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第2章:視線の交差と「幽霊」の影

拓にはもう一人、秘密を共有する女性がいた。

同僚の人妻・ひとみだ。


二人は不倫関係にあった。

職場の外で月に数度会う、割り切った関係――のはずだった。

しかし、時には、職場の非常階段で密かに落ち合うこともあった。


ある時、純が放った一言が、拓の疑心暗鬼を加速させる。


「瞳さんが不倫してるみたいって噂、知ってます?」


動揺する拓。

純はすべてを知っているのか?

それとも単なる噂か?


さらに、拓の裏アカウントに「いいね」を飛ばす、開設されたばかりの謎の新規アカウントが出現する。フォロワーも投稿もゼロ。


ただ、拓を見張るためだけに存在するような「幽霊」の影。


純か、瞳か、あるいは第三者か。


ある夜、拓との密会をドタキャンした瞳。


その裏で、彼女もまた「書く」ことで自分を保っていた。

引き出しの奥に隠された、誰にも見せないノート。そこには、夫・康介との冷え切った生活、離婚への決意、そして拓への執着が泥臭く綴られていた。


一方の純は、拓と瞳の距離を測るように揺さぶりをかける。


「他の男と会ってるらしいですよ。瞳さん」


それは拓への好意なのか、それとも、自分の「素材」である拓を他人に侵食されることへの拒絶か。


「彼は、私の中で生きる。この願いを、どうやって叶えればいいのか。彼を傷つけずに、私のものにする方法を、私は知らない」


純の日記は、徐々に独占欲の色を帯びていく。彼女にとって書くことは、対象を「支配」することと同義になりつつあった。

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