エリシャとアリィ
「アリィ、これは分けなさいと教えたでしょう」
使用人だけしかいないその場所でエリシャは、呆れたふうにため息をついてアリィに冷たく言い放つ。
妹であり、リッタの侍女という役割を持つアリィにエリシャは厳しい。
まぁ、アリィは少しお調子者というところもあって、少々言ったところでケロッとしているので仕方がない。
「えぇと、そうでしたっけ?」
可愛らしく小首を傾げるアリィだが、エリシャには全く効果はなく返ってきたのは言葉ではなくゲンコツだった。
元アリィの教育係として、まだまだ侍女して未熟なアリィにはしっかりしてもらいたいとエリシャは思っているのだ。
一時帰国を認められただけのローザは、そろそろまたアルレッキーノ王国に行かなければならない。
そのため、少々不安の残るアリィを鍛え直しておきたいのだ。安心してリッタを任せられるように。
「お姉ちゃんは乱暴なんだから」
ぷくっと頰を膨らませたアリィにエリシャはため息をつく。
「せめて任された立場にふさわしい能力は身につけなさい。気が合うからと言う温情だけでいるべき場所ではないのよ」
「わかってるよ。なんかお姉ちゃん、アルレッキーノ王国に行ってから厳しくなったね」
言われ慣れているアリィはへこたれない。
それよりもエリシャが厳しくなったと感じているアリィはお姉ちゃんが変わったと嘆いている。
「お姉ちゃん、向こうでなにかあった?すごーく変わったみたいだけど」
「そうですね……」
エリシャからすればいつも通り、厳しくしているつもりはないが、もし変わったと言うのならとエリシャは続けた。
「フィン様の従者の方の仕事ぶりに見習わなければと思ったわね」
「へぇ。お姉ちゃんが見習いたい人とか堅物そう」
想像で嫌そうな顔をして首を横にアリィに、エリシャはそのような方ではないと否定をする。
「あなたと似てるかもしれないわ。フィン様とはご友人のような関係性だけど、大抵のことはそつなくこなす方よ」
「意外ね」
珍しいの驚くアリィを想定済みのエリシャは予想通りの反応に笑う。
「軽口を言い合うというのは除外しても、我儘を気軽に言ってもらえる関係というのは羨ましいと思うの」
「ローザ様って無茶なこと言わないもんね。それはリアム様も同じだけど」
我儘を言って周りを困らせるのはリッタだけとアリィは零す。
聞き分けのいい兄姉のせいかリッタの我儘も子供らしいと安心するのがこの家の使用人たちだ。
初めてその様子を見たときアリィはとても驚いた記憶がある。
「ええ、だから見習いたいと感じたの」
「ローザ様にもリッタ様を見習ってほしいですね」
「そうね。お互いに足りたいものが多すぎるわね」
そう言ってエリシャは笑い、アリィの指導を続ける。
途中、リッタに助けを求めたアリィだがお姉ちゃんのようになるんだと、エリシャの留守中に言っていたじゃないのと取りつく島もなかったのだった。
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