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神獣テイマーの異世界放浪記 〜未知なる食を求めて〜  作者: 葉山ローリエ
第一章:最弱テイマーの規格外な旅立ち 〜最強の神獣たちとの出会い〜

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第1話:特製ハンバーグと、路地裏の白い招待者

昔から、妙に動物に好かれる体質だった。


犬や猫はもちろん、カラスやスズメ、果ては動物園の猛獣まで。


なぜか俺が近づくと、それまでピリピリと興奮していた動物たちが、ふっと肩の力を抜いて大人しくなってしまうのだ。


子供の頃、父親にそのことを不思議そうに話したことがある。


親父は俺の頭を撫でながら、優しく笑ってこう言った。

『お前にはな、周りをホッとさせる、陽だまりみたいな空気感があるんだよ。動物たちは、お前のそばが一番安心できる場所だって分かっているのさ』


当時の俺にはよく分からなかったが、大人になった今でも、その感覚だけはなんとなく残っている。

相手がどんなに凶暴に見えても、敵意を捨てて懐に入れば、不思議と波長が凪いでいくのが肌で分かるのだ。


今年で33歳になる俺は、有名ホテルのビュッフェレストランで働いている。

一応、若手ながらも和洋中すべての料理を網羅し、次期料理長候補なんて呼ばれて、毎日忙しくフライパンを振るう日々だ。


「ふぅ……今日のまかないは、こんなもんかな」


ディナータイム前の休憩時間。

俺は店の静かな裏路地にしゃがみ込み、タッパーを開けた。

今日のメニューは、個人的に試作した『4種のチーズイン・ハンバーグ』。


ナイフを入れた瞬間、肉汁とともにトロットロの濃厚なリコッタチーズやゴーダチーズが溢れ出す自信作だ。ソースは、牛骨と赤ワインをじっくり煮込んだ特製デミグラス。

ふわぁ……っと、路地裏に暴力的なまでに食欲をそそる香りが漂う。


「ほら、お前も食べるか?」


俺が声をかけると、室外機の陰からチョロチョロと一匹のネズミが姿を現した。

手のひらサイズの、真っ白なネズミ。

いつからか毎日この休憩時間に姿を見せるようになった、俺の秘密の常連客だ。


「チュウ」


ネズミは前足を器用に使い、俺が小皿に取り分けたハンバーグを小さな口に運ぶ。

指先ほどの肉片を差し出した俺の周りにも、いつの間にか穏やかな空気が流れていた。ネズミは目を細めて、うっとりとした表情を浮かべた。


……うん、ネズミのくせに、美味いものを食べた時のリアクションがいっちょ前すぎる。


「ははっ、美味いか。……なぁ、お前だから言うんだけどさ」


俺は、自分用のハンバーグを頬張りながら、誰にも言えない独り言をこぼした。


「俺、毎日の仕事も充実してるし、料理も大好きだけど……たまにさ、全然違う世界に行ってみたいって思うんだよね。ファンタジーな世界で、見たこともない未知の食材を使って料理をしてみたい。色んな場所を旅して、世界中の美味いものを集めて、最高のご飯を誰かと分かち合う……なんて、いい歳して恥ずかしい夢だよな」


我ながら子供じみた妄想だと、自嘲気味に笑う。

しかし、白いネズミは食べるのをピタリとやめ、じっと俺の目を見つめてきた。

その小さな瞳が、ふいにまばゆい黄金色に輝いた。


『――ふふっ。素晴らしい腕前ですね。わたくしの舌をこれほど満足させたあなたには、その夢を叶えるだけのチャンスを与える価値があります』


「……え?」


頭の中に、透き通るような美しい女性の声が直接響いた。

落ち着きがあり、どこか気品を感じさせる声。だが、目の前には白いネズミしかいない。


『あなたのその願い、私が叶えてあげましょう。もっと美味しい未知のご飯を私に提供し続けるための、これは最高の先行投資です』


「先行投資って……お前、喋って……」


『さあ、私と共に未知なる美食を求めて、新たな世界へ赴きましょうか』


次の瞬間。

路地裏の地面に巨大な魔法陣が浮かび上がり、視界が真っ白な光に包まれた。

驚く暇もなく、俺の意識は急速に遠のいていった――。

◆ ◆ ◆


「……う、ん」


次に目を覚ましたとき、俺は柔らかな草の上に倒れていた。

頬を撫でる風からは、微かに土と青草の匂いがする。見上げれば、雲一つない澄み切った青空。


「ここは……どこだ?」


体を起こして、自分の手を見て驚いた。

厨房で包丁を握り、火に晒され続けて使い込んできた33歳の大人の手じゃない。肌ツヤも良く、明らかに20歳前後に若返っている。


「本当に……異世界に来ちゃったのか? って、あのネズミは……?」


あたりを見回したが、あの白いネズミの姿はどこにもなかった。

騙されたのだろうか。いや、この若返った肉体が何よりの証拠だ。


「……まぁ、考えても始まらないか。まずは人がいる場所を探そう」


持ち前の冷静さで状況を受け入れ、俺は立ち上がる。

遠くを見渡すと、ぽつぽつと煙が立ち上る小さな村のような集落が見えた。

未知の食材、未知の料理、そして新しい人生。

俺は高鳴る胸を抑えながら、その村へと一歩を踏み出した。

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