冒険に失敗し、恥を晒し、死ぬことも無く生き残り続けている無能な冒険者。それが俺だ。
死なない事は強さなのよ。彼女が言い、その手が俺の髪を撫でた。
若草の香りが鼻をつく。
あなたは精霊に愛されているわ。大丈夫。
信じなさい。天寿を全うする頃には誰よりも強くなっているはずだから。
俺は彼女の手を取った。
精霊の愛だけじゃなく、俺はお前の愛が欲しい。
一目惚れだった。その美しさ、優しさに心惹かれた。
俺は求婚を断わられたまま世界樹の森に居座り続けて口説き続けた。
帰らない人間がよほど珍しかったのだろう、エルフたちは代わる代わる俺の様子を見に来ては食べられる草木の実りを教えたり、剣や身体の使い方を教えたりしていった。
いま思えばそれは嫌がらせのようでもあり、ただの暴力だったのかもしれない。だが当時の俺は彼女と同じ場所にいられる事と、彼女の仲間に認められたい一心でそれに食らいついていた。
世界樹が朽ちていくのだと聞かされたのは一人の戦士が蜂蜜酒を持ってきた時だ。
循環するマナは濁り続け、世界を癒す役目を持った世界樹でさえもう限界に達しつつあるのだという。
澱んだマナは獣を魔獣に変え、マナ溜まりは異界に繋がり魔神どもを呼び込む。
湧き出す魔獣や魔神たちを葬る役目を自分たちは担っているのだと戦士は誇らしげに言った。
その話を聞いた数日後、大規模な魔獣の群れがエルフたちを襲った。
氷弾を吐く双頭の魔犬、大木を噛み千切る大鰐、石壁をなぎ倒す青熊。
それは上位の冒険者でなければ苦戦するような化け物たちだ。
時間の流れがわかりにくい世界樹の森で数か月か、あるいは数年の研鑽しかしていない俺には勝つことが難しい強敵を相手に、俺は戦い続けた。
精霊を従えて魔獣たちを蹂躙する彼女の横で、ほんの少しでも彼女の力になりたくて。
七日七晩続いたその戦いの終盤、俺は青熊の一撃から彼女を庇って致命傷を負った。
全身から命が抜けていくのがわかる。だが後悔は無かった。所詮は冒険者だ。戦って稼いで死ぬだけの人生だ。何かができるのだという全能感はまやかしだった。俺はここで死ぬ。それでも彼女が、少しだけでも俺を覚えてくれるならそれでよかった。願わくば、俺の身体がマナに溶けて、そのマナが世界樹の森の中に根付いてくれたら良いと、そう麦の神アラヴィスムに祈る。彼女がいるこの土地で、彼女の精霊と共にいられるのなら、それは悪くない。
一命を取り留めて粗末なベッドで眼を開けた時、彼女は俺の事を抱きしめて泣いていた。
なぜ、どうしてと問う彼女に俺は笑って言った。
守る事に理由なんてない。しいて言うなら・・・俺は君を愛しているし、君のいるこの森も好きだ。できることなら君も、君の精霊も、何もかもを守りたいくらいね。
そこからは眠る時間さえ無かった。
俺たちは愛し合った。だが南方でエルフと人間の仲は良いとは言えない。
俺は誓った。必ず彼女と共に過ごせる国にするのだと。
俺とルルミカの子が胸を張って街中を歩ける世界を作るのだと。
森を出る前に彼女は自分の精霊を俺に貸してくれた。
それは普通の精霊とはほど遠い真なる精霊、その力の全てを俺に貸してくれるのだと言う。
あなたがお爺さんになる前に迎えに来てね。
そういうルルミカの顔を俺は生涯忘れた事は無い。
とっくに死んだと思われていた俺が戻った事で、南方王都の冒険者ギルドではほんの一瞬だが注目された。俺はその一瞬を逃さず自分のランクで挑戦できる最も困難な討伐依頼を引き受け、見事達成する。
神殿が、貴族が、ギルドが興味本位で投げかける無理難題をすべて叩き伏せながら上位冒険者に成り上がると、国益に貢献できるような仕事を自分で発案しては懇意の貴族の依頼として処理し、成功させていく。
災厄と呼ばれるほどの強大な魔物を倒し、獣人の市民権を獲得するため東方帝国との通商路を開いて獣人の商人たちを呼び込んだ。
数々の偉業をなしてグランの騎士となった俺は南方の武力を知らしめる為に国の代表として北方王国の剣舞祭に参加し、最強の名を欲する北の勇士たちを打ち倒して三度優勝する。
南方は発展し、二十年の歳月をかけ、ようやく俺はルルミカを迎えに行くだけの準備を整える。
しかし、南方王ザフィールが書いた講和の書状を手に世界樹の森へ向かった俺が聞いたのは、愛する妻ルルミカが死んだという事実だった。
講和を結び、数少ない遺品を持って街に帰った俺は南方の誇る英雄として称賛された。
ランズアップ侯爵から縁談の話しを持ちかけられた時、俺はなんの反論も無く従った。
生きている意味を失った。俺の戦いが、俺の人生が、空虚な物に成り下がった。
剣を振れば勝てる。だが勝ってなんの意味がある?
俺は彼女と一生会う事はない。二度と共に歩むことはない。
アンネリンゼは英雄を尊敬のまなざしで見る少女で、俺によくしてくれた。
義務として抱き一女をもうけ・・・そこで、俺は完全に死ぬ。
アンネリンゼだけでなく、生まれた娘でさえも俺は心から愛する事ができなかった。
俺にはもう妻がいるのだ。心の中に、一番奥にもう座っていて、彼女の顔を思い出さない日は無いのだ。
どれほど辛くとも彼女の事を思えば戦う事ができた。不可能だと言われれば言われるほど胸の奥に火が付いた。できない事をやってのけるのだ。その先に彼女が待っているのだ。
俺のすべきことがなんなのかわかった。全能感の正体を知って立ち止まることなどできはしない。
死にそうな目にあい続け、そのすべてで生き残ってきた。
なんのためだ?
ウォートロルに足を折られ、泥をすすりながら生き延びたのは。
東方で毒を盛られても交渉の席を離れず、屈することなく生きて戻ったのは。
血の小便をだしながら歯を食いしばって生きてきた二十年はなんのためだ。
やがて冒険者として戦う意味を見いだせなくなった俺はギルド証を返上し、ザフィールの補佐として政務に勤しむ事になる。
獣人たちのため、エルフたちのため、罪滅ぼしでもするかのように法を整備し平等であろうと励んだ。
到底終わらないだけの仕事を抱え込んで王城に泊まりこみ、他国に足を運ぶ機会を増やした。家に帰りたくなかったからだ。
ただ動き続けている間だけ俺は自分の中に溜まる何かを忘れる事ができた。
それからさらに二十年の時が過ぎた頃、俺の耳に聞きなれない傭兵団の名前が届く。
それは俺が忘れる事の出来ない名前。
俺の中に留まり続けた何かが濁流になって溢れだす。
驚くべきことに、その傭兵団の団長は公的な場所に足をまったくと言っていいほど運ばないらしい。
どれほど格式のあるパーティーに呼ばれた時であっても、貴人のような容姿を持った副官と、いかにも傭兵然とした厳つい顔の三席の二人が名代として出席するのだという。
俺の中に確信があった。もしやという思いは無く、間違いないと言う確信だけがあった。
様々な伝手を使い、初めて見た彼女の顔を見て俺は涙する。
彼女の姿に、確かに在りし日のルルミカ・ビルブラッドの面影を見つけたからだ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
血まみれの手でスレイマンはビルブラッドの頬に触れる。
彼女を守るために差し出した己の身体は無数の刃に貫かれ、もう声も出ない。
最後の一撃を振るう事もできず、娘を助ける事もできず、何一つなせないまま死んでいく。
涙がでた。口から溢れる血と同じだけの涙が溢れ、申し訳なさで胸が締まる。
ルルミカとの誓いを何一つ守れなかった。
生涯をかけてなお足りず、何一つ残せぬ己の愚かさが憎らしい。
生きてくれ。スレイマンの願いはそれだけだった。
自分は地獄に堕ちても良い。無限の責め苦を負っても構わない。
だが娘だけは。自分とルルミカの子供にだけは未来が欲しい。
神々に願う。自分を選んだグランに願う。祖霊に、精霊に、大いなる始祖に、世界樹に、マナに、ありとあらゆるものに乞い願う。
息混じりの声が、血反吐混じりに絞り出した声がビルブラッドの耳朶を打つ。
「おまえは・・・生き・・・ろ・・・・・・」
それが、スレイマン・グランダルトの最後の言葉だった。
冒険者の二つ名、『慟哭』と間違えて書いていたものを≪慟哭≫に修正しました。




