↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生プログラマの魔法デバッグ ~この魔法、クソコードすぎる~  作者: 空乃真芽


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
18/23

第十七話 七十三と百六十八

 受験番号四十二番。


 名前を呼ばれた俺は、測定室の中央へ進んだ。


 朝の筆記試験は、手応えがあった。


 王国史の年号を一つ迷ったが、安全管理と魔導具の問題は全部埋めた。少なくとも、答案を読み取るコードは見えなかったし、探そうとも思わなかった。


 問題は、これからだ。


 台の上には、練習で使ったものより大きな測定水晶が置かれている。


「両手を触れ、合図のあとで魔力をすべて流してください」


 試験官の指示に従う。


 冷たい水晶が、手のひらの熱を吸った。


「始め」


 体の奥から魔力を押し出す。


 水晶の中を青い光が上り、目盛りが増えていく。


 六十。


 七十。


 七十三。


 そこで止まった。


「最大魔力量、七十三」


 分かっていた数字だ。


 それでも、後ろに並ぶ受験生の小さなざわめきが耳に入った。


「学院を受けるのに?」


「少なくない?」


 試験官は表情を変えず、記録用紙へ数字を書いた。


「次、瞬間出力」


 結果は八十二。練習とほぼ同じ。


「制御精度は明日の実技で測定します。終了です」


 俺は水晶から手を離した。


 数字を隠すことも、言い訳することもできない。


 七十三が、今の俺の最大値だ。


     ◇


「次。受験番号四十三番、リリア・フェルナード」


 金色に近い淡い髪の少女が前へ出た。


 姿勢がまっすぐで、試験官へ礼をする動作にも迷いがない。家名を聞いた周囲が、今度は別の意味でざわついた。


 フェルナード家は、魔法教育に関わる名門貴族らしい。


 水晶へ光が満ちる。


「最大魔力量、百四十一。瞬間出力、百三十八」


 大きな数字だ。


 それなのに、少女は喜ばなかった。


「昨年の同年齢記録には届きませんね」


「これは順位を決めるためだけの測定ではありません」


 試験官が淡々と返す。


「自分の安全な上限を知るための数値です」


「失礼しました」


 リリアは素直に頭を下げた。


 真面目すぎる人なのかもしれない。


 次に呼ばれた少年は、深い赤色の髪をしていた。


「受験番号四十四番、アルト・ヴァレン」


 彼が水晶へ触れた瞬間、室内の空気が震えた。


 光が一気に目盛りを駆け上がる。


「最大魔力量、百六十八。瞬間出力、百七十二」


 今度は試験官まで目を見開いた。


 アルトは当然だという顔で手を離す。


「制御精度も、明日一番を取ります」


「測定器を壊さない範囲でお願いします」


 冗談なのか注意なのか、分かりにくい返事だった。


 百六十八。


 俺の倍以上だ。


 正面から魔力量を競えば、勝負にならない。


「君」


 測定室を出たところで、アルトに声をかけられた。


「さっきの七十三だろ」


 名前ではなく数値で覚えられている。


「レオン・アステルだ」


「なぜ受験した?」


 悪意より、本当に理解できないという顔だった。


「筆記と制御と魔導具の試験もあるから」


「魔法使いの力は、魔力で決まる」


「魔力量の試験なら、もう君の勝ちでいいよ」


 アルトの眉が動く。


「負けを認めるのか?」


「測った数字を否定しても増えない。それ以外は、まだ測ってない」


 俺が歩き出すと、背後で小さな笑い声がした。


 リリアだった。


「何がおかしい」


「ごめんなさい。二人とも、数字の受け取り方が正反対だったから」


「百四十一の君は、どっち側なんだ?」


 聞くと、彼女は少し考えた。


「明日の結果を見てから決めます」


 真面目な答えだ。


 アルトは納得していない様子だったが、追ってはこなかった。


     ◇


 宿へ戻ると、父さんは一階の食堂で魔導具を分解していた。


「宿の人に頼まれたの?」


「部屋の灯りがちらついていた」


「見てただけじゃなかったんだ」


「試験はどうだった」


「七十三」


「知ってる」


「百六十八の受験生がいた」


 父さんの手が一瞬止まる。


「二人と少しか」


「掛け算しないで」


「それで、試験をやめるか?」


「やめない」


 即答できた。


 七十三と百六十八。


 差は、見なかったことにはできない。


 でも明日測るのは、別のものだ。


 俺は父さんの向かいに座り、ちらつく灯火具の症状を聞いた。


 不安な時ほど、変えられる問題から片づける。


 それも、俺が覚えたやり方だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。