番外編 出会い
「ローズ・・・・・」
彼女が城へ上がってきたのはいつだったろう。
「そうか。あれはローズがまだ10歳の時だったな」
窓辺に一人佇めば頬を通り過ぎる風が心地よかった。
「お初にお目にかかります。私、ローズと申します。この度、宰相様の補佐官を務めさせていただきます」
ぺこりと頭を下げる彼女を見た時、俺はこんな子供が宰相の補佐官だという事実に目を丸くした。
「殿下。彼女はこう見えても頭脳は我々に負けず劣らず頭が働きます。そして、この子の兄は間者としての仕事を任せる事が出来ます」
宰相の一言で俺は全てを悟った。
昔から、我が王家に使える一家がいた。
彼女たち一家は、優れた頭脳を持ち、影ながら我が王家を支えていてくれた。
しかし、不幸な事故により彼女たちの両親は彼女が幼いころに亡くなっていた。
「・・・・そうか。宜しく頼む」
そう言って、ぽんっと頭に手をおけば、嬉しそうに笑っていた。
「はい!よろしくおねがいします!!」
その顔に思わず俺も笑顔になったものだった。
「・・・・あの頃は可愛い妹が出来たみたいで嬉しかったな」
それなのに、いつからローズに恋をしてしまったのだろう。
「殿下。この書類はこちらに置いておきますので、後で必ず目を通しておいてくださいね!」
宰相補佐官となってからしっかりと働くローズに俺もそれに答えるよう頑張っていた。
「うむ。わかった。・・・ローズ、お前は少し休めよ?じゃないと体を壊してしまう」
その頃はすっかり兄貴気分でローズに注意していたものだ。
「はい。ありがとうございます!でも、私しっかりと働きたいんです!この国がよりいい国になるように!」
目をキラキラさせながらそう語っていた。
「あぁ・・・。あの頃から国を想う気持ちに変わりはなかったな」
ローズの言葉を思い出すとおもわずクスリと笑ってしまう。
だけど、いつだったろう?
夜、彼女の家に強盗が押し入ったと連絡を受けた。
その時、彼女の兄には別の仕事を頼んでいてローズ一人だった。
「宰相!ローズは無事か!!」
宰相に抱えられながら城に保護されてきたローズに慌てて近寄るとローズはまるで魂をどこかに置いてきたかのように目がうつろになり固まっていた。
「ま、まさか!!」
俺の言葉に宰相は首を振った。
そして、抱えていたローズを椅子に座らせるとローズと少し距離を取り話した。
「いえ。ローズは何もされておりません。ただ・・・・・刃物を突き付けられ脅されたようです」
ローズの耳に入らない様にこっそりと俺に耳打ちをすれば宰相は申し訳なさそうに頭を下げる。
「・・・私が城にとどまるようもっと強く言っていれば・・・」
悔しそうにそういう宰相の言葉に俺はひどい言葉をぶつけてしまった。
「そうだ!なぜ一人家に帰した!!そもそも、ローズが一人の時は城で預かるようにあれだけ言っていただろう!!」
怒鳴る俺の声に、ローズが肩をピクリと震わせた。
「い・・・いやぁ・・・・いやぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
突然のローズの叫びに思わず俺はそちらを振り返る。
すると、傍に寄ってきた医者に声をかけられる。
「で、殿下。申し訳ありませんが、声を落として下さい。彼女の恐怖心を煽ってしまいます!」
その言葉を聞いて俺は情けなくなった。
彼女が怖い思いをしていたのになぜすぐそばに駆けつけてやらないのかと。
そう思うと足が勝手にローズの元へと向かっていた。
「ローズ」
そっと傍によってもローズの目は何も写さない。
10歳の子供にこんなにも心に傷を負わせた犯人が許せなくなる。
「・・・ローズ?」
そっと手に触れると、ピクリと再び肩が揺れる。
「ローズ。もう大丈夫。大丈夫だよ?俺を見て?ローズ」
椅子に座らされているローズの目線に合わせるように膝を着くと下からローズを見上げる。
俺の声に徐々に瞳が明るくなってきた。
「ローズ?怖い思いしたね?傍にいてあげられなくてごめんね?」
「・・・・・で・・・・でんか?」
俺の言葉に答えてくれたローズに俺は返事をした。
「うん。ローズ大丈夫だよ。これからは俺がずっと傍にいてあげるから。もう一人になんてしないよ?」
そう言って頭を撫でそっと抱きしめてやると、ローズの瞳から涙があふれ出た。
そしてこの時、俺は彼女を守ってやらなければと心に決めた。
それから何日かして、ローズは元気を取り戻した。
それでも、着替えを取りに帰ったりするときなど、どうしても一人で家に帰らなければいけないときに、一人で家に帰る事は出来なくなっていたので俺が何度も一緒に家へと帰ってやった。
宰相や重臣たちにはかなり止められたのだが・・・。
「ローズ?俺が傍にいて嫌だったらすぐに言ってね?」
俺はふとそう思った事があった。
そんな俺の言葉にローズは首をかしげると笑った。
「なんで?嫌になんてならないよ!だって、ずっと傍にいてくれるんでしょ?」
その言葉に俺の心は満たされた。
それから、何があっても彼女を離したり出来ないと思った。
「・・・・あの頃のローズは可愛かったな」
ふと、そう呟けば後ろから声が聞こえた。
「あの頃っていつよ!今は可愛くないって言う事?」
いつの間に後ろに立っていたんだろう?
怒ったように腰に手を当ててたつローズに思わず笑みがこぼれる。
「そんなわけないだろう?やっと手に入れたんだ。あの頃よりも今のローズの方がもっともーっと可愛いに決まってる」
そう言って肩を抱き寄せれば頬を染める。
やっと俺の手元に戻ってきた彼女に俺は再び2度と傍を離れない事を誓った。
「・・・・愛しているよ、ローズ」
そう囁くと、驚いたような顔をしてにっこり笑った。
「私も、愛しています。リルガ殿下」
さて、ここまで読んで下さった皆様!
本当に長い間お付き合いありがとうございました。
ここで『ローズの恋愛』は一旦完結とさせていただきます!
もしかしたら、ゆるゆると番外編をUPさせて行くかもしれませんが、その時にはまた目を通して頂けると幸いです。
稚拙な文章でとても読みにくかったでしょうが、長い間ご愛顧頂き誠にありがとうございました。
睦月




