レンとソウイチ
アルバートが自由時間でフィンと友人同士の付き合いをしている間、お互いの主に許可をもらいレンとソウイチとそれぞれお茶をして過ごしていた。
そのため、アルバートの付き添いはローザの兄であるリアムが付いている。
こちらの方が落ち着くとソウイチが持参した緑茶を淹れて二人は久々の故郷の味にほっこりとする。
ソウイチの故郷である島国は気軽に向かえる距離ではないため、簡単に故郷ものが手に入るわけではないが、ほぼ同じような故郷を持つレンと会うときはいつもこうしている。
レンは何も出さないのも気が引けるとお茶請け呼ぶにはおかしいのだが、フィンにねだって取り寄せてもらった故郷の味によく似た米を使った一口サイズの俵型むすびを出している。
一人で味わうには寂しすぎるし、周りの人たちには馴染みがなさすぎるので懐かしいと言う共感は出来ない。
そのため正確には違うものの、同郷の人間と知り合えたことは二人にとって幸運だったといえた。
「それじゃあ、だいぶクロード王子のことも片付いて」
「ええ、ですがまだまだ知識の入れ替えとなると難しいようで、長年の擦り込みはすぐに変えることは出来ないみたいです」
ソウイチが何か思うことがあるのか困ったような顔し、レンも同じような顔をして納得をしていた。
二人とも似たような経験があるため、その大変さはよくわかっているのだ。
長年培ってきた知識や技術は無駄になることはないのだが、時として知識の更新の邪魔になることもある。
遠く離れた地では生まれ育った場所の礼儀作法では奇異に映ってしまったり、故郷ではなんでもない動きが無礼な動作に当たってしまうなんてこともあるもので、慣れるまでに時間を要した。
「まあ一種の洗脳ともいえるから、幼少期の刷り込みって自分の世界の常識だし、変えるのは大変そうだなぁ」
「自分の世界の常識……」
ソウイチがレンの言葉を繰り返して、レンは頷いた。
「幼ければ幼いほど世界は狭くて、それがおかしいかどうかなんて知らないまま、これが当たり前の常識だって根付くから」
「三つ子の魂、ですね」
困ったように笑うレンはそれ以上何も言わず、話題を変える。
「それにしても、いっそ王子同士の交換留学にしても良かったかもなんて思うけど」
「クロード王子にはかなりのご負担になったでしょうね」
そういって、ソウイチが笑う。
他の国であれば無難に生活出来たかも知れないが、この国は近隣国から見ても少々特殊だ。
この国はまるで全てが曖昧で、堅物なだけではやっていけない。
わずかばかりのノリの良さと、緩やかに少しでも受け入れていけるだけの心がなければ自由人の多いこの国では戸惑いばかりになってしまう。
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