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ニューワールド  作者: 池宮樹
ある男の回想 前世から幼年期まで
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第七話 入り口で財宝につまずく事もあるわけで

いや~さすがにこの場所で冗談かます余裕は無いわ、俺。


ジオです。


何ていうか画面越しの記憶で知ってはいたんだけどやっぱここの雰囲気は暗い。

昔なら「グラフィックスタッフいい仕事してるぜ!いえっふううううううう」とこの独特の負の雰囲気を表現したスタッフを誉めてたんだろうが、今の俺にはきつい。


だってリアルに負のオーラが目の前の建物からビンビン来るんだもん!


いや~甘く考えてたよ『奴隷市場』。


今更そんな事をいってても始まらん!突撃あるのみ!


たのも~!


そんな感じでじぃが『奴隷市場』の店員らしき男の人に声をかけた。


色素の薄い茶色の髪のなかなかの美男子だ。

でも首輪をしてるってことは彼も奴隷かよ!

ここの主人は奴隷に店番任せてるのか………。


そうやって俺が驚いているうちに男がこちら、いや俺に話しかけてきた。



「これはこれは若様。ようこそおいでくださいました、エルトリンの僕の館へ」



その男は素晴らしく高度に訓練された店員さんだった。

直感で感じた、彼は出来る男だ。

ふむ、ここの主人はもしかしたらやり手なのか? と思ってしまう。


「若様のような尊い方に私どものところへお越しいただけるとは光栄の極みにございます。


本日はどのような奴隷をお探しでしょうか? 護衛用、労働用、夜伽用と様々取り揃えておりますが」


男はいささかも態度を崩さず、目の色に不穏な何も浮かべずに丁重そのものの態度で俺達に話しかけてくる。

俺達の今の格好はどうみても俺が貴族の御曹司、じぃがその執事で先生が護衛にしか見えない。

ていうか事実そのままなんだが………。


一応うちの家は貴族の端くれではあるからな。

父上が冒険者時代に多大な功績を挙げた事により王国に貴族として取り立てられたらしい。



この話聞くまで俺、父上の事ただの親バカだと思ってましたよ~♪ゴメンネ父上。



しかし格好や見た目なら普通執事に話を聞こうとするはず。

この兄さん、今初めて俺を見ただけで、俺自身が客と見ぬいてんのか? どんだけ慧眼やねん!


俺がしばし呆然としているとじぃが俺の肩を触って促してくれた。


今回の件、俺は交渉も含めて俺にやらせてくれとじぃ達に頼んであったからだ。


この兄さん相手には相当気合入れんとケツの毛まで全部むしりとられるな、こりゃ。




うっし!気合入った。戦闘開始だ!


「こんにちは、お兄さん。僕の名前はジオといいます!

僕まずお兄さんのお名前教えて欲しいな~」


先制攻撃。奴隷に対してこんなにフレンドリーに話しかける貴族の御曹司はいないはずだしな。ウケケ。


はっと息を呑む男。

しかしすぐに何事も無かったかのように、これまで以上の笑顔を浮かべ、丁重に俺達に言葉を返してきた。


「ご丁寧に私などにお名乗りいただき恐悦至極でございます。

しかし私の名前ですか?私のような下賎な奴隷の名前など………。


………失礼致しました、シランと申します。


以後お見知りおきいただければ幸いでございます、『小さな旦那様』」



うぉっ、こら手ごわい………。

さすが俺に名乗られた後は他の客、ましては貴族の場合そんなことは絶対しないせいか、めちゃめちゃ驚いてはいたけれどそれでも乱れず、その後の受け答えもどこをとっても完璧………。



しかも極め付きは『小さな旦那様』か………。



俺の評価をただの貴族のガキから上方修正して、さらにそれをこちらに即アピールしてきやがったヨ。



付け入る隙が無いとはこのことか、まったくいやになるほど優秀だね。



ちなみになかなか言おうとしない名前を言わせたのは、いつもの幼女様直伝の必殺技のおかげだ!いつもありがとう幼女様!



決めた。とりあえず俺が最初にすべきなのは………。



「え~~~と、シランさん。あのね、聞いてもいい?」


「シランで結構でございます。」


「あぁ、うん。じゃあシラン。その首のへんなのしてる人はえ~~と、う~~~~んと、なんだっけ?」


ここで10歳相応のポーズを作る!自分の手の内は明かしませんよ!簡単には!


「あぁ、そうでございますね。この『従属の首輪』をつけているものは全て奴隷でございますね。」


おし、言質取った!


しかし何かシランさんの頬が若干赤くなってきてるぞ。

俺の必殺技にやられたか?もしかして危ない人なのか?そっち(ショタ)なのか?


少し身の危険を感じた俺だったが、作戦を続行する。




「そっか~、じゃシランさんも買えるんだね?」



◇◆◇◆◇◆◇◆



驚いたような、納得したような、それでいて待ち望んでいたものが現れたかのような顔をしてシランさんは頷いた。


「勿論でございます、『旦那様』。

ですが私には今現在値がついておりませんので、主人に話してみませんことには何ともお返事できないのです。申し訳ありません」


そういって頭を下げてくるシランさん。


やべぇ、マジで優秀すぎる。

まったく動揺しないんですけど、この人。


そして『旦那様』だと? また俺への評価を上方修正ですか?


まさか俺の考えをリアルタイムで正確に読んでる?


だからどんだけなんだよ!あんた!



だめだ、勝てる気がしない。

この人のことは後で考えることにして、とりあえずいったん切り上げよう。



まったくダンジョンに入ろうとしたら入り口でとんでもない財宝見つけた気分だわ。



「じゃあシランさんのお話はひとまずあとにして~ここにいる人たち『全部』見せて欲しいな~」


「『全部』で………ございますか。

………かしこまりました、今準備させますのでしばしお時間を頂戴できますでしょうか?

準備が整いましたらお呼びいたしますので、しばしこちらの部屋でお待ちくださいませ」



そういって入り口脇にあった小部屋、大口の客に対する応接室なのだろう、に通された。


その部屋は小さいながら俺の目から見ても場違いなほど豪華な部屋だった。


申し訳ありませんがこの部屋でしばしお過ごしくださいませ、と言って奥に消えていくシランさん。



彼の姿が消えたのをドアが閉まった音で確認して、俺は大きく息を吐いた。



やべ~まじやべ~、あの人何者だよ。

そう思いながらじぃを見ると俺も同じような顔をしてるんだろうと思う顔をしてた。



彼はやばい、言葉は悪いがここに置いとくのは宝の持ち腐れでしかない。

良くも悪くも。




ていうことでこれがこの後、俺の忠実な右腕となり、俺の行動の全てを生涯通じて支えてくれるシランとの出会いだったのだが。







ただ今でもたまに後悔する時がある。

この時の俺の判断は正しかったのかと。俺の胃的に。


有能すぎて怖いんだよ、彼。しかもドS。俺が逆らえない人No.2。





No.1はもちろんマリエルだけどな。

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