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ついに来られた場所

駿弥視点です

「ここが……。」

「ようこそ、駿弥くん。ここが、茶戸家の事務所だよ。」


先パイの指差す門の向こうに、大きな和風の邸宅が見える。年数があるわけではなさそうだが、貫禄と圧倒する雰囲気がある。

ついにここまで来れた、という感じだ。先パイの生きる世界に飛び込むことに対して後悔はなく、むしろやっと、という風に思える。

俺はとうとう先パイの世界に入るのを許された。その事実への歓喜しかない。


「ただいまー。お客だよ、もてなして。親父は?」

「書斎っす。若、すぐ始めますか?」

「1時間は取ろっか。どんだけ集まった?」

「半数は。1時間後なら、あと2割は見れるかと。」

「ん、十分。広間整えといて。書斎近くの応接室にいると思うし。駿弥くん、こっち。親父んとこ行こう。」

「あ、はい……。……急、に言って、大丈夫なんですか?」


普段を知らないが、どことなく慌ただしい雰囲気だ。急にその顔見せとやらをすることになって、ドタバタしているんだろう。俺の言い出したことが発端だ、少し申し訳なくなる。

そう思うも、先パイはヘラリと笑って否定した。


「まぁ、急なのは否定しないけどね。顔見せはイベントみたいなもんだから。みんな、若頭のオトモダチがどんな奴か気になって、浮わついてんだよ。気にしないで。」

「そうですか。」


先パイの案内で奥の方へ進んでいく。全体的に落ち着いた空間で、とてもアンダーグラウンドの世界の人たちがいるとは思えない雰囲気だ。

時折すれ違う大人はみな、必ず一礼していく。言うまでもなく、先パイに対してだ。やはり住む世界が違うのだと、実感してしまう。

果たして俺は、この世界とうまく付き合っていけるのだろうか。この、特殊で閉鎖的な世界と。


「親父、入るよ。」


書斎に着いた。先パイはノックもせず、言うが早いが無遠慮に入っていった。それに内心驚きながら、俺も足を踏み入れる。


「おぅ、バカ息子。次から次に引っかけてきやがって。」

「うるさいよ、くそ親父。まーあ?親父と違って、俺ってば人気者だからね。仕方ないよね。」

「けっ。ほざけ。……で、後ろの彼が?」

「そ。藍峰駿弥くん。駿弥くん、この人が俺の親父、茶戸瑛史だよ。」

「茶戸瑛史。ここの代表、まぁ、有り体に言えば組長だよ。よろしく。」


先パイと相対していたのとは違う、丁寧な様子で、組長という人に手を伸ばされた。俺は一瞬目を奪われ、慌てて手を伸ばし握手した。


「あ、藍峰駿弥と申します。本日は急なご訪問となってしまい、申し訳ありません。どうぞよろしくお願いします。」

「……これはご丁寧な挨拶を。まぁ、ともあれようこそ。茶戸家は、君を歓迎するよ。」


先パイの父親と挨拶を交わしながら、俺は目が離せなかった。

圧倒的強者の風格、とでも言えばいいのか。存在感が強い。思わず目を引かれてしまうくらいだ。カリスマとは、こういう人のことをいうのだろう。


「初音さん、久しぶりだね。今まで不便はなかったかな?」

「はい。お久しぶりです。みなさん、とってもよくしてくれましたよ。」


面識のあるらしい宇咲さんとも言葉を交わし、俺たちは別室へ移動した。次の部屋はよくある和室で、俺たちは座布団へ腰を下ろした。


「失礼いたします。お茶をお持ちいたしました。」

「あぁ、ありがとう。」

「……会長?」


お茶を持ってきた声に聞き覚えがあると見れば、会長がいた。

……そういうことなのか?会長がここの一員……いや、でも……。

今までのことも含めて考えていると、先パイが中断させてきた。


「景介のことは後で説明するよ。まずは先に進めよう。で、親父。」

「あぁ。駿弥くん、貴斗から話は聞いてるかな。」

「はい。……僕は知らない内に、こちらに深く踏み込んでいたようですね。そのために、こちらで庇護を受けると。」

「そうだ。こちらでできる対応を説明しよう。」


先パイたちと俺の間で、話し合いが開始された。

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