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「完璧になるまで出さない」と決めたら、一生出せなくなる話

こんにちは。雨日です。


二月から、小説の公募に取り組んでいる。

一ヶ月で原稿を書き上げ、そして、二ヶ月近く編集作業に取り組んでいる。


削り屋の家族が、編集を担っている。


雨日の感覚で言えば、三回くらい見直して、応募したいと思っていた。

けれど、それではダメだと、家族は言う。


書くことはできる。

けれど、編集が苦手だ。


物事を真剣に取り組めば取り組むほど、

自分の凸凹さを、まざまざと見せつけられる。


書いているときは、楽しい。

むしろ、止まらない。


けれど、削る段になると、手が止まる。


「ここ、いいじゃん」

「これも必要じゃない?」


そんな声が、頭の中で騒ぎ出す。


全部、残したくなる。


けれど、家族は言う。

「読者には、多すぎる」


――わかっている。

わかっているけど、できん。


公募と並行して、毎日連載を更新している。

そして、ブログも書いている。


もちろん、仕事もある。


さらに、春がきた。

庭が動き出した。


――もう、無茶苦茶だ。


盆と正月が一気にきたような日々、とはよく言うけれど、

今の雨日はそれに加えて、締切までやってきている。


そんな中で、公募原稿の編集を進めているのだが、

ここで一つ、笑える現実にぶつかった。


自分の「書き癖」だ。


雨日は、恋愛シーンを書くのが下手らしい。


取り組んでいる小説は(自称)恋愛小説である。

恋愛のシーンを書くのは、好きだ。


二人の距離が縮まる瞬間。

言葉にできない感情が、ふと滲む場面。


そういうものを書くとき、年甲斐もなく胸が高鳴る。


――なのに、下手なのだ。


編集をしている家族は言う。


「この辺は手直しはない」


そう言われるのは、決まって交渉や政のシーンだ。

長文であっても、ほとんど修正が入らない。


けれど、恋愛シーンになると話は別だ。


短い文章でも、指摘が入る。


書くスピードも違う。

政の場面は、ぐいぐい筆が進む。

まるで自分の領域のように。


けれど恋愛になると、途端に手が止まる。

唸りながら書く。


これは、恋愛小説を書く上で、致命的なことだと思った。


だから、雨日の書く小説は、王道の恋愛小説になりきれない。


こうして、自分の凸凹や書き癖が、じわじわと痛む。

見なければ済んだものを、真正面から見せられている気分だ。


辛い。


一年中、公募に真剣に取り組んでいる人が読んだら、

きっと呆れられると思う。


それでも、思ってしまう。


――そろそろ、終わらせたい。


息を詰めるようにして作業をしている雨日に、家族は言った。


「焦らなくてもいい。今年じゃなくて、来年の締め切りに間に合えばいいだろ」


のんびりとした声だった。


――いや。無理だって。


この、ほぼ完成した原稿を、来年まで寝かす?


考えられない。

気が狂う。


「ほら、鬼滅の刃に出てくる狛治が言ってたじゃないか。

『今年、花火を見れなかったとしても、来年、再来年見に行けばいい』って」


ああ、言っていた。


それが、何か?


意図がつかめず、雨日は眉を寄せた。


「そんな感じでいいんだよ。公募も、来年、再来年でいいじゃん」


漫画の中では、その言葉を聞いた恋雪が、嬉しくて泣いていた。

来年も、その先も、一緒にいられる未来を示されたからだ。


そんな事言われたら、雨日も泣く。


嬉しくて、じゃない。


我慢できなくて、泣く。


そんな気の長い取り組み、やっていられない。


来年なんて、知らない。


再来年なんて、もっと知らない。


家族の気の長さに付き合ってなど、いられない。


雨日は、今、出したいのだ。


それでも、いい加減なものは出したくない。


けれど。


「完璧になるまで出さない」と決めたら、たぶん一生出さなくなる。


全力を尽くして、今の雨日の限界を出す。


それで届かなかったら、その時考える。

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