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リシュ様にお任せちゃんちゃん!!

あけましておめでとうございます!

「セルシス様・・・セルシス様!!」


その声は心地よく耳に響く。

どこか遠い所から呼ばれたかのような感覚。

ゆっくり目を開けると、ベッドに寝そべる俺の手を握りしめて泣いているドミがいた。


思わずクリームタビーの猫耳をさする。

柔らかくて暖かい猫耳。


「・・・セルシス様・・・?」

「ドミ・・・おはよう」

「セルシス様!!」

「・・・セルシス」


飛び跳ねるようにして顔をうずめてきたドミの横で、少し赤い目をしたダーナが言う。

金属で補強した皮鎧は以前と形が違う様に見える。新しいものなのだろうが、なぜか赤黒い血の染みが無数に散見された。


「ダーナ?・・・なんでここに・・・・・・」


まだ夢でもみているのだろうか。薄い現実感の中で俺はドミの頭を撫でた。

猫を撫でる時のように首に伸ばした指がギルドカードに触れる。

黒い盤面に浮かび上がるのはCの文字と、星が2つ。

C級のダブルスター・・・・・・ん?


「C級のダブルスター!?ドミ、お前冒険者になったのか?」

「はいっ!セルシス様とお揃いです!!」


むふー、と誇らしげに胸を張るドミ。残念だが胸は無い。いや・・・うっすらとあるか?


「なんで私の方を見たのかしら?」

「いやいやいやいや。おぉ!?ダーナA級になってる!!え、ちょっとまって、俺ってそんなに寝てたの??もしかして何年か経ってる!?」

「・・・・・・そんなわけないでしょ。はいこれ、セルシスのよ」


渡されたのは小さな黒い板だった。

電車の切符みたいなそれに俺が魔力を通すと、板は金色のマナに変わって俺の首にかかったギルドカードへ溶けるようにして消えていく。

新しく浮かんだ文字はCに星2つ。


「C級?なんで??」

「魔神将倒した事を考えたらS級でも誰も文句言わないわよ・・・もしかしてS級が良かった?」

「そういう事じゃなく!!逆だよ逆!昇進試験とかだって受けてないし・・・」

「魔宮の森でアンタが助けたのはB級とA級の冒険者よ?B級とA級をまとめて助けられるF級なんて許されると思ってる??かてて加えて、神将と戦った私たち全員の推薦。もともとC級だった頃の私に模擬戦で勝ててるんだからC級までは無審査で平気でしょ」

「そんな審査兼ねた模擬戦じゃなかったろ!?」

「文句がある奴がいたら【緋蜂】のダーナが相手になってあげるわよ」


ただでさえ戦意の塊みたいなこの女がA級とか誰も止められないんじゃなかろうか。


「一応言っておくけどドミのランクはギルド長の特例措置でC級に引き上げてあるだけだからね、本来はまだD級よ」

「いや、それでも十分高いだろ」

「S級冒険者の推薦付きだもの、当然でしょ。なんにしてもC級のダブルスターならA級までの依頼を引き受けられるんだから、私たちと一緒に行動できるって事。わかった?」

「・・・お、おお。わかったけども」


言っている事はわかったけども状況の理解が追いつかない。


「セルシスさま・・・お身体の具合はいかがでしょうか。マナに違和感などございませんか?」


ベッドの左側にいるダーナとドミの逆側に立つ姫巫女が俺に聞く。

その隣には異様に美しいダークエルフの女戦士。


「ベ・・・・・・あ、いや。別に違和感はないよ。マナは戻ってるから問題ない」


女戦士の名前を言おうとして口ごもる。

誰だろう。知っている気がするのに名前が出てこない。

カリエンテ?ミンスミン?いや違う。腰まで伸ばした銀髪に覚えがある。

昔の事じゃない、つい最近・・・どこで見たんだろう?

フッ、と女戦士が笑うと、その鋭かった眼光が急に可愛いものに変わった。


「お初にお目にかかる。私は夜明けの神ベスティア。神格は違えどアラヴィスムやレプロンと同様に神々の一柱だ。稀人セルシス、世界樹を新生させてくれたこと。我が同胞であるエルフたちを護り龍種を退けてくれたこと。礼を言う。人の身で神将に挑むあなたには多大な感謝しかない」


そう言って彼女は俺に手を差し出した。

反射的に握手する。


「どうか稀人に頼ることしかできない我らを許してほしい。この場にいない神々もみな、あなたに感謝の念を抱いている」

「えーっと・・・・・・・・・はい。でも龍種は倒せたの一体だけで一体逃がしちゃいましたし、こっちもアンカネブラに助けて貰ったりとか、色々良い事もありましたし・・・・・・なんだろ、んー、うまく言えないんですけど、困ったときはお互い様ってことで良いんじゃないですかね?」


苦笑しながらそう答える。日本人的回答としては百点じゃないだろうか。


「それよりも状況がちょっとわかってなくてですね。なんでドミとダーナがいるのかーとか」

「色々あったのよ!説明してあげるからちょ・・・」

「ああダーナ、それ大丈夫だから」

「・・・は?」

「リシュ!」

「はいな!!」


空中にポンッ、と現れたのは俺の契約した世界樹の精霊だ。

膝の裏まで届くようなエメラルドグリーンの長髪には一房だけ朱色の髪が混ざっている。

厚みのある胸を隠すのは桜色の布製胸当て。ヘソ出しでスリットの入ったミニスカート。控えめに言ってもボンキュッボンのダイナマイトボディだ。


・・・身長20センチくらいしかないけど。


「『繋いで』くれ」

「リシュ様にお任せちゃんちゃん!!」


リシュの権能は『繋ぐ』

俺の言葉に従ってリシュはダーナやドミと俺を繋いだ。

ここに来るまでの経緯がすべて俺へと流れ込んでくる。


「・・・そうか、ヴェラーラがダンブランに・・・」

「ちょ!?なんでわかるのよ!?」

「そういう権能なんだよ・・・・・・願いの石か。ありがとう。二人が助けてくれなかったら俺は死んでたかもしれない」

「・・・・・・べ、別にアンタの為に戦ったわけじゃないんだからね!?不帰の迷宮に前から興味があっただけなんだから!」

「セルシス様の為に頑張りました!!」


対照的な事を言いながら二人の顔は同じように赤い。


「本当にありがとう・・・何か返せたら良いんだけどな」

「稀人!お返ししてあげようぜ!!」

「セルシスだってば・・・・・・リシュ、なに持ってるの?」


リシュは両手に光る玉を持っている。リシュが持てるくらいだから相当小さいものだ。


「それは・・・願いの石か?」

「さすがベスティアさま!あったり~。でも残滓みたいなものだからこのままじゃ消えてなくなっちゃう!稀人、これに形を与えてあげて!!!」


言ってる傍から、光の玉からキラキラとマナが流れ落ちていく。

形・・・形・・・形?あー、思いつくままで良いか。


部屋の中が光で満たされた。

リシュの手の中には太陽、月、星を模した三つの宝石が置かれている。


「三つ??」


リシュが疑問の声を上げた。

ああ、うん。なんとなくアンカネブラの事を思い出した俺は二つじゃなく三つに形を分けてみた。

割り切れないだけの縁があったら良いな、と思ったからだ。


月を模した宝石が付いた髪止めをダーナに、太陽を模した宝石が付いた指輪をドミに。

そして、星を模した宝石が付いた小さな小さな腕輪をリシュに渡す。


「すでに使い終えた願いの石の残滓。万能の奇跡には足りぬだろうが、かつて世界を救ったものが残してくれたものである事に変わりはない。きっとどこかでお前たちの背中を押してくれるだろう」


柔らかくほほ笑むベスティア。

俺の中で何かがほほ笑んだような気がする。


「・・・リシュ」

「はいなっ!」

「フェイも来てるらしいんだけど・・・繋げる?」

「お任せ~」


≪・・・・・・フェイ、聞こえる?いまダーナとドミが一緒にいるんだけど≫

≪・・・・・・もしかして、ダチ公か?≫


腕輪を装備してブイサインをしたリシュが俺とフェイを『繋ぐ』

さて。こっからだ。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「・・・・・・本当に、上手くいくのか」

「さてな。だがどちらに転んでも損は無い。奴が勝つのであれば素直に称賛しよう。逆に敗れるのであれば我の勝利はより不動の物となる。貴様にとって都合が良いのはどちらであろうな?」

「俺は・・・・・・」

「良い良い。貴様には強さがある。それは我が認めて讃えるに値する美しいものだ。人の情欲には際限がない、しかし理性と言う重しがその情欲に蓋をする・・・貴様は違う。貴様の情欲には確固たる信念がある。明確な指針があり、行動がそれに伴う。眼球と樹の洞の区別がつかぬ凡百の神々では貴様を測る事はできまい・・・ゆえに、我は貴様に力をくれてやるのだ。我らが主の尊い加護を。望みを叶えるにたるだけの祝福を。世界のすべてに、貴様の名を刻む瞬間を」

「・・・俺に、できると思うか」

「できる・・・などと戯言は吐かん。望むのならば叶えてみせよ、機会と可能性だけは与えてやる。命を賭けて奮え人間!命で足りねば友を売れ、親を殺してでも積み上げろ、真実貴様に願いがあると言うのなら、そのために代価として差し出せるすべてを踏み台にして手を伸ばせ!!・・・種は撒いたな?」

「ぬかりなく」

「ならば時を待て・・・・・・時がいたらば、グランの血を我に捧げよ」


今年もよろしくお願いいたします!!(ぺこり)


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