閑話 呼び名を変えてみよう
ご主人様。割と前世憧れていた台詞ではあったんだけどこっちに来てその考えは変わった。何故と聞かれると何というか……微妙に嫌なんだよな。所詮俺は元平均的日本人ということなのだろう。
とまぁ何で唐突にこんな阿呆なことを言っているかというと……。
「え~とね、4人とも聞いてくれるかな?」
「はい、ご主人様」
「はいだにゃ~」
今実家の自室にいる俺の目の前には4人の少女メイド。見事なユニゾンで答えるアリアとエリア、力の抜けたネコ言葉のリューネ、そして俺の目をまっすぐに見て頷くシルウィ。俺の従者にして今ではかわいい義妹たちである。
暖炉にくべた薪がはぜる音がする。基本地中海式気候に極めて近いと思われるエルトリンでも冬の盛りにはさすがに暖房が必要だ。何で地中海式だとか分かるのだってか? 小学校の3年間だけだが親父の仕事の関係でイタリアのナポリに住んでた事があるんだよ、俺は。
俺が元帰国子女だという本当にどうでもいいそんなことはおいといて椅子に座る俺。4人はベッドに腰掛けて。彼女達と俺がお話をするときはこの形が多い。俺の部屋にはソファなんてものはないし、だからといって女の子を床に座らせる趣味はないからな。
とまぁそんなわけで俺が今日この子たちを呼んだ理由なのだが……。
「え~と、みんな。そろそろ『ご主人様』はやめにしないか?」
◇◆◇◆◇◆◇◆
どうしてこうなった……。背を床につけたまま思わず天井を仰ぐ。先ほどまでの上機嫌が嘘のように泣き喚く少女たち。なんだ? 何がいけなかった?
「ごべんなざい~ごべんなざい~おねがいでづから捨てないで~」
「いやでつ~、エリアはずっとご主人様といっじょにいるんでづ~」
「ヤダにゃ~~~~~~~~~~~~~ぜったいにヤダにゃ~~~~~~!!」
「お願い。捨てないで。お願いです。お願い、お願い……」
俺がさっきの言葉を言った数秒後、突然4人が泣き出し椅子に座っていた俺にダイブ。当然椅子に座った状態だった俺に4人を支えられるはずもなく床に叩きつけられる形に。そしてそのまま全力でしがみつかれて大泣きされているわけである。
その後しばらくして騒ぎを聞きつけたマリエルとテトが、事態を収拾してくれた。俺はマリエルから「もう少しお言葉をお選びになってください!」と叱られたが結局何が悪かったのやら良く分からないまま今日も俺のかわいいメイドさんたちは俺のことを「ご主人様」と呼んで慕ってくれているのでまぁこれでいいのだと思うことにした。
……「お兄ちゃん」って呼んで欲しかっただけなのになぁ。
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