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52 ヴァーサー・クーラーのパーティ

 校門から街へ続く生徒魔族たちの足跡をたどり、俺は夢見が丘の夜道を走る。

 道行く人は誰もいない。

 生徒魔族たちの足跡は夢見が丘公園の中に続いていた。

 しかし、公園の中の伝説の丘で足跡だけ残して手がかりが消えている。

 丘の周囲には形さまざまな魔族のものと思われる足跡が地面をえぐったまま残っている。

 しかし、周囲を見渡しても魔族の姿はない。耳をすませても夜風に揺られる木々の音しか聞こえない。


「――ガルナビ! どこだ! パーティはどこでやっているんだ!?」


 すると突然、静かな夜道に花火が打ちあがったような閃光が走る。

 激しい爆風が俺の周囲で吹き荒れる。

 周囲のまぶしさに目がくらみ、光に目が慣れると、そこには想像とは全く違った光景が広がっていた。


 夜空の下の夢見が丘なのだが、まるで昼間のような目を差す明るさの中、まるで全校集会のように大勢の魔族たちが集まっていた。

 俺の周囲には、小山のような巨大な魔族から、握りこぶし程度の小動物のような魔族まで、さまざまな魔族が確認できた。

 誰もが武器を携え、激しく興奮している様子だが、俺の姿を視界にいれても、興味も関心もなく魔族たちは襲ってきたりはしなかった。

 俺の聞き取れない言語で魔族が叫んだり、武器を地面にたたきつけている。


 空中には、ソウルたちの姿もある。

 さっき学園から脱走した生徒魔族たちの姿もちらほら確認できた。


「なんなんだよ、ここは……」


 誰もが何かを待っている様子だった。

 まるで、これからパーティでも始まるような雰囲気だ。


「先生! 先生、ここさ!」

「待っていましたよ」

「雄太!? ルア!?」


 雄太とルアが俺に駆け寄ってきた。


「お前ら、逃げたんじゃなかったのか!? なんなんだ、ここは!?」

「……き、きっとおいらのバケツの盾が必要になるかと思ってさ!」

「さあ、始まるようですよ……」


 突如、魔族たちが一斉に歓喜の声をあげた。


挿絵(By みてみん)


「オーウェイ! サーヴェイ! さあ、魂果てるまでおもいっきり暴れちゃって!」


 大歓声と共に、魔族たちは武器を振り上げる。

 そして、魔族たちは隣にいた魔族と武器をぶつけ合い、あいさつを終えると、お互いに激しくぶつかり合い、戦いを始めた。


「何を考えているんだ! こいつらは!」


 魔族の足が夢見が丘の公園の草木を踏み荒らし、吹き飛ばされた魔族が小屋を押しつぶし、斧が時計塔に刺さった。

 雄太は俺の陰に隠れる。


「わ、いきなり戦い始めたさ!?」

「さあ、パーティの始まりです。夢見が丘の結界はいつまでもつでしょうか」

「――こんなこと見過ごせるかッ! あの魔女に話をつけてくる!」


 新世界への転生、魔女の手下の地位を狙って、魔族たちが争い始めている。

 俺はこの怒りを空中で腕を組んでいる魔女にぶつけるために走りだす。


「待つガルね!」


 ガルナビとペッキンコッキンが俺の前に立ちはだかる。


「ガルナビ、まさか――! お前、協力するって約束だろ!?」

「旦那、やっぱりガルも魔族だったガル! お嬢さまの手前、血が騒ぐんだガル!」

「ペクソ!」

「どこまでも恩知らぬな魔族どもめ!」

「ガールガルガル! 旦那、覚悟ガル!」


 悪い笑顔を見せたガルナビとペッキンコッキンはすぐに悲鳴を上げることになった。地面に落ちたガルナビの背後からはぬいぐるみサイズのサリスマリスが現れた。


「――(こくり)」

「やっぱりお前は頼りになる」


 俺は小さなサリスマリスの頭に手を置いて軽くなでた。サリスマリスはが小さくうなずくと、突然、俺の背後に襲い掛かってきた魔族を見向きもせずツメで切り飛ばす。

 サリスマリスはその魔族が倒れると、俺の手を自分の頭の上に置きなおした。


 もみ手しながら申し訳なさそうに俺へ謝罪しに来たガルナビを許し、約束通りシールドで助けることを誓わせた。

 次第に戦いが進むにつれて、立っている魔族たちの数も少なくなってきた。

 俺たち人間が小さくて視界に入らないのか、そもそも相手にされてないのか、ここまではガルナビと雄太がシールドをはり、サリスマリスと俺が迎撃するだけで、なんとか無事でいられた。

 俺たちはむやみやたらに攻撃を繰り出し、乱暴に暴れている魔族からやっつけながら魔女の元へ走った。

 魔族たちは次第に戦いの標的に困りはじめ、俺たちに攻撃の狙いを定め始める。


「……この、しつこい魔族め! 邪魔だッ!」


 俺はホウキの封殺剣で巨大な魔族をはたき、魔族は痺れたように倒れ、地響きを起こした。


挿絵(By みてみん)


「気をつけるガル旦那! ほら次が来るガル!」

「……く、――っそッ!」

「ぜぇ……ぜぇ……少し、タイムがほしいさッ!」


 俺はがむしゃらにホウキの封殺剣を振り回す。魔族は間髪入れず、容赦なく襲い掛かってくる。

 サリスマリスも肩で息をして、動きが鈍くなってきている。雄太、ガルナビ、ペッキンコッキンも疲労が隠しきれないでいる。

 ルアはすでにいなくなっていたが、そんなことに俺は驚きもしなかった。


「ガゥゥ――、これ以上戦えないガル……、ソーサリィ切れだガル、疲れたガル……」

「くそっ! さすがに、ここまで勝ち残ってる魔族はてこずるな!」

「お嬢さまのパーティはみんな魂かけたり合いだガル……、生きて逃げられはしない、ソウルに堕すか、戦い抜いて生き残るしかないガル―――」


 次に俺たちに襲い掛かってきたのは、魔族の中でも巨大な体をしていたガルボロカルホよりもさらに図体の大きい魔族だった。

 俺は見上げると、黒い甲冑のような体には、多くの剣や斧が突き刺さっている。

 俺はまずその魔族の足をホウキの封殺剣で殴るが、柄が折れてしまい、痺れさせることができなかった。


「――まずいッ!」


 唖然とする俺に向かって、何かをつぶやきながら、俺の頭上に斧を振り上げる。

 サリスマリスが振り下ろされた斧をツメで受け止めたとき、サリスマリスのツメが全て折れて飛び散り、そのまま肩に斧を受け、地面に座り込む。

 再び巨大な魔族が俺の頭上で斧を振り上げると、突然どこからともなく弾丸が飛来し魔族の背後に直撃した。

 巨大な魔族は倒れ、俺は命拾いをする。


「――この攻撃は!? 誰が撃った!?」

まねかれざる者がパーティに侵入したガル!」


 周囲の魔族たちがそれを見て喜んだろうに騒ぎ出した。


「……この魔族たちの歓声は? 誰だ!?」


 立っている魔族、倒れている魔族までもが一同に歓喜して、その新参を歓迎した。

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