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嫌われ者の自分が、HP5000の美少女に転生した。  作者: 御狐
第二章 蒼白なる聖女
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第41話 何も見たくない、誰にも見られたくない…で…す…?

評価は作者のモチベーションに繋がりますので…!どうかまだしてないって方は評価してくださると嬉しいです!


(ミカがアルブに着いてしばらく経った時)


 罪を問われてこの冷たい牢に入れられて、どれくらいの日が経ったのでしょう?

ずっと暗闇に幽閉されて、日の温かさをすっかり忘れてしまいそうです。

心が壊れてしまわないのはキュアミュゥさんのご厚意のおかげです。

私が声を掛けるとちゃんと話しの相手をしてくれます。今日の外の天気や、最近流行りの英雄譚、外の情勢等、色々なことを教えてくれました。特に印象に残った話題は、インモラルシス王国とシルヴァーニの戦況の変化です。

この2つの大国は数年前から泥沼な攻防を続けていましたが、どうやら、インモラルシス王国の女王が最新の兵器を開発したらしいです。なんでもそれは、強力な化学兵器で毒ガスという名前らしいです?

今までは銃や石弓による弾幕でシルヴァーニの侵攻を防いでいたみたいですが、今後は近づくだけで屠れるようになったみたいです。

…戦争と言う人がお亡くなりになる話題で不謹慎だと思いますが、こう言った話でも、しっかり聞いて自分なりに判断するのが賢いと…ずっと前にゲイル青色信徒ビショップが聖堂で子供達の前で説いていたのを聞きました。

キュアミュゥさんはとても親切な人で聞いたら何でも教えてくれますが、ゲイル青色信徒ビショップの事と神の器計画の事だけは話してくれませんでした。

どうやら、教皇テンプルロード様から、話題に出すことを禁じられたらしいです。

今日もひとしきり話し終えたキュアミュゥさんは、私にこっそり飴を握らせてから地上に戻っていきました。

私は貰った飴を口の中で転がして、虚空を見続けます。

何も考えずにただただ時間を浪費していると、まるで自分が死んでしまったかのように錯覚します。

外と遮断されたこの場所にいると、自分の小ささがわからされた気になってきます。

自分はこのままここで死んでしまって、この地下墓地を彷徨う亡者の一人になってしまうのかもしれません。


そしたら、ゲイル青色信徒ビショップは喜ぶのでしょうか…?


事実、ゲイル青色信徒ビショップは私をこの地下牢に幽閉する程恨んでいましたし、きっと喜ぶでしょう。


それか、何も感じないのかもしれません。


私も、お母さんの死を知らされた時…何も感じませんでしたから。

あの時は、ただただ空虚で…夢か現実かも曖昧でした。


コツ…コツ……コツ…コツ…


遠くの通路から足音が聞こえてきました。

キュアミュゥさんでしょうか?一度去ったのに戻ってくるとは珍しいです。


…忘れ物をしたのでしょうか?それとも、もう別の日になってしまったのでしょうか?


ここに居ると時間の感覚がおかしくなりますから、あれから何分経ったのかさえわかりません。

とりあえず、聞いてみましょう。私は鉄格子に近づいて来るのを待ちました

「………キュアミュゥさん!さっきぶりですね…?何か用が残っていましたかです?」

「………。」

「それとも、もう明日になったのでしょうかです?ここにいると時間が分からなくなって困りますです!」

「………ぁ……。シ……シルミア…さん…」

「はい!どうしましたです?」

「ご…ごめんな…さい……」

キュアミュゥさんは鉄格子に寄りかかったと思うと、そのまま倒れてしまいました。

「キュアミュゥさん!だ…大丈夫です!?」

私が声をかけたと同時に、爽やかなな男の人の声が聞こえました。

「なんか辛気臭い場所だな~。仮にも器候補なのにひでぇ管理だな?」

「あ…貴方は…何者です…?」

私は警戒しながら、謎の男に聞きました。

「俺は…そうだな、神の代行者とでも名乗っておこうか。」

代行者と名乗った男の人は、ボロボロのクロークを羽織っていました。暗くて全体が見えないせいで、顔がよく見えませんでした。ですが、黄金の髪色であるのと顔が整っていることはわかりました。目が怪しい光を灯しているように見えて、ずっと見てると吸い込まれそうになります。

「…代行者さん、貴方様は一体何の用でここに来たのですか?」

私は代行者に目的を尋ねました。

神聖騎士パラディンの方かと思いましたが、神を敬う者が自ら神の代行者を名乗るのは傲慢すぎます。そして…私に会いに来たのには理由があるはずです。

代行者は煩わしそうに頭を掻きながら答えます。

「俺は神の意思を遂行する為に来ただけ…とでも言っておこう。あんまり深くは語るつもりはない…俺のことはどうだっていい。そんなことより…お前には器の適正があるみたいだな?」

代行者は私に確認をしてきました。器の適正…もしかして、神の器計画に関係することでしょうか。しかし、私にその適正があるとは…一体どういうことでしょう?

「そう…なのですか?…私に器?の適正があるのです?」

「そうだ。そして…お前、真実を知りたいんだろ?神の器計画とは何か?何故母親が死んじまったのかを…知りたいんだろ?」

代行者の問いに私は静かにうなずきました。

「喜べ、母親の末路そして…生命の信仰者の隠した真実が知れるぜ。この黒星の破片を使ってな!」

真っ黒な不透明な水晶の塊のような物を取り出して、代行者は続けて語ります。

「こいつは数百…いや数億以上の魂が互いに身を寄せ合って実物化したものだ。常人なら視認しただけで発狂し、指先で触れただけで思考能力を失った歩く死体になり果てる。聖職者で…しかも器でもあるお前は、果たして耐えられるかな?」

不敵に笑い、代行者は真っ黒な結晶を握り潰して…砕きました。

瞬間、この空間は息が詰まるような邪悪な瘴気で包まれました。

そして…私の中に数百…いや、数え切れないほどの霊魂が入り込んできました。

「うっ…ぐううううううううぅうう…!!!うぁあぁあああぁあああああ!!!!」

私は絶叫しました。まるで、全身の皮膚と肉の間に煮えた銅を入れられてぐちゅぐちゅと蠢いているような激痛と不快感が襲ってきました。

そして、私の頭に誰かの記憶が映し出されて行きます。しかし、それは一度に数億以上同時に流されて、全てが別々の記憶でした。誰のかもわかりません。ただただ膨大すぎる記憶と感情の激流によって、私の自我が流されて行きます。

「魂が融合する気分はどうだ?意識が他の誰かの自我や記憶と混濁していくのはきついだろ?だが、それに身を委ねろ。そして、下に堕ちていけ。お前の望む真実を知れるぜ?」

膨大な数の記憶の濁流の中に、私の自我はどんどん堕ちていきます。

堕ちていけば行く程、見える記憶は鮮明になっていきます。


それらの記憶は全てが苦痛に喘ぐものでした。


ある記憶は、平和な村に住んでいた女性の記憶。この女性は弟がいたみたいで、いつも弟から慕われていたみたいです。二十歳の誕生日を迎えたある日、空を覆う黒い闇に飲まれて肺を焼くような闇に溺れ窒息に苦しんだのちに死亡しました。


『苦シイ…息ガ出来ナイ…!アア…弟ヨ…オ前ダケハ…生キテホシカッタ…』


ある記憶は、戦乱に明け暮れた国の王様の記憶。この王様は貧困と膨大すぎる人口増加によって悲しむ民の為に大きな土地を持つ国に戦争を仕掛けたようです。けど、その結果、数多の国民が戦死して、相手の国の民も恨みながら殺されていきました。そして、戦死者の魂と死体が放つ濃い憎しみが空の果てにいた悍ましい暗黒を呼び出してしまい…王様は自国の民と共に、全身を焼くような穢れに爛れて後悔しながら死んでしまいました。


『民ヨ…赦シテクレ…赦シテクレ…!余ハ、最後マデ責務ヲ果タセナカッタ…』


次の記憶は、高い文明を持つ国に住む一般の少年の記憶。この国には空を飛ぶ鳥のような乗り物があり、大地を自動で駆ける馬を使わない車があります。少年は家族と一緒に車に乗って景色を楽しんでいたら…空から黒い何かが降臨して、その鉄の車ごと飲み込んでしまいました。車ごと、家族と一緒に押しつぶされた少年は最後まで生への渇望を忘れることなく足掻きましたが、叶わず磨り潰されてしまいました。


『イヤダ!シニタクナイ!!イキタイ!イキタイ!!ア…アアアアアアアア!!!!!イ…ヤダ…』


まだまだ記憶は流れ続けます。この記憶は…アルブミールと呼ばれる国の王様だった人の記憶です。ある日突然現れた癒しの力を持つ少年によって民を引き抜かれた事で、税金をとれなくなり収入に困っていたようです。そんな時に…サリヴァンと言う王の助言者に唆されて、王は言いなりにされてしまったようです。サリヴァンは狡猾な男でした、王が得をして貴族にも甘い汁を吸えるようにして自身も高い地位に就けるようなそんな仕組みを作ったのです。それが宗教であり、生命の信仰者の始まりでした。王は教皇と言う高い地位に就き、貴族達は光の使者と名乗り欲望の限りを尽くし、民達は何も知らずに信仰し続ける。そんな事を続けていたら、ある時戦争が始まってしまいました。たくさんの人が死んだ事で、生命の信仰者は力を伸ばしました。ですが、空の果てから現れた邪悪な星によって、世界は破滅の道を歩み始めました。その時に教皇は黒星の眷属によって、殺されてしまいました。最後に見た者は安全な場所から王を見下すサリヴァンの嘲笑でした。


『ココデ…終ワッテシマウノカ…我ガ一族ハ…コンナ所デ絶エテシマウノカ…!アノ少年ノヨウナ…惨メナ最後ダナンテ………』


記憶は…流れ続けます…。次は……つぎ…は…。お母さんの……記憶…。

お母さんは…テレジア=エレフィーレは、熱心な生命の信仰者でした。争いも脅威もない平和な世界になる事を願っていました。青色信徒ビショップになってからは率先して善い事をしてきたのです。貧しい人々の為にインモラルシス王国の貧民街で作りたてのスープを提供したり、インモラルシス王国の国境防衛要塞に訪れて、傷付いた人達を回復祈祷術で癒して犠牲者達の亡骸を一人一人丁寧に弔ったりしました。それらの善行が認められ≪蒼白なる祈り姫≫の二つ名を与えられたのです。

お母さんは二つ名を与えられた後も、白色信徒アコライトの男の人と結婚した後も、私が生まれた後も、善い事を続けてきました。

全ては子供の頃から夢見てきた争いも脅威もない平和な世界の実現のために。

私が4歳だった時、お父さんは悪い人達に惨殺されてしまいました。お父さんは悪い事をする人達を咎めただけなのに、それに怒った人達に報復と言う名の集団の暴力でお父さんは殺されてしまいました。お母さんはその日はずっと泣き続けました。その日からお母さんはさらに善行を続けました。そして、毎晩神様に祈り続けたのです。「悲しみがなくなりますように。平和になりますように。」と平和を望み続けたのです。

私が7歳の誕生日を迎えたある日の夕方、上層部の使いがお母さんを連れていきました。上層部の使いは教皇様が聖域で待っている事を伝えて、お母さんを迎えに来たようです。

お母さんは疑いの感情なんて持たずに付いていきました。冷静に考えてみれば、聖域は教皇様と上層部以外の人が近づくことすら許されない場所でした。そこに一般の青色信徒ビショップであるお母さんが呼ばれるのはおかしい事でした。

素直について行って聖域に入ったお母さんを待っていたのは、教皇様と上層部の人たちでした。

聖域の奥には…不気味で巨大な砂時計が鎮座しています。教皇様は困惑するお母さんに言ったのです。

「≪蒼白なる祈り姫≫、お前は秩序の維持とこの聖都の平穏の為に、器になってもらう。」と、言ったのです。

お母さんはその真意を理解できませんでした。

ですが…理解する前に…お母さんは白銀信徒エクスキューショナーによって拘束されてしまったのです。

そして…砂時計に溜まった邪悪な怨念と溶け合った悪霊ををその身に注ぎ込まれてしまいました。

身を焼く以上の痛み、溺れる以上の苦しみ、自分と誰かの人格が混ざり合う不快感、魂を蹂躙される恐怖………悍ましい苦痛と信じていたモノからの裏切りによって、絶望した…お母さんは……近くの白銀信徒エクスキューショナーに………介錯を…頼みました。

白銀信徒エクスキューショナーは…緑色の髪の少女は…その大鎌で……お母さんの首を一撃で刎ね飛ばし…て……。


『シルミア……。シルミア…オ願イ…生キテ…!生きてここから…逃げて…!』


辛い記憶の濁流から、私…シルミアは這い上がりました。

「あ…ああ……うぁああぁあ…!!」

そして…私の中で何かがあふれ出ます。それは…留まることを知らない慟哭でした。

「うそ…おかあさん…!!おかあさん!!!どうしてですか!!!!!どうして!!どうしてぇ!!!」

悍ましい真実を見てしまった私は天に向かって嘆きました。

「らいふさま…!わたしたちがなにをしたっていうのですか!!!わたしたちはただ、へいおんにくらしていただけです…!!それなのに…それなのにどうしてですか!!どうしてこんなにもかなしまなければいけないのですか!!!!!」

目から黒い涙が零れていきます。黒くドロリとした涙には血と穢れが混じっています。涙が流れ出るたびに、私の心は悲しみでいっぱいになっていきました。

「シルミア=エレフィーレ…お前は教皇が憎いか?何の落ち度もない母親を理不尽に器にして…お前自身も器にしようとするこの生命の信仰者が憎いか?」

「ああ…!!にく…いです…!」

「こんなにも悲しんでいるのに助けようとも知ろうともしないで、目をそらす奴が憎いか?」

「にくい…にくいです!!」

「不幸な自分をよそに平穏な毎日を過ごし、他者の幸福を見せつけて来る世界が憎いか?幸せな他人をその手で壊したいだろ?」

「あぅあ!あああああああ…!!」

「湧き上がる憎悪に身を委ねろ。そしたらお前は生まれ変わる。世界に復讐を遂行出来るようになるぜ!さあ、どうする?」

昏い殺意が頭を埋め尽くしてきます。誰かの殺意と誰かの悪意が…私を飲み込もうとしてどんどん増幅していきます。もう…私……何にも希望がありません………このまま楽になれば…悲しみなんか感じ無くなれる…。

悍ましい真実なんか見ても傷つくだけです。汚らしい自身の姿を誰かに見られるのは恥ずかしいです。


だから…もう何も見たくありません…もう誰にも…見られたくありません……。


お母さん…今、一緒になれますね。これで…寂しくなんかないですね?私達は永遠に一緒です…。

ひとつになりましょう。どんなニくルしくテモ、みんなイッショなラもうこわくない。ワタシタチハ…イッシンドウタイ。ワタシタチノ…アタラシイ…ナマエ…≪見えざる盲目の魔女≫…フルイナマエナド…ステテシマエ…。

『シルミア…!やめて…こっちに来ちゃダメ!』

…飲み込まれかけた…私の中で声が聞こえました。

優しくて…懐かしい誰かの声が…確かに聞こえました。

『シルミア…シルミアには…まだ残っているでしょ…?希望が…尊敬する人が…!』

残っているです?私に何が残っているのでしょう?生命の信仰者の悍ましい真実を知って、お母さんの最期を追体験して…ゲイル青色信徒ビショップから嫌われて…青色信徒ビショップの地位も奪われて…。そして…私はこんなにも穢れてしまったのですよ?私は…全てを失ったのです。

『シルミア…悲しい事はわかるわ。けど…生きてさえいれば…希望を捨てなければ…きっと幸せは絶対に訪れるわ!』

誰かが…いや…お母さんが、私を励ましているみたいです。お母さんの幻影が、うずくまる私を抱擁してくれました。ただの幻覚で実体なんてないはずなのに…とても暖かくて…気分が楽になってきます。

『シルミア…お母さんは…貴女に幸せになってほしいの。だからね、他人の憎しみに飲まれちゃダメ!』

「………お…母さん…。でも…どうすればいいのですか…?ここにはもう居場所なんてないです…。私は…もう傷つきたくないです。」

『大丈夫…。ここに居ても貴女は幸せになれない。だからね、思い切ってここから出ちゃえばいいの!そして…優しい誰かと一緒に幸せな毎日を送ってほしいの!私の分…。いや、犠牲になったみんなの分を使って!』

お母さんは…私に口づけをしました。

優しい温かな感触はかつて眠れない私にしてくれたものと同じでした。

「お母さん…お母さん!!………。…………私は………シルミア=エレフィーレは!前に進んでいきます!!ここに居ても幸せになれないのなら…こんな所から出て行きます!」

確固たる意志を持って、私は代行者を睨みつけました。

「代行者さん!私は貴方様の言葉に屈しません!憎しみに飲まれて復讐しても…幸せにはなれないのですから!だから…!引き込もうとするのを諦めてください!」

「嫌な事を見たくなかったんだろ?堕ちきった今の姿を見られたくないんだろ?」

「確かに!見たくないモノは見たくありませんし、見られたくないものは見られたくないです!けど…全てを見ず目を閉じても転ぶだけですし、姿を消しても世界は変わりません!だから…っ!!」

「目を開けて堂々と前に進んでいきます!」そう言おうとしましたが、声が喉につっかえてしまいました。穢れで体がかなり弱っているのでしょう。言いたいことがうまく言えず、イライラします。

「…っ!……っぁ!まえ…前に進んでいきます…!!」

私の渾身の言葉を受けた代行者は、一切顔色を変えませんでした。

まるで、最初から私に興味がなかったかのように、無反応でした。

「………。そうか。それが君の選択か。……見られることを拒み、見ることを絶しなかったか。………じゃあ、勝手にするんだな。闇落ちした奴がいなくても、運命はそう変わらねえから…。」

代行者は牢の鉄格子に触れました。すると、鉄格子は一気に劣化していき、ボロボロに朽ち果てました。朽ちた鉄格子を乱暴に蹴り壊して中に入って来た代行者は、何かを取り出して私の足元に置きました。

「これは…?」

「【生者の血液】だ。…俺の彼女の≪レッドアルケミスト≫が作った回復薬だ。かなりきついが…飲み干せば完全に回復して全ての不調を解除するぜ。そして、しばらくの間は自動的にHPとMPを回復し続けさらに身体能力が上がる。この効果時間中に、脱出すればいい。」

私に【生者の血液】と言う赤く輝く黒い液体の入ったフラスコを渡して、代行者は背を向けて去っていきました。

「ミカに付いて行け。お前の望む結末を迎えたいのならな…。」

最後に小さく一言だけ呟いて闇へと姿をくらましました。

「ミカ…」

私は代行者が言い残した言葉をしっかり覚えました。ミカって方に付いて行けば、何かがあるのでしょう。もうこの場所アルブには居場所なんてないのです。一途の望みに賭けてみます。

「神様…いえ…ライフ様、どうか、私に幸せがありますように…です…!」

神に…私の信じる神に祈り、フラスコの赤黒い薬液を口に流し込みました。

歯が溶けたような錯覚をして喉が爛れるような激痛に耐え、私は悲鳴と一緒に飲み干しました。

代行者の言う通り、気分とボロボロだった肉体が治りました。ついでに体が軽くなり、今なら魔物に束になって襲われても何とでもなる気がします。

「生命の信仰者所属の元・青色信徒ビショップシルミア=エレフィーレ!行っきまーす!です!」

気持ちを奮い立たせた私は、地上を目指して走り出しました。

自由…そして幸せと平穏を求めて、カタコンベからそして…アルブから脱出です!

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