駿弥くんと繋がる家
貴斗視点です
少し咎める声の俺の問いに、駿弥くんはハッとした表情になった。やはり、あまり自覚はなかったようだ。
「あの襲撃の時、君は明確に狙われていた。俺と最近親しい学生の1人としてね。それがどこまでの範囲に共有された情報かは今調査中ね。俺は知っての通り、高額賞金首のようなもんだ。そして、こっちの世界の奴等は、そっちの世界の人間だからって俺の関係者を見逃すほど、優しい性格をしてるのはそうそういない。初音と並んで、君はもっとも狙いやすい人間という認識だ。」
「……はい。」
「俺と親しいというだけで狙われるのなら、俺は対策を講じる必要がある。その1つが、家への顔見せだ。」
少し真剣みを増した駿弥くんに、顔見せについて説明していく。
茶戸家の中で顔見せを行うということは、その人を自らの庇護対象であると宣言するのと同義だ。茶戸家の組員に対し、顔を認識させ、共有する。そうすることで、もし街中でトラブルに巻き込まれたときに力になれるようにするのだ。これは茶戸家の組員なら誰でも使えるもので、基本的には家族や友人などに使われることが多い。
「重要度によって程度は変わるけど、若頭である俺の友人という立場なら、重要度は高い。そして、これは余程のことがなければ外されることはない。」
「……そう、ですか。」
「うん。本当は、あの襲撃があった時点で、俺は君をその対象に入れるべきだった。でも、学校で話す程度の接点でこちらとの強力な繋がりを作るのを、駿弥くんが良しとするか不明だったから、経過観察にしたの。今のところ問題もなかったから、1ヶ月後にはそれも外れる予定だった。……今だけだよ、引き返すなら。」
俺の説明に、駿弥くんは口を閉ざした。
高校生、16歳で、裏の世界と密接になるなんて、この先マイナスでしかない。もちろん、表に出さないようにするけど、いつか後悔する。俺なんかと交流したせいで一生を棒に振ることになるなんて、けっして看過できない。
そう思い、少々キツい目で駿弥くんを見つめる。
駿弥くんは、考え込んだ後、静かに話し始めた。
「先パイの懸念は理解しました。確かに、一般人の学生の身でそちらと関わりを持つのが褒められたものではないとは思います。……でも、俺はそれでも、先パイたちとの関係を絶ちたいとは思いません。」
「……そう。」
「はい。言ったはずです。俺には、先パイの側にいたい理由がある、と。」
「分かったよ。景介、柳田に言ってきて。俺は親父に連絡入れるし。初音も一緒においで。準備とかもあって時間かかるけど、親父も会いたがってたし、いい機会だから。」
「はい。私も、久しぶりにおじさまに会えるの、楽しみです。」
俺の指示で店を出ていった景介を見送りながら、内心でため息を漏らした。
また親父に借りを作っちゃう。いや、それは別にいい。今までに作り溜めた貸しでやり込めればいいんだから。でも、ねちねちと嫌味を言われたら面倒だ。今回は根回しも何もしていないから、仕方ないけど。
「もしもーし。親父、今いい?」
『おう、どうした。初音さんに何かあったか?』
「それはないって親父も分かってるでしょ。俺が初音のことで抜かるわけないじゃん。急で悪いんだけどさぁ、」
『やだ。』
「人の話は最後まで聞くなんて、今時幼稚園児でも知ってるんだけど。親父そこまで退化しちゃったの?かわいそー。」
『……ちっ。用件は。』
いつも通りのやり取りをこなしつつ、親父に用件を伝え、電話を終える。案の定、色々言われたが、それも今さらだ。帰ればまたうるさいだろうけど。
「……先パイって、親にはそういう対応なんですか?」
「いや。親父だけだよ。馬が合わないんだよねー、親父と。俺も親父のこと気に食わないし、あっちも気に食わない。信頼はしてるんだけど。でも、俺の前に立ち塞がる壁なんて、存在が気に食わないんだよね。俺はいつか、親父を越えて親父すら見下ろす高みに登る男になるからね。」
俺と親父の独特な親子関係に、駿弥くんは呆気に取られたような顔で目を瞬かせた。
「貴斗、柳田さんもこっち車回してくるって。すぐ来るよ。」
「ありがと。じゃー、行こっか、駿弥くん。」
俺の笑みに、駿弥くんも固い顔で頷いた。
悪の巣窟に出向くんだ、緊張しているのが手に取るように分かる。そんな構えるような場所でもないから、微笑ましくもある。
柳田の運転する車で家に向かう中で、俺は駿弥くんの様子を見ながら、そんなことをつらつらと考えていた。
次話から駿弥視点が始まります




