〇月◇日の顛末
道端に天使が1匹落ちていた。
文字通り、天の国の伝令役をしている小さな使いだ。
翼が折れて、泥に塗れてジタバタしている。
真っ白な翼が黒く染まっていく。
そのうち野生化して"こちら側"の生き物になるだろう。
俺はそれを足先で道の端に寄せて、そのまま通り過ぎた。
この世界は不変だ。
昼と夜は併存し、全てのものはプログラムされた中で繰り返す箱庭世界。
一見変化や時間経過のようにあるものも、無数に見えるほど多数ある選択肢の一つでしかない。
俺の存在も、天使が地に落ちることも。
急いで店で買い物をして戻ると、天使はイヌに絡まれていた。
小さな体でジタバタと体当たりして抵抗している。
『み゛っ』
鳴き声を立てると、体が一瞬膨れ上がる。
俺は慌てて天使を掴み上げた。
防御用のプログラムが一瞬で崩壊するが、その前にカバンから取り出した聖水瓶に放り込む。
『ぷみゅ…』
気の抜けた音を立てて萎む天使を放置してイヌを追い払う。
――余計なものに手を出すと、命に関わる。
尻尾を巻いて去っていく後ろ姿を見送って、瓶を拾い上げる。
さて、この「余計なもの」はどうすべきだ?
俺は端末を操作して検索する。
「天使、エサ……綿菓子、または砂糖水?ちょうちょかよ」
天から舞い降りた"ちょうちょ"は、天と同じ成分の水に浸かって大人しくふよふよと浮いていた。
部屋に鱗粉を振り撒いたりしなければいいが。




