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会津征伐

寒い日が続きますが、風邪などひいていませんか?

私はなんだか常に体調不良な気がします(-_-;)

慶長けいちょう5年(1600年)


徳川とくがわ家康いえやす石田いしだ三成みつなりと通じている上杉うえすぎ景勝かげかつ神指こうざし城の築城ちくじょう津川つがわへの架橋かきょうを「豊臣政権」への逆心と半ば強引ではあるが、これを詰問し景勝に上洛じょうらく(京都に来ること)を要求する。


景勝は上洛する意思を家康に伝えるが交換条件として「上杉家への謀反の疑いを訴えた者の追及」を要請する。


家康はこの訴えを退けた。


居ない者は出せないのである。


この景勝の上洛要求こそ三成をおびき出す策略の始めなのである。


家康が大坂に陣取っていては三成が動きづらいであろうと、大坂から遠い会津まで軍をもって征伐する口実作りに上杉家を挑発したのである。


案の定上杉家は上洛を中止する意思を示してきた。


この時、家康に激烈な文を書いた男がいる。


上杉家の宰相さいしょう直江なおえ兼続かねつぐである。


直江兼続の文の内容は家康を驚嘆させた。


世に云う「直江状なおえじょう」である。


兼続は直江状の中で


「家康の誓紙反故の批判、街道整備の正当性、景勝の「豊臣家」への忠義を家康に疑われる筋合いはない、逆に家康こそ豊臣をないがしろにしているのではないか?上洛上洛と急かすがこの間上洛したばかりじゃないか、そんなに上洛させて何をさせたいのか?そういえば前田まえだ家は徳川家に屈服しましたが、さすが家康公ですね。」


等々、家康の国政批判を大量に書き連ね、一番最後にこう締めくくった。


「場合によっては家康公の会津あいづ御下向ごげこうもある様子、ならば会津でお待ち申し上げております。」


と。


この時代、「挨拶に来い」と言うのは弟分になれとの暗喩あんゆであった。


家康は暗に「景勝に弟分になれ」と言い、景勝は「文句があるなら会津に攻めて来い」と答えたのだ。


家康からすれば上杉景勝や直江兼続は小僧っ子だ。


そんな兼続の家康を小馬鹿にした文に、家康は激昂し元より家康の予定の中にあった会津征伐を明言した。


それからの家康の根回しは早かった。


まずは後顧の憂いを断つため、豊臣とよとみ秀頼ひでより傅役もりやく(補佐役)である片桐かたぎり且元かつもとを大坂城西の丸に呼び、会津征伐に正当性を持たせるため秀頼のお墨付きを貰うように訴えかける。


しかし且元の返事は「否」であった。


その答えに家康は不満げに言い放つ


「景勝は国政を預かる、家康の要求を退しりぞけたのだぞ、国政に対する反逆、邪魔じゃまてはすなわち豊臣家への反逆ではないのか?」


且元も答える


「必ずしもそうではござらぬ、景勝殿の豊臣家への忠節は他の大名に勝るとも劣らず、秀頼君の覚えもめでたくございます、この一件、秀頼君へのお耳には達せざるものとお思い戴きたい。」


お墨付きを貰えなかった家康はにべもなく言い放つ。


「淀の方にお伝えあれ、この度の会津下向は家康の一存にて下知を致す。よってこのような国政の大事だいじが秀頼君のお耳に達しないのであれば、今後、国政への口出しは一切ご無用であると。」


且元も負けじと答える。


「それとこれとは別儀べつぎ(別である)にござる」


家康は立ち上がり


「別儀にあらず、役目やくめ大義たいぎ。」


そう言い放って且元を下がらせた。


そして同じく西の丸に呼び出しておいた三奉行に尋ねる。


「聞いての通りであるが、奉行ぶぎょう各々おのおのがたには誓紙せいし連判状れんぱんじょうを作っていただきたい。」


しかし、三成と通じている三人の答えは一緒であった。


「秀頼君のお墨付き無くば、誓紙連判状は出せませぬ。」


同席していた本多ほんだ正信まさのぶは呆れたように奉行に言う。


「秀頼君は御年おんとし八歳なるぞ?」


三奉行は答える


「いくつであっても主君は主君でござる」


家康はこの時に確信する、彼奴等きゃつら、三成と通じているな、と。


しかし家康にとって脅威なのは秀頼が三成方につく事である。


それさえ防げれば豊臣家恩顧の有力大名は今回の戦で離反する事はないであろう、と。


忌々し気に家康は三奉行に言い放った。


「各々おのおのがたは国政を邪魔建ていた所存しょぞんか?もし家康に不満があるなら奉行職をするなり会津に加担するなり勝手に致すがよろしかろう」


後日、家康の思いもかけぬ事に淀の方が豊臣秀頼を連れ西の丸に訪れた。


家康にとっては且元に秀頼のお墨付きを断られた時点で豊臣家から家康に対する話は無い筈なのだ。


呼ばれて何を聞かれるのか戸惑いながらも謁見する。


そこでは淀の方が女の艶を出しながら質問をしてきた。


「家康殿、近々会津へ御発ちとか。」


家康は何を聞かれるかと思いながら答える。


「仰せの通り。」


淀の方は家康の予想もしていなかった事を口走った。


是非ぜひもないでしょう、しかし上杉殿もここまで頑固とは思わなんだ、かくなる上は討たれても致し方ありません。」


「女狐が、一体何を企んでおる。」


家康は心の中で呟いた。


しかし淀の方の言葉は家康に味方をしているようにも聞こえる。


家康はお礼を述べる


「ありがたき、お言葉でございます。」


とは答えるが、なにせ未だ淀の方の思惑が全く見えない。


且元は「会津征伐は豊臣家の預かり知らぬところ」と言った、しかし淀の方は「討たれても仕方ない」という、混乱したと言っても良いだろう。


淀の方は且元に目を流し、艶っぽい唇で呼ぶ。


「且元殿」


且元は静かに頷き。


「この度の会津下向にあたり若君より陣中じんちゅう見舞みまいいをたまわる、金・2万両(現在価値でだいたい50億円位)、米2万石(1石が大体大人が1年に食べる米の量)、以上、豊臣とよとみ秀頼ひでより


家康は且元の言葉に驚くが、平伏し


「ありがたき幸せ」


と言うしかなかった。


淀の方は、そんな家康を美しい瞳でしっかりととらえ聞く


「家康殿、この暑いのになぜ会津へ行くのですか?上杉征伐は他の大名に任せればよいものを。」


家康はいまだ淀の方の本心をつかめない。


「年寄りの冷や水とでも仰いますかな?」


おどけた様に言った。


淀の方は一々しぐさが色っぽい女性だ、経産婦けいさんぷとはいえまだまだ女盛りの30代、その美貌に惑わされれば身の破滅を呼ぶであろう傾城の女性なのだ。


「ふふふ、そうではございません。」


家康は言いたいことがあるなら早く言えと思うが、そこは忍耐し淀の方に付き合う。


「この度の会津下向の総大将は秀忠でございます、年寄りは高みの見物と決め込み老後の語り草に致したく存じます。」


淀の方は「まぁ、秀忠殿ですか」等と言いながら切り出した。


「大坂は手薄になりますが。」


家康は心の中ではもとよりそのつもりであると考えながら


御懸念ごけねん御無用ごむよう、家康の留守は手練れの三奉行が守ります、またこの西の丸には徳川の重臣・佐野さの綱正つなまさ、伏見城には同じく鳥居とりい元忠もとただを置き万全の守りを固める手はずになっております」


と淀の方を安心するように諭す。


淀の方は頬を緩め笑顔で「ありがとうございます」と答えるが、家康がその緩みを引き締めるように、「しかし」と言い


「万が一にも異変のある時は、会津より取って返し不届き者を成敗致します、したがって、淀の方におかせられましてはいついかなる場合にも謀反人の言葉にお耳を傾けてはなりません、太閤たいこう殿下でんか御遺命ごいめいにより国政を司る大名はこの家康をおいて他にございません。」


淀の方はその謀反人に心当たりはあったが、顔に出さず


「なんとも頼もしいお言葉、しかと承りました。」


御無礼ごぶれいの言葉は御許しを」


家康のこの言葉で締めくくられたかと思ったこの場であったが、淀の方が急に立ち上がり家康の目の前までやってきた。


香を焚きしめられた着物に家康は一種の威圧感の様なものを感じ、嫌な予感がした。


「家康殿、ついては一つこの淀からお願いがございますが。」


家康は何事かと思うが「何なりと」と答えるより他にない。


「つきましては、常陸国ひたちのくに(現在の茨城県の辺り)に流された大野おおの治長はるながはいかがなります?」


家康は一体この女は何を言っているのかと不思議になった。


大野治長は淀の方の信頼篤く、また淀の方に要らぬ事ばかり吹き込むので以前に家康の暗殺未遂の嫌疑をかけて追放した者である。


「治長は何かと淀の役に立つ者なので、最近は治長が居ないので身辺いささか不都合なのです、どうでしょう?上杉征伐の土産に常陸より連れ戻してはくださりませぬか?」


淀の方の本心はここにあったのだ。


大野治長が愛しい一心でわざわざ西の丸まで秀頼を連れてきて、陣中見舞いという形で貸しを作り、淀の方のワガママを一つくらい聞いても罰が当たらない状況を作り出し大野治長の赦免を願い出たのだ。


「女の執念か」


家康はその美貌を惜しげもなく使い微笑む淀の方に「しかと承りました」と一言答え、上杉征伐に向かうのだった。

なんだか、全然本編に行けず、まだまだ時代背景を書いてるいわゆる序章なんですね・・・。

早く序章を書き上げたいです(笑)

誤字脱字等ありましたら、ご指摘頂ければ嬉しく思います。

今後とも闇の葵をよろしくお願いいたします。

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