私の新しい先生
初音視点です
今回も出している話に関しては自己解釈が大きいです。より最適な理解があればお知らせください。
「初音、おはよー。」
「ユキちゃん。おはよう。」
あの事件から1週間が経ち、ようやく自分の生活も落ち着いてきた。いつも先輩……貴斗さんが守ってくれるから、心配することも少なくなっている。
「もう12月だね。寒くなってきた。」
ユキちゃんが腕を擦りながら白い息を吐いている。その言葉に、つい昨日貴斗さんに誘われたクリスマスイブが思い浮かぶ。
お昼から夜まで、半日のデートだ。プランは貴斗さんが考えてくれるらしいから、どこへ行くのかは分からないけど、初めてのデート。私は少しだけドキドキしながら、貴斗さんの提案に頷いた。
そのことを考えてポーっとする私に、ユキちゃんが訝しげに覗き込んできた。
「初音?顔真っ赤だよ。」
「へ?……あ、うん!何でもないよ、大丈夫。」
「そう?あ、真琴!おっはよー。」
私が慌てて手を振って大丈夫と伝えると、ユキちゃんはすぐに、前方に見つけた真琴の元へ走っていった。
2人にはまだ、貴斗さんとのことを話していない。恥ずかしいのもあるけど、今までの反応からしても、関わるのは反対だって言われそうだからだ。貴斗さんは私を守ってくれる優しくてすごい人なのに、それも知らずに噂だけで反対されるのは悲しい。
「みんな、貴斗さんのいいところ知れば、絶対賛成してくれるはずなのに。」
優しくて、強くて、賢い貴斗さん。私が貴斗さんに釣り合わないことがあっても、逆はありえない。貴斗さんのいいところを、みんなに知ってほしい。私は周りの反応を思って気分が沈み、深いため息をついた。
「……。」
「……あ、おはよう。駿弥くん。」
「おはよう。……先輩は?」
「今日は学校でやることがあるって、さっき別れたよ。」
「そ。」
駿弥くんは貴斗さんがいない私に、用はないらしい。さっさと先へ歩いていく駿弥くんに、思わず苦笑いが漏れる。いつものことながら、清々しいほど貴斗さんにしか興味がないようだ。
教室へ行き、授業を受け、昼休み。私はいつものように貴斗さんと会長と一緒に、屋上で昼食を取っていた。
「そうだ、貴斗さん。駿弥くんが、またお話ししたいって言ってましたよ。今度は、えぇっと……情報学のこと、って言ってました。情報科学……?のことについて、だったと思います。」
「情報?オッケー、分かったよ。テーマは何にしようねぇ。」
「スポーツにおける情報科学の応用とかはどうだ?」
「ん、それでいこっか。初音、明日の放課後、いつもみたいに待っててって駿弥くんに伝えて。」
「はい。」
貴斗さんと会長は、時間が空いてるときに駿弥くんとお話し合いをしている。その間、私はずっと3人の議論を聞いてるけど、今のところ理解できたことがない。退屈、というほどではないけれど、手持ち無沙汰なのは否めない。
ということを以前貴斗さんに伝えたら、事前に大まかな内容を教えてくれるようになった。前知識があるからといって、3人の話してることはやっぱり分からないけど、少しでも貴斗さんのやってることが知れるのは嬉しい。
今回も、大まかなことを教えてもらって、なんとなく分かったような分からなかったような。それでも貴斗さんに少しだけ近づけた気がしながら教室に戻ると、駿弥くんが待ち構えていたように話しかけてきた。
「宇咲さん、先輩たちはなんて?」
「OKだって。明日の放課後、いつもみたいに待っててって言ってたよ。」
「……分かった。」
私の返答に一言そう返すと、一瞬だけ嬉しそうに頬を緩ませ、駿弥くんは席に戻ろうと背を向けた。
いつもならそれで話は終わるけど、なんとなく貴斗さんに教えてもらったことを言いたくなって、その背に声をかけた。
「しゅ、駿弥くん。情報科学って、情報がどうやって活用されてるかを知ることなんだね。」
「……あぁ。現代社会は情報こそすべてだからね。1つの情報がどうやって整理されてどうやって活用されるか知るのは大切だよ。……先輩?」
「うん。……いつも、実は事前に教えてもらってたんだ。3人の議論は全然分かんなかったけど……。」
「ふーん。」
「……しゅ、駿弥くんも、教えてくれると、嬉しいな。」
私がそう言うと、駿弥くんはじっと私を見つめてきた。
何も知らなかったくせに、図々しかったかもしれない。断られるの覚悟で少し体を強張らせていると、駿弥くんが少し意外そうに声をあげた。
「ほんとに、知りたいと思ってんの?」
「……う、うん!いつも私、聞いてるだけだったでしょ。少しでも分かったら、楽しいかなって……。だめ、かな……?」
「別に。好きに聞けば?」
これはOKということだろうか。そう言い残した駿弥くんに、慌ててお礼を言うも、すでにこちらへの興味はなくしたようだ。返事はない。
相変わらず、対人関係に淡白だ……。どうしてあんな一匹狼なんだろう。あんなに頭のいい駿弥くんなら、すぐにクラスの中心にもなれるのに。




