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プロローグ

空は厚い雲に覆われ、太陽の姿はどこにも見えない。

冷たい雨が降りしきり、遠くで雷鳴が轟く。

黒い怪鳥が不気味な鳴き声を響かせながら、空を旋回していた。


その大地に、まるで世界を見下ろすように、一つの巨大な城が佇んでいる。


ここは魔王城。

人間たちは、そう呼ぶ。

魔族にとっては、ただの故郷の中心部。

私にとっては、生まれ育った家だ。

その最奥にある玉座の間で、私は一人、来客を待っていた。


……もうすぐ来る。


何百年、何千年。

人間は幾度となく勇者を送り込み、そのたびに私を倒そうとしてきた。

そして今日もまた、新たな勇者がこの城を訪れた。


重々しい轟音とともに、巨大な扉がゆっくりと開かれた。


開いた扉の向こうから、一人の青年が姿を現す。

腰には剣を携えていた。

続いて現れたのは、杖を携えた魔法使い、祈りを捧げる聖女、重厚な鎧に身を包んだ騎士だ。

人間が誇る、勇者一行だ。


勇者は剣を抜き、真っ直ぐ私へと切っ先を向けた。


「魔王!今日こそ、お前を倒す!」


私は小さく息を吐く。


「悪いことは言わない。大人しく帰りなさい。」

「黙れ!勇者喰いの魔王め!」


その言葉に、心臓がドクリと跳ねる。

何度そう呼ばれても、慣れることはなかった。


……どうして、こうなったんだろう。

私は、誰よりも人間を食べたくなかったのに。


「どうしても戦うのね……」

勇者一行が、一斉に武器を構える。


「悪いけど、倒されてあげるわけにはいかないの」


私は目を伏せた。


私は死ぬわけにはいかない。

――“あの子たち”のためにも。


私は静かに両手を合わせる。

祈るように。

懺悔するように。


「いただきます。」


これは、私が『勇者喰いの魔王』と呼ばれるようになるまでの物語。


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