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泡沫ソーダ

 目を開けると、横倒しになった景色にメロンソーダがあった。

 ……そんなわけない。

 しぱしぱと目を開け閉めしてしげしげと見つめる。

 マグカップくらいのサイズの、透明なボディ。

 中身は緑色で……尻尾がぴこぴこ揺れている。

『み゜ー♪』

「どしたのそれ」

 天使だった。俺の目の前に鎮座している天使が緑色に発光していた。

『み゜ゅぴーん』

「だから何言ってっかわかんね……いやわかるぞ、メシの催促だ」

 ふよふよと昨日シロップを注いでやった皿の上を飛び回っている。

 昨日は確かレモンシロップで……待てよ。

「お前もしかして食ったもんの色になんの?」

 一昨日はブルーハワイだった。

『み゜ぃ?』

 これまで練乳とか白っぽいものをやっていたからずっと白っぽかったけど、実は食べ物の色になっていたのかもしれない。

 スマホを操作して昨日の動画を確認する。

 昨日すでにうっすら青色になっていたようだ。夜の色に紛れて気が付かなかったな……

「よし。なあ、今日はみかんシロップをやろうか?」

『み……み゜ぅ!?』

 猫なで声で這い寄ると、なぜか天使が逃げた。

「おいおい、せっかくおやつやるって言ってるのにいらないのか?」

『ぎゅみ゜ーーー!』

 さすがに実験体にされるのは嫌なのか、天使がおたおたと飛び回る。

 微妙に逃げ足が遅いのはちらちらと皿を振り返っているからだ。

 やっぱりおやつは諦めきれないらしい。

「ふははは愚かな。逃げても無駄だぞ」

 どたどたぱたぱた。

 狭い部屋で足音と羽音の追いかけっこ。

 ピンポーン

 チャイムの音が茶番劇の終了合図だ。

「ちっ命拾いしたな」

『ぴゅい゛ーーー!!』

「はいはい静かにな。――はい206号室。すみません」

 インターホンでやり取りする間、天使は抗議を全身で表現して皿の上を360°転がり回っていた。

 ソーダ水みたいな緑色の光が天井をちらちらと照らす。きれいだな。

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