025. 魔法は夢を裏切らない
我々の異世界貿易事業は、日本円のキャッシュベースでは大赤字だ。
アンコの仕入れで出て行くばかりで支出のみ、収入はゼロだからね。
しかも、仕入れはクレジットカードのリボ払い。利払い無間地獄だ。
だって、お小遣い3千円で現金持ってないからね。
ああ! タマヨン破滅の日、カードの支払日が目前に迫っている!
現段階は、事業投資のフェーズとは言え。
このままじゃ、資金ショートして死んじゃうん。
「何処かに、ミスリルがわんさか沸いてる異世界でも無いの? そこで大量に買い付けて、神聖カワサキ帝国に持って行けば、あぶく銭がざっくざく!」
貧すれば鈍するとは、まさにこの状態。都合のいい妄想に縋る私。あー、どっかで戦争でも起きて、ドル円が爆上げしねぇかなー。大統領暗殺で、爆下げでも可。
我ながら、人として終わってんナー。
しかし、幸運の女神は意外と近くに潜んでいるものだ。人生の半分は努力で何とかなるけど、残り半分は運だからね? そして運は掴み取るもの。
ご近所にお住まいの元女神、梅ちゃんの前髪を毟ってみよう。
「そうゆう事やったら、ヒヒイロカネがようさん採れる世界知っとるでー。しかもや、仕入れ代金はゼロや! ちーっとばかし危険やけどなぁ」
ちょっとー? この元女神ってば役に立つじゃないの。でも、オイシイ話には罠がある。ピンチがチャンスなら、逆もまた然りで、チャンスだってピンチだ。ちーっとばかしな危険の度合いによる。
「なんでゼロ円なのよ?」
「簡単な事や。群雄割拠の戦国の世だからや。武力で獲物は奪いたい放題っちゅうワケや」
ソレだ!
しかし、戦闘力が雑魚乙な私には、リスクが高過ぎる。
戦国異世界へ撃って出るなら、戦闘力の強化は必須。
圧倒的な力を手に入れねばならぬ……、たとえ悪魔に魂を売ってでも!
「えー…、タマヨンさんの魂は買取済みなのでぇ…」
ほんとに売ってみた。でも、悪魔に買取拒否された。
「だったら、戦闘力強化のアドバイスくらいちょうだいよ。あんたのマスターは、ファイナンシャルプランナーなんでしょ」
「はあ? いや、何言ってんの。悪魔を強請るなんて、この人ほんとは悪魔なの?」
失礼な。使い魔だよ!
「私の見立てでは、タマヨンの戦闘力は十分強化されてるわよ? ワイバーン程度なら、腹パン一発ね」
解説のアズキさんはそう言うけども。血尿が出る程の特訓をしたにも関わらず、防御膜ひとつ張れないのが現実だ。
なお、疲労やストレスが原因で血尿が出ると事はありません。泌尿器科の医者が、そう言ってた。私は、血尿には詳しいのだ。あれ? ヤバくない?
「どういう事? 今朝の朝練でも、デッドボールで即死したんだけど」
「やれやれだぜ。マイブラザーの後帯状皮質は機能してないな?」
後帯状皮質が脳のどの部分にあって、何を司ってるのか知らないけど、またしてもアンに罵倒されている。保護者虐待でーす。家庭裁判所も調停に困るね、こりゃ。
「心配すんな。俺も居るし、神聖カワサキ帝国で仕入れた武器だってあるだろ? さあ、出陣の時だぜ?」
その武器って、ワゴンセールで買ったオモチャだと思うんだけど。
アダマンタイト製とはいえ、バットと杖で合戦に参加すると言うのだろうか。
勝てる気が……、するね?
ならば行こうじゃないか。
乙女ならば、勝てると分かっている戦いには行かねばならぬ。
「ぽっこす、ぽっこん」
何と、戦国異世界の場所は、座敷童のアマテラスが知っていると言う。
「案内してくれるって言ってるわよ」
しかも、案内までしてくれるそうだ。
「アマテラスはんは、ほんま有能やなあ。うちの子にならへん?」
「ぽすぽす、ぷらーんぷらん」
「あら? もう梅ちゃんちの子になってるそうよ? そう言えば、ずっと喫茶店の決まった席に居るわね」
翻訳のアズキさんに依ると、座敷童のアマテラスは、既に引っ越していたらしい。
「なんやて! どうぞこちらをお納めください」
「すっぽこー」
恭しくおはぎを奉納する梅ちゃんと、喜んでそれを食べるアマテラス。
喫茶店の繁栄が約束されウハウハな梅ちゃん。
その裏では、前世妹達が落ちぶれて行く危険性があるワケだけどー。
それは、まあいいか。
「なんて事よ! ちょっと梅ちゃん、屋上の小屋ってまだ空いてるわよね? スグに引っ越すわよ、数子!」
「お? おう。何か知らんけど、分かった。パンツさえ持って行けば引っ越しは完了だ」
「おー、ええでー。インターネット回線なら、ビル全体で共有してんのがあるし。壁のローゼットにUTPケーブル挿したらスグ使えるからなー」
喫茶店に入り浸っている桜子が、座敷童の家出を知るや否や、早速行動を開始した。すげえな、この行動力。ファイナンシャルプランナーは伊達じゃない。
座敷童の加護は、このビル全体に有効だから、屋上の小屋に住めば桜子達は安泰だろう。家賃収入の増える梅ちゃんは更に安泰である。
「良かったなあ、タマヨンはん。妹のラッキースケベイベントは王道やで!」
何故か、私には災厄でしか無いのだけど…。
などといった茶番がありつつ、私とアンは戦国異世界へと旅立った。
「これが異世界…だな!」
水揚げされたマグロの如く死体がゴロゴロと転がり、血で真っ赤に染まった川が流れ、気を失いそうな程の悪臭が満ちている。
ここは、地獄の1丁目、いや3丁目くらいか。
まさに、群雄割拠の戦国異世界だ。
そんな世界でも初異世界だからか、うっひょー! と、はしゃいで走り回るアン。
地獄絵図の中を走り回る幼女、ある種の宗教絵画に見えなくもない。悪魔崇拝の邪教だろうけどね。
「ドラゴンの野郎は、落ち着きがねえな。そのクビを落っことさない様にしろよ?」
あれ? 口の悪い幼児がひとり増えてるんだけど…。
アマテラスが一緒に来ちゃってるなー。
「日本語喋れたんだ?」
「当たり前だろ? コミュニケーションしてたじゃん。この世界は、魔導粒子の濃度がいい塩梅だから、余計な束縛が無いんだ。てめぇのマタグラよりクッセーけどな」
うはー、日本人形みたいな顔して、なんて口の悪さなんだろうか。
公爵令嬢みたいな顔したアンといい勝負だわ。
どっちが喋ってるか分からん…。
「でさ、どんぐりとか小豆は持って来た?」
アンは小さな袋を肩に掛けているだけ。アマテラスも同様。帰還の準備してないのでは? 私も含めてだけど。
なお今回の衣装は、アンとアマテラスが忍者みたいな装束、くノ一かな?
私は、メイド服だ。忍者と揃えるなら、武士的な恰好であるべきなのでは?
メイドは、使い魔の一種って事だろうか。昨今の厳しいコンプライアンスに真っ向から勝負を挑む解釈だな。
「あ? 弾丸は戦場で調達する。戦士の基本だぜ?」
「武器なら十分だろ。粉砕バットに刀まである」
アマテラスまで武闘派だった。座敷童の常識が覆される。考えてみれば、自宅警備員みたいなものだから、暴力に対抗する能力だってあるのは当然?
ところで、どんぐりって弾丸になるんだ。へぇ。
黒ドラゴンと金ドラゴンでは、価値観まで違うんだね、と感心してしまう。
「粉砕バットは分かるけど、刀って何? 魔女っ子ステッキじゃないのソレ?」
「あぁ、これはこうやって敵を斬るんだよ」
そう言ってアンが魔女っ子ステッキを構えると。
ぶぉんっ! と、光の刀になった。ジェダイの騎士かよ! パクリばっかだな。
「ライトセイバーは、もはやパブリックドメインだろ。気にすんなよ」
まあ、そうかも。アマテラスの言う通りだ。ガンダムも使ってるしね。
日本刀のフォルムしてるから、ちょっとはオリジナリティが? いや、きっともうあるなコレ。
近接戦闘は撲殺武器だけかと思ったら、刀まであったかー。これはもう勝ったね?
「もう疲れた…、おんぶー…」
たまに幼児らしくなるアンである。
しかし、無理もない。
半日以上歩き回っているけど、ヒヒイロカネの鉱床が見つからないのだ。
敵との遭遇すらないまま、日が暮れようとしている。
「しょうがねぇ。そいつはまだ生まれたての赤ちゃんだからな。甘やかしてやれ」
日頃の尊大な態度から忘れそうになるけど、アンはまだ生まれたばかりなのだ。
アンを抱っこして、アマテラスと共に歩き続ける。
「そういうアマテラスは? ギョニソのとこだけでも30年以上経ってるんだっけ?」
「ああ、俺は4千歳を越えた辺りから数えるのをやめた。今何歳なのか、よく分かんねえよ」
「自分の年齢が分かんないって、長生きしてるとそんなもん? それとも、ボケちゃってんの?」
軽口を叩いてみたけど、ボケたまま何千年も生きるってコワいな。
「何言ってんだ。お前だって、今何歳かスグに出ないだろ?」
「あー、そうだね」
40歳後半くらいから、自分の年齢があやしくなります。
4千年も生きてたら、そりゃ分からなくなるわ。
「はぁー、いい湯だねー。月もとってもキレイだし」
隠し湯を発見した我々は、もちろん湯に浸かっていた。
すっかり日が暮れて、夜空の月がキレイに見える。
戦国異世界の月は、川崎で見る薄ぼんやりとした月とは違う風情がある。
「いや、アレは月じゃない。こっちが衛星で、あっちが惑星だからさ」
ここでは、アマテラスさんが解説役らしい。そんな事を教えてくれた。へぇ、そんな世界もあるのか。銀河鉄道の駅がありそうだわ。今回は、銀河超特急の旅かな?
「敵襲だーっ! ヘイブラザー、戦争の時間だぜ!」
のんびり湯に浸かっていたら、敵の集団から奇襲を受けた。
雨あられと弓矢が降り注ぐ。
こっちは全裸だっていうのに! これが戦国か!
この物語がラノベなら、このシーンは巻頭イラストでしょ。
でも、昨今の厳しいコンプライアンスだと、書籍化時にカットされちゃうのかな?
などと、のんきな妄想が捗っているのは、矢がちっとも刺さらないからだ。
私のすっとんつるりんボディを防御膜が覆っている。これが、魔法の力か!
「手に入れた。手に入れたぞ…、魔法の力を、私は手に入れたぞーっ!」
努力はアレだな、夢を裏切らないね!
などと著作権的な裁判を起こされそうな事を言っている場合では無かった。
そう。
連日の特訓で鍛えていたのは、防御魔法だけだったのだから。
敵の攻撃から身を守る事は出来ても、攻撃する手段が無かった。
粉砕バットと魔女っ子ステッキも、敵が装備するヒヒイロカネ製の武器防具の前ではオモチャでしか無かった。アンもアマテラスも、力任せにぶん殴るだけで、鎧の隙間に刺し込むといった技量は皆無だったのだ。
お互いに決定的な攻撃力を欠いた戦況は膠着状態に陥った。
幸運だったのは、この世界ではアンとアマテラスが不可視だった事だろう。
2人には、服の回収を頼んで逃げて貰った。
「999ってさぁ、おねショタだよね?」
「ああ、間違い無いな。メーテルと哲郎は、元祖おねショタだな」
「そういうお前らは、おねロリか? いや、おじロリか」
「おねショタは病気で済んじゃいそうだけど、おじロリは明らかに重罪だよなぁ…」
「お前らニンゲンは、やたらと平等を求めるけど、とんだお笑い草だな」
私達が、のんきにガールズトークをしているのは何故か?
敵方には10万の軍勢が控えていてデスね?
なんで険しい山中に陣を張っておったのやら。
あっさりと捕縛されてしまいました。
全裸で。
牢の中は、退屈なんだよね。娯楽も刺激も何も無い。
面倒な牢名主とか、先客も居ないし。
そんなワケで、全裸でゴロゴロしながら、ガールズトークの真っ最中。
なお、捕縛された後で、機械の体にされそうになったけど、防御膜全開で抵抗した。もちろん、乙女の純潔も守った。ユニコーンに乗るまでは、いや、死ぬまでソレは死守する。
「ここまでは俺のシナリオ通りだぜ」
などとアンが供述しておりますが、本当なんですよ。
何しろ、我々は鉱山で迷子になってましてね?
鉱床を見つけるどころか生命の危機でした。
どうしようも無いので、のんきに風呂に浸かっていたわけデスよ。
それがどうですか? こうやって、敵の拠点に連れて来て貰えばですよ。蔵からヒヒイロカネを持ち出すだけ! 何とお得なんでしょうか。これぞ孔明の罠。三国志読んだ事無いけど。
しかも、アンとアマテラスの姿は、この世界の住人からは認識出来ぬ。ふたりは完全な忍者。にんにん。
「ちょっと外見てくるわー。おしっこしたいし」
そう言って、ぽってぽてと歩いて行くアン。
牢の中で全裸なのは私だけで、アンとアマテラスは捕まってもいない。忍者装束だって、ちゃんと着てる。
そろそろ準備すっかー、とアマテラスからメイド服を受け取り着ていると。
なにやら、外が騒がしいし、焦げ臭い。つい最近、同じ事が近所であった気がするね?
「よし! 行動開始だぜ、マイブラザー!」
アンが戻って来て、牢を破壊して私を出してくれる。
ヒヒイロカネ製で破壊魔法は通用しないので、怪力でグシャアっと。
そんなアンにトゥンクしてしまう。生命がピンチに晒された感じで。その怪力で抱き着かれたら、タマヨンの薄っぺらな体はどうなっちゃうんだろうか。
「あんまりにも上手く行き過ぎて、見張りの前で笑っちゃうとこだったぜ」
蔵らしき建物が、ごうごうと燃えている。
敵の兵達が集まって、延焼を防ぐため周囲の建物を破壊している。
おしっこのついでに、アンが火を放ったのだろう。
「ゴールドを貯蔵してる蔵を燃やしてやった。連中が気をとられてる隙に、俺達はヒヒイロカネのある蔵へ行くぞ!」
「え? ゴールドが、もったいなくない?」
「バカ野郎! 2つの穴に同時に入れるつもりか!? 死ぬぞ」
そうだね。
「こっちも燃えそうじゃない?」
ヒヒイロカネの蔵にも火が迫っていた。
敵の拠点を焼き尽くす勢いの大火になってしまっている。
今回の目的は、敵の殲滅じゃなかったんだがなぁ…。
「俺の出番だな。任せろ」
そう言うと、今すぐにも燃えそうな蔵に入っていくアマテラス。
「そうか、座敷童の加護か」
座敷童がうちに住んでたら、火災保険が不要になるんじゃないの?
「そういう事だ。ただし、ここまでの火だと長くはもたねえ。急ぐぞ」
アンと私も、急いで蔵に入って行く。
蔵の中には、山と積まれたヒヒイロカネのインゴット。
出来るなら根こそぎ頂きたいところだが、人力で運び出す時間は無さそうだ。
「そうだ! 神聖カワサキ帝国の拠点に転移魔法で送れないかな?」
「やってみる価値はあるな? 床が抜けても困るし、100キロくらいにしとくか」
100キロでも、一体いくらになるんだろうか?
仮にこれがゴールドだとしたら、地球の相場では10億円を軽く越える。
1回の仕入れの成果としては、破格の大成果だ。
「やってみてよ、アン」
「いや。ここはマイブラザーが挑んでみるべきだろう」
それもそうか。
実戦で技術を習得するのがIT派遣ソルジャーの流儀だ。OJTとも言うね。
何が、OJTだよ。「これやっといて」って丸投げするだけじゃねぇか。
忌まわしき記憶を振り払いながら、私はコマンドを実行する。
「えーっと。あ、転移魔法のコマンドは?」
「ん? アンはタマヨンにどういう教え方してんだ? 魔法は、この世界から自由になるためのもんだぜ。好きにやりな」
「へ? そうなの? 魔法って、ロックな感じだったか」
コマンドが固定されたCLIじゃなくて、チャット形式のAIのイメージかな?
「我が財宝を、我が城へ転送せよ!」
ん-、チュウニ的にはイマイチ、って感じのコマンドだったけど。
ほわほわんと魔法陣的なエフェクトに包まれたヒヒイロカネが消えた。
ちょっと送り過ぎちゃったかな?
「はーっ、ひと仕事終えた後の風呂はいいねー」
仕入れ完了して、後は帰るだけ。まあ、その帰るだけってのが大変なんだけど。
「せっかく露天風呂があるんだから、ここを異世界ゲートにしようぜ」
「え? そんな簡単に出来んの?」
「おいおい、マイブラザー。ドラゴン・オブ・ザ・ドラゴンの俺様と、ザ・座敷童のアマテラスが居るんだぜ? そんなの余裕だろ。袋麺の日清焼きそば作るくらい余裕」
それ、そこそこ難しいけどね? 水を入れる加減と飛ばし方がなー。しかし、あれはうまいので、苦労する価値はある。
小学生でも作れるんだけどね。そんなお手軽さで、異世界ゲートって構築出来ちゃうんだ。
ああ、そうか。五色龍も座敷童も神だったわ。それが2柱も居るんだもんな。
アズキもアマテラスと一緒に、さらっと作ってたし。何だか、価値観がおかしくなるよ。
「問題は、次元貫通だねー」
異世界ゲートは、初回に限り異世界転移魔法で次元貫通させる必要がある。
それが、問題なんだよなあ。プロセッサーが足りないし、どんぐりも小豆も無い。
「さっきの要領でやれば、タマヨンだけのシングルコアでいけるぜ」
「え? マジで? コマンドの打ち方だけで、そんな違う?」
「この世界の魔導粒子は濃度がいい感じだからってのが大きいんだ」
「ん? 魔導粒子って魔法の燃料じゃないの? 薄い方がいいワケ?」
「ああ、マイブラザーが川崎だとポンコツなのは、魔導粒子が濃過ぎるからか」
「そういう事だな。例えるなら、水無しでねるねるねるねを練る様なもんだ。カルピスだって原液のままじゃマズイだろ?」
「なるほど? ガソリンの混合比率みたいなもんか」
「そういうこった」
この世界限定で、私は大魔導士タマヨンって事か。
ヒヒイロカネを換金したら、この辺りを制圧してタマヨン国にしてしまおう。
「タマヨンとゆかいな仲間達ー、ただいまより発射しまーす。次の停車駅は神聖カワサキ帝国ー、ギョニソ喫茶ー。停車時間は24時間です。出発進行ー! ドアー開きまーす」
「何ソレ? 電車ごっこ? ロックだな、タマヨン」
そうだよ。銀河超特急回だからな。
ぴーろりろりろりー、っとVVFインバーターのサウンドを響かせて、次元が貫通する。
我々は、横須賀リサーチプリズンではなく、神聖カワサキ帝国のギョニソ喫茶へと転移した。
京急に乗ると、横須賀リサーチプリズンを思い出すのは、IT派遣ソルジャーの持病だ。PTSDかも知れない。
「あれれー?」
神聖カワサキ帝国ギョニソ喫茶の3階、そこにあったのはヒヒイロカネではなく、ゴールドのインゴットだった。
「我が財宝とか言って送っちゃったから? 財宝といえばゴールドってイメージだもんなー」
転移魔法の副作用である物質変換が作用してしまったらしい。
期待した結果とは異なるけども、これは失敗では無いね。
ゴールドならば、川崎に持って帰ればいいだけ。
140キロ位あるから、換金すれば15億円にはなる。
ついに、異世界貿易が黒字化するよ!




