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嫌われ者の自分が、HP5000の美少女に転生した。  作者: 御狐
第二章 蒼白なる聖女
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第42話 望まない再会。

 元気溌剌なアンリに連れられて、私は今、広場に立っている。

美しい白の広場では色々な人が地面に敷き布を敷いて、様々な品物を並べていた。

それらを見定め買うか悩む生命の信仰者達に、客に購入を催促するエキゾチックな格好の商人達、そして旗や看板を持って呼び込みをする売り子達によって賑わっている。

「あ!ミカたん~!アンリ君~!」

広場を歩いていると、看板を持ったコロロが私たちを呼んだ。

「お~すげえな!よくこんな人ごみの中からアタシらをピンポイントで見つけたな!」

「へへっ!これも~ゴブリンロリータの力だよ~!」

「おお!そうなのか!ゴブリンロリータってすげえんだな!」

「あっはははぁ~!冗談だよ~!別にゴブリンロリータの力じゃないよ~。」

「そうなのか?じゃあ一体どういうやって見つけたんだぜ?」

「普通に~アンリ君たちの姿が目に入っただけだよ~。アンリ君達の姿が目立つからね~群がる信徒の中に混じるメイドさんって結構目立つよ~?」

純白の長い髪をなびかせるメイドの少女、オレンジ色の髪に青いバンダナを着けたメイドコスの少女…私たちの姿は結構目立つようですれ違いざまに好奇の目を向けられる。そのため発見も楽なのだろう。

「あはは…やっぱり目立つか…!まあ、個性的で人の目を引くってことだぜ!」

「ま、可愛いからアタイは良いと思うよ~」

可愛らしく絡み合う二人の先に、シフが客引きをしているのを見つけた。

「い…いらっしゃいませデス!ご来店くださいませデス!」

看板を下に持ったシフが、恥ずかしそうに声を上げて呼び込みをしている。

シフの姿は…かなりアウトな服装になっている。首に巻いている赤いスカーフは変わらないが着ている服がボロボロで擦り切れた囚人服だった。しかも…血や体液が染み付いて汚れていて、裾が破かれているためかなり短い。足をちょっと上げたらめくれあがって見えちゃうほどだ。

ギリギリの露出がシフの太股を強調していて、ロリコンはもちろん、そうじゃない人でも釘付けにする。

セーフ寄りのアウトな服装が人の目を引き付けて、人間的な可愛さを持つ希少なゴブリンが客引きをしている事が人の興味を引き付けているようで、ハローの露店は他のどの店よりも客で賑わっている。

ちなみにハローが売っている商品は、葉巻と蜂蜜酒にロウソクやマッチ棒となっていて、特にマッチ棒とロウソクが良く売れているようで、この二つの商品を手に持って店を後にする信徒が多い。

「はぁ……はぁ……きゅ…休憩デス…。」

客引きを終えたシフが重そうな足取りでコロロに近づいて来る。

疲労が浮かんだ顔は今にもキレそうで、汗が流れるおでこに青筋が少し浮かび上がっていた。

「ご苦労様~10分休んで良いよ~」

「………お前のせいでこうなったのに、その上司面ムカつくデス!」

コロロがシフを労《ねぎら》うが、疲労の原因であるコロロの上から目線な態度が気に食わないようだ。シフは開口一番に文句を言う。

「え~実際アタイは上司だよ~?」

コロロがあっさりした物言いで正論を飛ばすが、自身にとって都合が悪い意見だったようで、シフはコロロの発言をスルーして論点を変えた。

「…ていうか、何デスか!?この服!こんな服着させて客引きさせるなんて……悪趣味デス!変態デス!」

シフはどうやら囚人服が気に入らないようだ。まあ実際、こんな服を着させられれば誰だって怒る。

しかも、誰かの血や体液による染みが付いているうえに擦り切れてちょっと透けていて、さらに裾が短すぎるのだ。これを急に着せさせたのだから、シフにとってコロロは悪趣味な変態であろう。

「大体なんデスか?この服…どっから拾ってきたのデス?」

「あ~この服はね~ミカたんの鞄から拝借した物だよ~」

さも当然のように、窃盗のカミングアウトをされて、一瞬、私は聞き流してしまった。だけど、数秒の間を経て、私はようやくコロロの発言を認識した。

「え…?」

すぐに私はポーチを確認した。…確かに囚人服が無くなっていた。

いつの間にかコロロにポーチを漁られていたようだ。…ていうか、人の鞄を勝手に漁るのはどういう見解なのだろう。まあ別に大事な物では無いから、私は気にしないことにした。それに私はコロロから魔法を貰ったし、私たちの為にハローに急いでもらうように頼んでくれたから、この程度の事で文句は言わない。

「こ…これお前の服なのデス??」

想定外の事実にシフは動揺しているようだ。

困惑したシフに見られながら、私は絞り出すような声で答えた。

「う…うん…。」

「本気デス?こんなぼろきれみたいな物を着ているのデスか…?」

シフの表情は困惑とも軽蔑とも取れるような、困ったような顔で再度質問をしてくる。

「うん……。いろいろ事情があって…。」

うわ…シフが同情ともドン引きとも取れるような微妙な目を向けている。

自分よりも幼い子から引かれるのは精神的にくるものがある。

でも、私だって好きでこんな服を着ていたわけではない。

あの性悪女《サディ》に着せられ、色々嫌なことをされてきたのだ。服に付いたシミも、拷問の過程で出来た物。間違っても、私が変態で好んで着ていたわけではない。


だから、そんな見下すような目で見ないで欲しいな…。


変態の烙印を押される前に何とか事情を説明して、分かってもらおうと私は弁明しようとした。

「面白そうな話をしているな。俺も混ざっていいか?」

ゾクリと悪寒が走るのを感じた。今、真後ろで聞き覚えのある声が聞こえたからだ。

爽やかな男の声、砕けた言葉遣い、そして既視感のある展開に私は覚えがある。

すぐにでも確認するために、バッと後ろに振り向いた。

「………!!!」

私は絶句した。なんと…後ろにはダストがいたのだ。

金髪と金色の目に全身を隠すボロボロのマントの姿は、かつて私を魅了して懐柔した時と同じだった。

「よお、久しぶりだな!顔色が明るくなったみたいだな?」

嫌な記憶が思い出されるとともに、強烈な不快感に襲われる。

初めて会った時は特になんとも思わなかった爽やかな声が、今では吐き気がするような粘着質な声に聞こえる。

「……ダスト!なんで…なんで…!なんでここにいるの…!?」

「ただの観光だよ。いい感じの土産を探していたらたまたま君を見かけてな~。なんとなく声をかけたんだ。」

「…ふざけるな!…あれだけ酷い事したのに…よく声を掛けれるね…!ど…どういう…腐った神経してる…の?」

ふざけた態度のダストに殺意を込めて睨みつけた。

だが、ダストは子供を諫める大人のような余裕のある嘲笑を浮かべている。

「元気そうだな。町であった時以上に生き生きしているようでよかったよ。」

軽口を叩く目の前の男に憎しみを募らせていると、アンリが私とダストの間に割って入って来た。

「あんたがダストってやつか。ある程度はミカから聞いてる。…何の用だぜ?」

さっきまで駄弁っていたのが噓のような、真面目な声音だった。

話を遮られたことで、ダストが標的をアンリに変えた。

「君はあのよろず屋の店員だったっけ?最近見ないと思っていたら、こいつとつるんでいたのか~。てっきり店を畳んだのかと思ってたよ。」

嫌にさわやかなトーンで、軽口を叩く。軽口には嫌味を混ぜてあって明らかに挑発をしている。

「別に?友達同士でつるむなんて当たり前だろ?あんたこそ彼女といないで、こんな所で何しているんだぜ?前会った時は熱々だったのに、もう冷めちまった感じか?」

アンリは軽口を受け流し、挑発し返した。

しかも、ダストと違って悪意を一切包み隠さず、ストレートにぶつけた。

「あいつは今忙しいから引きこもっている。俺は暇だから一人で観光だよ。」

「彼女が忙しいんならこんな所でナンパしてないで、手伝ってやったらどうだぜ?浮気してるってバレたら癇癪起こすんじゃないか?アンタの彼女、ヒステリックだって聞いたし。」

「別に浮気なんてしてねえぜ?ただ声かけただけで怒んなよ~。短気な女は嫌われるぜ?」

「アタシはあんたの彼女よりかは寛大だぜ?それと、胡散くせぇチャラ男と拗らせヒス女のカップルの方が嫌われるぜ?」

二人の間に火花が散っているように錯覚する。アンリは声色こそ普段通りだが、表情は冷たい。ダストは顔にこそ感情は出ていないが、声のトーンが怒っているように感じる。

「…アタシらはのんびり買い物を満喫したいんだ。あんたみたいなナンパ野郎はお呼びじゃないんだぜ!さっさと帰って、彼女のお手伝いでもしな!」

「お~怖っ!そんな目で睨むなよ~。まあ、土産物買ったら帰るよ。」

軽薄な表情で苦笑し、ダストはハローの露店まで歩いて行く。

3歩程歩いたところで、急に立ち止まり、私と目を合わせた。

「そうそう。お前、あんまり人前に出ない方がいいぜ?お前は歩くだけで不運を引き寄せるからな。…せっかくできた友達を亡くさないよう、せいぜい気を付けるんだな~」

そう嫌味の言葉を言い残して、ダストは蜂蜜酒を3本と葡萄酒を1本購入して人ごみの中に溶け込んでいった。私は遅れて怒りが沸き上がり、悔しそうに顔をしかめて地団駄した。

やはり、ダストはクズ野郎だ!何が歩くだけで不運を引き寄せるだ!不運なのはお前たちのせいなのに、まるで私が疫病神かのように言って…。ムカつく!

「…底知れない男だぜ。…なあミカ、大丈夫か?」

「大丈夫…ちょっとイライラするけど…全然大丈夫…!」

「なんか感じ悪いお兄さんだったね~。ミカたんに声かけたようだけど~知り合いだったりするの~?」

「…知り合いなんかじゃない…あいつは私を貶めて…拷問されて…必死に助けを求める私を見て……あいつは私を嗤っていたんだ…!」

嫌な記憶がフラッシュバックする。私に酷い事をするサディ達の後方からずっと傍観するダストの姿が思い出された。

「聞いちゃいけなかったかな?なんかごめんね。」

コロロが申し訳なさそうに腰に付いている小さな袋から光るものを取り出して、私の手にそっと握らせた。

確認してみると、なんと5枚の聖銀貨だった。怒りで血が上がっていたが、一気に冷静さを取り戻した。

「え…?これ……コロロちゃん?」

「お詫びになってくれるといいんだけど~。これで何か買って機嫌直して~」

「大した金額じゃないよ~」と謙遜するが、私にとっては大金であったから、かなり罪悪感を感じた。それどころか、こんな幼い娘からお金を巻き上げたと言う事実に自己嫌悪感を抱いてしまう。

「も…貰えないです…。申し訳ないというか…えっと…」

はっきり言って大人気なくて自分が情けない。だから、私は断った。

「いいよ~気にしないで~。アタイはミカたんの明るい笑顔が見たいだけだから~♡何か買って~心から喜んでくれればそれで良いから~♡」

だけど、コロロは手をひらひらとさせてから、シフの手を引いて露店まで歩き出していった。

当然、シフは驚いたようだ。10分休憩を与えられたのにまだ4分しか満足に休めていないからだろう。だけど、コロロはシフに有無を言わさず連れて行った。

「棚から牡丹餅ってやつだな!せっかくだし、気分転換にアタシと買い歩きしようぜ!」

すぐに気持ちを切り替えたアンリは私の手をつかんで誘った。

「うん」

私は誘いを承諾した。さっき私はアンリに大丈夫って言ったけど、正直まだ気持ちの整理ができていなかった。だからアンリの言うように、いろいろ買い物したりして気分転換をすることにした。

……今更だけど、ダストが私を見つけたのに、どうして捕まえようとしなかったのだろうか?

私はインモラルシス王国の逃亡者だ。しかも、私は王国の女王《サディ》の隠している本性を知っているし、サディ達の行った非人道的行為を覚えている。

私は歩く重要機密のはずなのに、どうしてダストは私を捕らえなかったのだろう?

ダストにとって無関係じゃないはずなのに、いったいなぜ?

私はさっき、怒りに飲まれていて自分の立場を忘れて、無警戒にダストに近づいた。

周りに人がいて、私に仲間もいたとはいえ、ダストなら連れさることもできたはず。なのにどうして…?

色々と思う事があるが、結局考えても何にもわからなかった。

こういう時に、仲間と相談するべきなのだけど、これ以上面倒なことに巻き込みたくなかったし、私自身が考えたくなかったので、心の奥に仕舞い込んだ。

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