婚約内定・保存と自動車の魔道具
「それはそうだが、でもなぁ。こんな、こぞ…いえアロイス君に不満がある訳では」
王妃が陛下をギロッと睨むとすぐに言い直す。
本当に陛下って王妃に弱いな。
「では、エリナとアロイス君の婚約を決めて宜しいですね?」
「それは…」
「よ・ろ・し・い・ですね?」
笑顔が怖い。
「…はい、分かりました」
有無を言わせない王妃が無理やり僕とエリナの婚約を決める。
「エリナ!良かったわね陛下のお許しが出たわよ」
「は、はい。ありがとうございます。お父様」
エリナも素直にお礼を言いづらそうにしてる。
「ただ、もしエリナを傷つける様なことがあったら、いくら使徒様だからといって許しはしない。分かったな?」
「はい。絶対に傷つける事はしません」
エリナの悲しい顔は見たくないからな。
「婚約の許しが出ましたが、婚約の儀をするのはアロイス君が爵位を得てからになるわよ?分かってる?」
「はい。一刻も早く爵位を得る様頑張ります。なので、まずは教会に行って魔法の使い方を習いに行きたいと思います」
「?アロイスどういう事?」
「母上、多分ですが教会で祈りを捧げれば神に会うことが出来ると思います」
「それは本当⁉︎そう何度もあって頂けるのかしら?」
「また会えるのを楽しみにしていると言われたので、向こうも会う事を拒否するとは思えないです」
「そう、分かったわ。では明日にでも行ってらっしゃい」
「はい」
「では今後の方針が決まった事ですしこの話は終わりね。次は魔道具ね」
「魔道具?」
陛下は思考停止してたから聞いてなかったね。
「アロイス君が保存の魔道具と自動馬車の魔道具のイメージを教えてくれるんだって」
「ほぅ、それは中々素晴らしいな。アロイス君出来るのかね?」
「はい、もし僕の考えた通りなら確実に」
「コンコン」
「ちょうど来たわね、入りなさい」
「はっ、失礼します。私をお呼びの様ですが何かございましたか?」
「貴方には彼のイメージを聞いて魔道具を作って欲しいの」
「彼とはそこにいる男の子の事ですか?」
懐疑な視線を向けてくるが。当たり前だな、5歳児のイメージなどたかが知れてる。
「そうよ、この子はアロイス君、ベルク伯爵家の次男なのだけど、保存の魔道具のイメージと馬車を馬要らずで走らせる魔道具のイメージがあるみたいよ」
「そ、それは本当ですか⁉︎もしそうなら素晴らしいお方だ‼︎是非教えて下さい」
あれ?いきなり下手に出てきたぞ。伯爵家の次男だからか?
「アロイス君、彼はね自分が分からない魔道具の事になると年齢、地位その全てが関係なく尊敬出来る人なのよ」
なるほどこの人は人を外見で見る事はしないんだな。良い人だ。
「頭を上げて下さい。僕は5歳なのでかしこまらなくて良いですよ」
「いえ、そういうわけにはいきません。私にわからない魔道具が出来る人は私より上の存在なのですから。失礼しました。私は王城の専属魔道具師を拝命頂いているカイル=フォン=ディストと申します。宜しくお願いします、ディスト侯爵家の者ですが私も次男ですので気にせず接して下さい、アロイス殿」
「先ほど王妃殿下より軽く紹介されましたが改めて、アロイス=フォン=ベルクです。こちらこそよろしくお願いします」
「では早速魔道具についてお話ししましょう!」
勢いが凄いな。魔道具大好きなんだろう。
「は、はい。ではまずは保存の魔道具ですが、僕の考えでは、空気に触れさせない様にしているのではと思っています」
多分真空状態にしてるんだと思う。
「空気に触れさせないですか?それの何の意味が?」
「空気中には体に害のある物も漂っていますからそれに触れさせない様にする事が必要かと」
「そうなのですか。でもそれなら箱に入れれば良いのでは?」
「箱に入れただけではダメです。どんなに密封しても、物を入れるときに空気が入りますので、保存効果が薄れます。なので空気が入らない様真空状態にする必要が有ります」
「真空状態?ですか?それはどうすれば?」
「魔石に空気を吸うイメージをすれば、真空状態に出来ると思います。そしたらそれを密封性の良い箱に入れれば完成ですね。周りに氷を張って温度を下げればより長く保存出来ますね」
「空気を吸うですか?難しいですね」
「口で思いっきり息を吸うイメージをさらに強くすれば良いのでは?」
僕は掃除機のイメージ出来るけど、この世界に掃除機は無いからな。
「なるほど、何となくわかりました。氷を張る理由は何故です?」
そこも説明が必要なのか!
「そうですね、暑い時期の方が物が腐りやすい事はありませんか?」
「ありますね、あっ!なるほど疑似的に寒い季節にするって事ですね」
頭の回転も速いな。
「その通りです」
「なるほど、なるほど。素晴らしい‼︎貴方は本当に素晴らしい方だ。それで自動馬車はどうすれば作れるのですか?」
「これには複数の魔道具を使う事が必要なのですが。まずは車輪を動かす魔道具ですね」
「それならすでにあります。馬の疲労を軽減させる目的として車輪に回転を与えていますが、それだけでは荷を乗せると全く動きませんよ」
「力が弱い所為でしょう。魔力を流す量に応じて力を強くしていく様にすれば出来ると思います」
「それをするには、荷を動かすほどのイメージが出来ませんね」
そうか元々のイメージが違うから出来ないのか。車はだいたい4気筒から8気筒のエンジンだしな…ってそうぢゃん。
「例えば荷を載せずに馬車の大きさを1人用の大きさにすれば動きますか?」
「あまりスピードは出ないけど動くには動きますよ?でもそれだと意味ないですよ?」
「それなら車輪一つ一つに魔石を取り付けて一つの魔道具にすればいけるのでは?」
「そうか!一つの魔石で全てを動かそうとするからダメなのか、車輪一つに対してそれだけの力があればいけるかも知れません」
「ただそれだけだと止まらなくなってしまうので停止用の魔道具を取り付ける必要もあります。後曲がる時も速度を緩めて、車輪を動かせる様にしないと曲がり切れなくなります。」
ブレーキとハンドルは無くてはならない、でないと死亡事故が多発する。
「停止の方はこちらで何とかしますが。車輪を動かすとは?」
「自動馬車、馬は使わないので自動車とでも言いましょう。自動車に持ち手の様な物を取り付けて、持ち手を右に切れば前に着いている車輪が右に向く、左に切れば左に向く様にすれば出来ます」
「なるほど、そちらは魔道具と言うよりも製造業者の仕事ですね」
「そうなりますね。ですが、多分これで馬無しでも動くかと」
「はい、私も出来ると思います。後はこちらでやりますので完成の際にお知らせいたします。それでは皆様失礼しました」
あっという間に出て行ってしまった。
「全く、魔道具の事となるとすぐにおくなるんですから。まぁ良いでしょ。話が纏まった様ですし今日は解散しましょうか」
王妃の言葉で解散になり僕たちは部屋を出て兄上と合流してし、王城をあとにする。
なんか思っていた王族と違ったなぁ。陛下は親バカだし、王妃様は怖かったし。そんな事を考えていると兄上から質問があった。
「随分長いこと話していたね、途中で母上も行ってしまうし。何かあったの?」
あー、兄上に何にも話してないな。どうしよう。
「ユリウス、よく聞きなさい。今から話す事は誰にも言ってはいけません。もし話してしまったら、いくらユリウスでも処罰を与えます」
は、母上、何もそこまで脅さなくても。兄上も息を飲んで覚悟決めた顔してる。
「はい、母さん、いえお母様。誰にも言わない事を誓います」
「よろしい。では話します」
母上はなんて説明するのかな?
「私達も先ほど聞いたのですが、アロイスは使徒様ということが分かりました」
「⁉︎アロイスが使徒様⁉︎」
「これは事実です、それと王女との婚約の話が出ています。これはまだ決定ではありませんが、ほぼ確実です」
「それは分かっていました」
分かってたの⁉︎いや、エリナが僕に好意を寄せているのは誰が見ても分かるけど、婚約の話がこんなに早く出るとは思わないでしょ!
「兄上はこんなにも早く婚約の話が出るのを分かっていたのですか?」
「ん?そうだね。王女殿下の様子からして今日中に話すだろうと思っていたよ。ただ父さんや母さんの前で言うとは思ってなかったけどね」
兄上にはエリナが積極的に動くのが分かっていたのか。
僕は学園に入ってからだと思っていたよ。
「それは良いけど、アロイスは使徒様だったの?」
「らしいです。自分でもよく分かりませんが神と話す機会がありましたので、そう言う事なんだと納得しました」
「そっか。これから大変だね」
「いえ、使徒の事は隠すので大丈夫だと思いますよ」
「そっか他言無用だものね。分かった、さっきも言ったけど、絶対に誰にも話さないから心配しないで」
「ありがとうございます、兄上」
前世の事は話さず使徒の事と婚約の話がある事だけを伝えた。
「さて屋敷に着いたよ。今日は色々あったから疲れたよ」
「そうね、ゆっくりと休みましょう」
「「はい」」
その後は夕飯を食べ就寝した。
翌日、朝食を食べて教会に行く準備をした。
「では、行ってきます」
「行ってらっしゃい、失礼のない様にね」
「はい、セバス教会まで頼むよ」
「かしこまりました、アロイス様」
御者をセバスに頼み教会に向かう。
「アロイス様、到着しました」
「ありがとう、帰りも頼むね」
「はっ、では失礼します」
セバスが馬車を端に寄せる。
教会に入ると信徒の女性に出迎えられた。
「本日はどの様な御用でしょうか?」
「今日はお祈りに参りました」
「かしこまりました、もし宜しければお気持ちを頂けますようお願いします」
お布施か確か昨日父上に聞いたな、いくらかは決まってないが貴族は銀貨以上を渡すのが暗黙の了解になってるらしい。
僕は銀貨1枚を渡す。
「ありがとうございます。ではこちらへ」
そう言って、神の銅像がある広間に通される。
「今日は魔法の事でお話があるので来ました。もしよろしければお話を…」
心の中で祈っている最中に光に包まれる。




