↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生プログラマの魔法デバッグ ~この魔法、クソコードすぎる~  作者: 空乃真芽


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
22/22

第二十一話 鳴らない目覚まし

「いつから鳴らない?」


 俺が尋ねると、ユアンは鍋を頭から下ろした。


「今朝。昨日までは鳴ってた。落としたのは、たぶん昨夜」


「たぶん?」


「寝る前には棚の上にあった。起きたら床にいた」


 目覚ましが一人で歩いたわけではないだろう。ユアンの寝相は、同室になった初日から心配になった。


 ひびは外装の角だけ。魔石の残量表示は半分以上ある。針は設定時刻を指していて、つまみも回る。


「鳴らない以外は動く?」


「時刻は進む。光もつく」


 俺は操作を一つずつ試した。光はついた。時刻を一分後に合わせて待つ。針が重なった瞬間、鐘の形をした飾りがかすかに震える。


 音は出ない。


「音を作るところまで、魔力が届いていないのかな」


「分かるのか?」


「まだ仮説」


 裏蓋を外す前に、外装と部品の位置を紙へ描いた。父さんならまずそうする。元に戻せなくなったら、修理ではない。


 ユアンが横から覗き込む。


「それ、魔法の図?」


「戻すための図」


「そっちの方が大事なのか」


「今はね」


     ◇


 魔石を抜いてから裏蓋を開ける。


 中には細い導線が二本、術式板と小さな発音板をつないでいた。一本は固定具から外れ、端が外装に触れている。


 落下の衝撃で緩んだのだろう。


 術式板へ指を近づけて集中すると、表面の処理が短く見えた。設定時刻との比較、発光、発音。時刻は届いている。発音処理も呼ばれている。


 装置のコードを読めるからといって、ここで書き換えられるわけではない。俺の権限で編集できるのは、自分の魔力でこれから発動する魔法だけだ。


 見えた内容は、目で確かめた導線の外れと矛盾しなかった。


「この線を戻せば直りそう」


「それだけ?」


「それだけかどうかは、戻してから試す」


 固定具を締め、線が外装へ触れない位置に収める。魔石を入れ直して、一分後に設定した。


 針が重なる。


 小さな鐘の音が鳴った。


「直った!」


 ユアンが手を伸ばす。俺は渡す前にもう一度時刻を設定した。


「一回鳴っただけだよ」


「一回鳴ったなら、もういいだろ」


「二回目も鳴るか確認する」


 今度も鳴った。ただし、少し音が割れた。


 発音板の端に細い欠けがある。落ちた時にできたものだろう。動作はするが、ここも交換した方がいい。


「完全には直ってない」


「今夜は起こしてくれる?」


「たぶん。でも発音板を替えるまで、予備の目覚ましも用意して」


「予備?」


「俺を当てにするなら、朝は声をかける。でも俺が寝坊する可能性もある」


 ユアンはしばらく目覚ましを見つめ、それから笑った。


「修理屋って、直した後の話が長いんだな」


「使う人が困らないところまでが仕事だから」


「じゃあ俺、困ったら何度でも持ってくる」


「友達割引は、まだ決めてないよ」


「今のは友達だって認めたな」


 しまった。


     ◇


 翌朝、目覚ましは鳴った。


 俺もユアンも起きた。鍋は床へ落ちていたが、目覚ましは棚の奥へ移してあったから無事だった。


 食堂へ行くと、一年生の時間割が配られていた。


 初日の一時間目は、安全管理。


 二時間目は、属性実技。


「実技が先じゃないんだ」


 ユアンが紙を裏返す。


「事故を起こす前に、止め方を覚えるんだろうね」


「昨日の修理みたいだな。まず鳴るか、次にちゃんと鳴るか」


「それは少し違うけど、悪くない」


 教室の扉の前には、大きな掲示があった。


『発動より先に、停止を確認すること』


 いい方針だ。


 ただ、いい方針が現場で守られるかどうかは、授業を見てから判断しよう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。