第6話
おれの左ストレートがヒットし田端の体がぐらつく。
おれは慌てて田端に駆け寄った。
「すみません。大丈夫ですか!」
「ああ、大丈夫だ。まんまとフェイントに引っかかっちまった」
「すみません」
「いいんだ。謝ることはない」
それから、おれたちはベンチに腰を下ろした。
「ほら、飲めよ」
自販機で買ったホットコーヒーを渡された。
「ありがとうございます」
「それにしても、素人にしてはいいパンチだったよ。やっぱりリュウイチさんにパンチが似てるし」
「そうですか?」
「ああ、とにかくリュウイチさんのパンチは速くてキレがある。そんで正確に相手の急所を打つんだ。おれも何度もリュウイチさんとスパーリングやったけど、何度も意識が無くなったよ」
「田端さんでも意識が飛んだことあるんですか?」
「そりゃ何度もあるよ。まあ、あの時はディフェンスが苦手だったからな。リュウイチさんのパンチはほんとに刀で切られたみたいにスパっと当たって。自分でもパンチが当たったのか分からないんだ。そんで気持ちよくなって立っていられなくなる」
「顎に入ったんですか?」
「そうだ。当たった瞬間はそれも分からないほど速いんだ。でも、気が付いてもダメージはそんなに残ってないんだよな。不思議なパンチだった。そのパンチにお前のパンチは似てるよ」
「おれなんかまだまだです」
「確かにフォームはバラバラだしな。でも、センスはあると思う。センスってのは鍛えてどうにかなるもんじゃないからな」
浅倉さんも同じようなことを言っていたな。
「おっと、ボクシングの話をしに来たんじゃないよな。すまん」
「いえ」
「お前の兄貴、リュウイチさんが死んだのはオレのせいだ」
「詳しく教えてください」
「リュウイチさんは、おれのためにアイズを抜けさせるためにリーダーの前田と会ったんだ。それが、あの河川敷だった。その時そこに居たのがおれとリュウイチさんと前田とアイズの幹部4人だった」
「そこで何があったんですか?」
「そこでリュウイチさんは前田におれをメンバーから抜けさせてくれと頼み込んだんだ。それでも、前田は首を縦には降らなかった。そこで前田はおれとリュウイチさんがケジメをつければ考えると言ったんだ」
「ケジメ...」
「ああ、そのケジメってのはおれとリュウイチさんの両手、両足を縛って10分間無抵抗でいればメンバーから外すってことだったんだ」
「それじゃ、兄貴はそれで...?」
「そう、リュウイチさんはわかったと言って腕を前田に差し出した。前田は、ほかの幹部に事前に用意させてあったのか、プラスチックの結束バンドでリュウイチさんとおれの両手足を縛ったんだ。それからおれはボコボコにされるかと思ったら車に乗せられて移動した場所でぼこられたんだ」
「え?じゃあ、兄貴がどうなったかはみてないんですか?」
「そうなんだ。だが、あの河川敷に前田と数人残っていたからアイツらが関わっているのは確かなんだ」
「そうなんですか...」
「おれはぼこられているうちに気を失って、目が覚めて河川敷に行ってみたらもう警察が来ていたよ」
「そのことは警察に言っていないんですか?」
「ああ、おれは何も見ていなかったしな。言ったってアイツらのことだ口裏を合わされてうやむやになるに決まっている」
「でも...」
「お前の言いたいことはわかっている。おれだって悔しいんだ。だから、おれはアイズを潰すために毎日トレーニングしているんだ。絶対に前田は許さない」
「...田端さん。おれも手伝いますよ。ライズ潰し」




