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9/10

寝坊しなかったら遅刻しなかったのに。

東京ドーム。


ライブ開始まで、あと三十分。


控室には六つあった椅子が、今は五つしか使われていなかった。


誰も座っていない一脚。


それは、かつてボンゴ担当だった伊豆井神威の席だった。


高校三年の夏。


神威は未成年での飲酒と喫煙が発覚し、退学処分となった。


バンドも活動を休止しかけた。


裏切られた。


応援してくれた人たちを悲しませた。


その事実は簡単には受け入れられなかった。


誰も神威を許せなかった。


連絡を取ることもなくなり、神威はメンバーの前から姿を消した。



文化祭。


神威がいなくなり、五人で出るか辞退するか。


何度も話し合った。


その時だった。


晶哉「文化祭で演奏してくれ。」


生徒会長・島津晶哉が頭を下げた。


隣には生徒会役員の真紫瞳と恵比寿心菜が立っていた。


瞳「みんな、このライブを楽しみにしています。」


心菜「五人でもいい。だから演奏してください。」


辰哉は仲間たちを見る。


奈美「やろう。」


名寄「逃げたくない。」


藍「音楽まで嫌いになりたくない。」


狛似「神威がいなくても、俺たちは俺たちだ。」


五人は文化祭のステージに立った。


その日、一曲目が終わった瞬間。


会場は大歓声に包まれた。


ライブの後。


辰哉は父・目白蓮に呼ばれた。


活動休止から初めて会う父だった。


目白蓮「いいライブだった。」


辰哉「ありがとう。」


父は少し笑う。


目白蓮「音楽は、誰かを傷つけることもある。」


目白蓮「でも、それ以上に誰かを救える。」


沈黙が流れる。


そして父は、一枚の名刺を差し出した。


目白蓮「デビューしろ。」


辰哉「……え?」


目白蓮「俺の知り合いのレコード会社だ。」


目白蓮「お前たちの音は、本物だ。」


その一言が、おはよう靴下ーずの人生を変えた。


数年後。新人賞。オリコン1位。


伝説のロックバンドとなった。


生徒会長の島津晶哉、真紫瞳と恵比寿心菜はそれぞれ素敵な人生を歩んでいるらしい。


そして――。


東京ドーム。控室。


ライブ開始十分前。


五人は円になって座っていた。


奈美「高校の部室、覚えてる?」


藍「神威が毎日ボンゴを叩いて怒られてた。」


狛似「先生、毎日『うるさい』って言ってたな。」


5人は揃ってこういった。「あいつはクズ。」


名寄「バンド名も、よくこれで売れたよ。」


全員が笑う。


辰哉は静かに口を開いた。


辰哉「彩のこと……やっと受け入れられた。」


部屋が静かになる。


姉・彩は、失踪したのではなかった。


家族にも知らされないまま、すでに亡くなっていた。


その事実を知ったのは、デビュー後のことだった。


辰哉は天井を見上げる。


辰哉「父さんも、俺を守るために黙ってたんだな。」


奈美が辰哉の肩を軽く叩く。


奈美「今日はきっと、彩さんも聴いてるよ。」


辰哉はうなずいた。


コンコン。


ドアが開く。


スタッフ「おはよう靴下ーずの皆さん、本番五分前です!」


五人は立ち上がる。


円陣を組む。


奈美「行こう。」


名寄「日本一のライブ。」


藍「いつもどおり。」


狛似「思いっきり楽しもう。」


辰哉は仲間を見渡した。


高校の軽音楽部で出会った、大切な仲間たち。


辰哉「ありがとう。」


五人は笑った。


ステージへ向かう扉が開く。


数万人の歓声が響く。


「おはよう靴下ーず!」


「おはよう靴下ーず!」


大歓声の中、五人はステージへ歩き出した。


あの日。


学校へ行くこともできなかった少年は、


仲間と出会い、


音楽と出会い、


再び笑えるようになった。


一つの青春は終わる。


だが、おはよう靴下ーずの音楽は、これからも誰かの朝を照らし続ける。


―完―

タイトル関係無さすぎる。

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