異常な2歳児と世界の常識
帝歴339年3月3日
今日は朝早くからカペラが少し遠くにある街へ買い物に行ったため、読み聞かせを迫る必要がなかった。
ヴェインに頼むのも必要かと思ったが、ケイに興味がなく、妹たちに付きっきりの彼に頼むのも嫌だったのでパスした。
なので朝早くから書庫にこもることができた。
「さてと、この半年間はずっと魔力操作の習得で、手一杯だったから、今日から常識を着けていこう」
本棚に目を向け、手っ取り早く、一冊で常識が身に付く本はないかと探してみる。
すると『クトリアを歩くための常識本』を見付けたので、読破し知識を整理してみる。
まず、この世界はクトリアと呼ばれる。
このクトリアには大中小多くの国があるが、主に大陸を支配しているのは、四大大国である。
四大大国とは、北のカニスペア王国、東のヴェラトニス帝国、南のヒドルス首長国、西のアクイラ公国だ。
ケイたちが住んでいるのはヴェラトニス帝国で、特色は弱肉強食、超実力主義国家である。
ヴェラトニス帝国は皇帝を国のトップに据え、それを補佐する官僚たちや貴族がいる。
官僚が中央政権で活躍し、貴族が地方を納める仕組みになっている。
ケイたちの住むラックス村もアギル子爵の所領であり、それを村長である我が父ヴェイン=ドラジェイルが管理している。
本来名字を名乗ることが可能なのは、王族、貴族、官僚、騎士、そして貴族等が認めた者のみである。
我が父はこの村の村長を任せられた時に、名字を名乗ることがアギル子爵の名において認められた。
この世界の宗教で、世界規模で影響を持つのは2つある。
アトーリス教と、メノス教である。
アトーリス教は厳格な一神教であり、天地開闢を司るアトーリス神を信仰している。
一夫多妻を決して認めない、かなり教義の厳しい宗教として、世界中に普及している。
総本山は、アルリトス教国であり、カニスペア王国の真東に位置する。
そのため、カニスペア王国でもアトーリス教が一般的である。
最も信者数が多い宗教である。
メノス教は、アトーリス教と違い多神教であり、すべての神の頂点に座すメノス神を信仰している。
一夫多妻を認めており、比較的自由な宗教である。
ヒドルス首長国が国教としており、本山も首長国内にある。
首長国のトップは首長であり、政治的だけでなく、宗教的の頂きに立つ。
この2つの宗教は相容れないことが多く、争いが絶えない。
そのため、カニスペア王国とヒドルス首長国は仲が悪い。
「国も宗教もめんどくさいなぁ。ただ強さが基準になる帝国は単純明快で俺好みだ」
この世界には魔力が存在する。
魔力は万物に干渉したり、物体を生み出せたり、何かを強化したり、反対に破壊することもできる、万能のエネルギーである。
この万能エネルギーに指向性を与えて、より強力にするのが、魔術や武術だ。
共に魔物や人と戦うのに用いられる。
武術も内容は無数に存在するが、特に普及している剣術を三大剣術という。
三大剣術は、
『アークテリクト流剣術』
『黒転流剣術』
『イルヴァルド流剣術』
武術にはそれぞれいくつかの型があり、武芸者たちはそれを使いこなす。
また、武芸者たちにも階級が存在する。
上から『武神』、『武帝』、『武王』
『武王』の称号は時代にもよるが、世界で30人前後しか授かることができない。
『武帝』の称号はたった5人。
『武神』の称号はたった1人、世界最強の武芸者に与えられる。
すべての武芸者は、この称号、ひいては、世界最強の『武神』を目指して自身の武術を研鑽する。
同様に魔術にも階級が存在する。
上から『魔術神』、『魔術帝』、『魔術王』
すべての称号は、それぞれ武術階級と同人数しか与えられず、魔術師は、称号を、特に世界最強の『魔術神』になるために、日々自身の魔術と向き合っている。
「『武神』に『魔術神』かぁ。かっこいいな。憧れるな。世界最強の称号か、取ってみたいな。そういえば、父さんの知り合いが『武王』だとかどうとか言ってたような気がする。こう思うとめっちゃスゲェな」
この世界には、ダンジョンというものがある。
ダンジョンは、この大陸に国ができる以前から、もしかしたら、人類が誕生する以前から存在すると言われているが、実際のところ詳しくはわかっていない。
ダンジョンの内部には魔物がおり、現在地上に存在する魔物は、かつてダンジョンから出てきたものが繁殖したものとされる。
ダンジョン内には高品質の魔石や宝物を得ることができるため、経済的には非常に役立つが、ダンジョンから大量に魔物が出てくる『禍波』と呼ばれる現象が発生するため、早期の攻略が望まれる。
こうしたダンジョンを攻略する専門の集団が『冒険者』である。
『冒険者』の階級はSSS~Gランクまでの10段階である。
「なるほどね。武術や魔術を鍛えるのにはもってこいの環境ってわけか。てか、逆か。『冒険者』は武術か魔術を修めてないと生き残れないし。俺も早めに『冒険者』になって、文字通りの冒険がしたい」
こうして基礎中の基礎を確認し終えたところで廊下から足音が聞こえる。
「基礎は押さえたし、次はどうしようかな。この『眼』について調べてみますかね」
本を元の位置に戻し、カペラが入って来るのを待ち伏せる。
午後からは昼寝と魔力操作のお時間だ。
また、明日来るよ。




