フィンとアルバート
王子同士と言うこともあって、それなりにフィンとアルバートは仲がいい。
数年前からはアルバート専属使用人となったソウイチとレンの故郷がよく似ているとかで、会う機会も増えた。
ちなみにフィンとクロードは同い年ではあるが、直線的思考のクロードと人をからかって遊ぶことのあるフィンでは相性があまり良くないらしく、個人的な付き合いはないようである。
「ふーん、王太子に決まったんだ」
「うん。経緯は知っていると思うけど想像の通り」
卒業パーティーでクロードが思い込みだけでローザとの婚約を破棄し国外追放したことが原因で、アルバートが正式に王太子となることが決まった。
反対する人間はほぼいなかったために、スムーズに話は進み後は国外に広く周知するだけだと言う。
「これから忙しくなるから、その前にフィンたちに会っておこうと思ってね」
この機を逃せばリアムがローザと会う時間はなかなか取れなくなったりするためなど使用人にも気を使ったようだ。
「王太子は大変だね」
「そういうフィンは、王太子だって言われ続けてるけどどう思ってるの」
「ほら、将来王様になるんだって言ってるのがいるから、任せるつもり」
フィン自身は王になるつもりはなく、シエルに譲るつもりだと言う。自分はそれに手を貸すくらいでちょうどいいのだと。
任せられるだけの信頼や信用があるのなら、やりたいやつがやる方がいいとフィンは笑う。
「この国らしいね」
「まぁね。ま、今のままだと王太子の座を譲れないから困ってるんだけど」
呆れ顔をするフィン。
どうにも勉強を逃げ出してしまうことのあるシエルとメーアは現状、周囲からはまだフィンと同等にも思われていない。
おかげで王位を巡る派閥争いなんかがないのでいいことではあるが、最もこの国ではそういったことが起こるかどうかも怪しい。
「相変わらず元気みたいだね」
シエルとメーアの暴走に巻き込まれたアルバートは昔、偶然だったといえ水をかけられたこともある。元気さは十分に分かっている。
「レンが上手いことやってくれてるから、少しはマシになったけどな」
「兄弟専属っていう感じだね」
「本当にそう。お前は誰に仕えてるんだって言いたくもなるくらい」
互いに近況を話したりしたところで、アルバートがところでフィンに疑問を投げかける。
「フィンがローザを招いた理由は?もちろん、ローザをかばってくれていたのは分かるけれど、フィンは理由もなく動くことはないでしょ」
一目惚れというのもないわけではないとは分かってはいるが、アルバートからみたフィンなら、もっとこう上手いことやると思うのだ。
「アルバートには気づかれてたか。今、観光業に力を入れようと思っててさ、そっちとは距離も近いしちょうどいいかなって」
「なるほど。他国からの観光客を狙うなら狙い目ではあるね」
「そういうこと」
納得したアルバートが頷き、リアムは感情を表に出さないように拳をきつく握りしめていた。
妹を利用されていることには納得は出来ないらしい。
「両国間の行き来がもっとよくならないかって話は前々からあったし、本格的に考えてもいいのかな」
「目標は庶民が気軽に行けるってとこかな」
ゆっくりするどころか仕事の話になり、それはレンがシエルとメーアの相手をしてクタクタになって戻ってくるまで続いた。




